第187話 「サイコロ、賽子、骰子」
3×3×3のすべての部屋とその外壁を調査し終えた。
各部屋は凶悪なトラップに満ちていたが、カシスが超がんばって高速で『調査』、一回の探索をなんとか10分以内に納めることで毎回中央の部屋まで帰還。
そうすることで遺跡自体の『回転』を抑えることに成功した。
「しっかし……コレ、どーするよ?」
「まあ、解くしかないんじゃない?」
中央の部屋で
ここ3時間ほどの探索……みなのがんばりの成果である。
「『回転』の法則は……」
「レーテやマルス君からの情報によると、その部屋のどの位置に人が多いかで決まるみたい」
なるほど……確かに2回目の『回転』のときはみな壁際にいて、そちらの方向へ回っていったな。
3回目は部屋の中央あたりで、やや左より……だったかな?
コレも実際にやってみてだな。
「師匠の世界ではこんな複雑な
「ああ、それなんだよな。この遺跡を作った奴はあのキューブの玩具を知ってたのか?」
そうするとこのダンジョンの
「……わかんないけど、
「お姉ちゃんも気付きましたか。そうですね、だいぶ古い記述と、見たこともないような最新の術式とが混じった感じがします」
さすがユーミルとみけだな。
特にみけは錬金術と純粋魔術をお館でみっちり叩き込まれ、魔術系の
毛色の違う天才魔法少女がふたりいるのは心強いね。
「ところで、ずーーっと疑問に思ってたんだけどあの『回転』の動力ってなに? 魔力を電気に変換してるとか?」
「……電気でモノが動くわけねーじゃん……」
「おおっ、そうか。今の発言は忘れてくれ」
「?」
そっか、電気革命はまだまだ先の話だよね。
未来知識を下手に与えるのはよくないな。
しかし魔力のみで、この巨大な遺跡……ひと部屋が20m×20mで、かつそれを9部屋同時に動かす。
どれだけの魔力が必要なのだろう。
しかもそれを何度も、何度も。
「魔力源ってなんだと思う?」
「候補としては探索に来た冒険者ですけど、うーん……」とみけ。
「えっ?」
「魂を回収する術式を刻み、動力とするダンジョンもあるそうです」
「……へえー」
エコなダンジョンだな。倫理観崩壊してるが。
「でもこの
「安いなヒトの命」
「使い方によりますね」
「……。」
みけさんは
あと俺の知り合い……リディアも含めれば3人も闇系魔法少女なんだけど。黒デッキが流行ってるのか、フォースの
「分析もいいけどさ、このパズル解いちまおうぜ、それが先だろ」
「あっ、ああ。それもそうだな」
話が脇道に逸れていたな。
トカゲマンの言う通り、まずは実際にどう攻略するかが先だ。
「ところでアンタ、あのキューブってクリアしたことある?」
「クリアというと……すべての面の色そろえて完成か」
「そうそれ」
カシスの顔には「どうせムリだよね」と堂々と書いてある。
ふっ……舐めてもらっちゃ困るね。
「実はあるんだなこれが」
「えっ! 凄いわね……ちょっと見直した」
「だろ?」
「じゃあどうやるかはアンタに任せて……」
「いったんバラバラに分解してから組み立てるんだ、パチっとな。それで完成品を自慢してたぜ!」
「……へえー……」
カチャっと留年JKがレイピアに手をかける。
「いやゴメン、ないです」
「まったく……まあ私もないんだけどさ」
困ったな。なぜか覚えているムダ
……しかもこちらは10分に一回しか『回転』させられず、パズルの内部にいるせいで全体の把握は困難。いちいちメモを取らねばならない。
下手すると何ヶ月もかかる可能性も……。
「アレ、実はけっこうヤバイ状況なのでは?」
「そうね」
「師匠の『
「最後の手段はそれね。……でも、可能かどうか気になる」
「ふむ」
「ここに閉じ込められた冒険者たちも、必ず最後はその手段を試したはず。なのに、入り口である扉には傷一つなかった」
「……よく覚えてるというか、見てるね」
「パーティの
さすシーフ……そうだな。
最終手段、死にものぐるいで入り口を攻撃した者は今までたくさんいたはずだ。
なのに傷一つないとなると、とてつもない強度か、防御魔法か。
つまり、破壊して脱出が不可能となると、いよいよ本気で
いざとなれば土竜たるアスタルテが異変に気付き助けに来てくれるだろうが、弟子としてはそれはあまりに情けない。
「しかし、困ったことに俺たちはパズルの内部にいる。つまり全体像を把握するのが難しい……というより面倒い」
「いちいち動かすたびメモをとって……うわ。まあやるしかないでしょ」
カシスはやれやれと首を振る。
地道な仕事がメインとなる
「師匠さん、カシスさん。それは解決できそうです」とみけ。
「へっ?」
「このダンジョンのミニチュアを作ればいいのでは?」
「……ふーむ」
なるほど。つまりあのキューブの玩具そのものを用意できれば、それすなわち全体像になる。
難易度も格段に下がるだろう。
それでも俺はクリアできないが。
「しかし、作るとなると複雑な構造だぞ」
「いえ、そのものを作る必要はありません」
みけは部屋の隅へ手を向け、「何か」を『
そうして「何か」をひょいっとこちらへ手渡してくる。
ニンゲンの、おててのホネだった。
「うわぁ!」
「ちょっと師匠さん、投げないで!」
俺が思わず放ったソレを、みけが慌てて『霊動』でキャッチ。すぐさままた手元へ引き寄せる。
「古来よりサイコロの素材に骨は使われています。特に手の甲や足の甲の骨は少し加工すれば正方形を得られるので、それに薬液で着色すれば……」
それはやってもいいことなのか?
うーん、しかし他にいい手も思い浮かばないし……。
「組み上げる構造はどうするんだ?」
「『
「おお、なるほど」
つまり、ホネサイコロを3×3×3に積み、あとはマジカルパワーでなんとかすると。
頭脳派なんだか脳筋なんだかわからん方法だ。
それと……そうだな。今のうちの仏さんには謝っておこう、うん。
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