第4章 二人はメル友に

Third Person

「ただいま~」


 家に帰った祐二は自分の部屋に入り、勉強を始めようとした。


「あれ?」


 時計代わりにしている携帯電話をズボンのポケットから取り出し、机に置こうとしてようやく気が付いた。

 よく見ると背面液晶のランプが点滅していた、なんだろうと思った祐二はおもむろに携帯電話を開くと着信が入ったことを示すバイブレータが手の中で響く。


“不在着信 1件”


 メイン画面に映る文字を一目見てから着信履歴画面に切り替える。

 そこに示された十一桁の番号に一瞬誰のものなのかと考えたが、すぐに思い当たる人物が浮かんだ。

 早速祐二はその番号へ折り返しかけ直す、数度の発信音が耳に聞こえたのち接続音が聞こえた。


『もしもし?』


 大人のように冷静だが少しあどけなさが残る女の声、瞳だった。


「秋山さん、祐二です。わかりますか?」

『わかるけどさ、逆にかかってくるなんて思わなかったよ』


 電話の向こうで瞳が苦笑いする。

 祐二はたとえ携帯のメモリーに入っていなくても、着信があったらかけ直して何事かを確かめたくなると説明した。


「――それであの、用件は何でしょうか?」

『あ、ううん、なんでもない』


 適当にあしらっているように聞こえる瞳だが、祐二にはもしかしたらと思うことがある。


「そういえば、ミニライブお疲れ様でした」

『あ、今日来てたの? なぁんだ、気付かなかったぁ』

「嘘ですね」


 瞳の嘘をすぐに見破った祐二、何故言われたのか瞳は信じられない思いになる。


『ど、どうしてそういうこと言うかな?』

「だって、ミニライブが終わった直後くらいに、僕へかけてきてるじゃないですか」


 瞳に電話する前に着信履歴を見た時、祐二はかけてきた時間も確認していた。


「秋山さん、本当のことを言ってください」


 二人の間に少しの沈黙が流れる、ミニライブが終わって寮へ帰ってきていた瞳は自分の部屋でそっと左手を胸に当てふうっと一息ついた。


「じゃあ本当のこと、話すね。電話ではああいったけど、もし祐二くんが来なかったらどうしようって思いながらステージに立ったんだ」

『そんな……どうしてですか?』


 そこから瞳の回想が始まった。

 話は瞳がオーディションを受ける前、中学に入学したばかりの頃に遡る。

 友達から一度遊びに誘われたことがあり、当日の待ち合わせ時間になっても友達は来ず裏切られたことを知ったのは翌日のことだった。


「だからそのことがあって祐二くんも来ないんじゃないかって、思い込んじゃって……」

『そんなことないですよ。誘ってくれたんですから、当然のことをしたまでです』


 祐二から言われて瞳の目から光るものが浮かび、頬を伝う。

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