ウソつきチョコレート

卯野ましろ

ウソつきチョコレート

 今日はバレンタインデー。ずっと片想い中である男友だちの彼に手作りのチョコレートを渡そう!

 ……と、思ったのですが……。


「いや~、いっぱいもらいましたねぇ……」

「ああ」


 小さいころからモテモテの彼は、やはり今年もたくさんのチョコレートをもらっていたのでした……。

 私のなんて、いらないよね……。

 やっぱりやめようかなあ……。


「で、お前からは何もないの?」

「い、いや、その……」

「あるんだ」

「でも、いらないでしょ?」

「用意したのに、もったいないだろ? 良いから早く出せよ。義理チョコ」

「ぎ、義理なんかじゃないもん!」

「……は?」


 あっ、言っちゃった……。

 う~……こうなったら……!

 私はカバンの中に秘めていたそれを取り出して、彼に見せた。


「これはっ……友チョコよっ!」

「……ふーん。そりゃどうも」

「どっ、どういたしまして!」

「それじゃ……友チョコをくれたお礼に、お前にこれをやろう」

「……へ?」


 彼がカバンから何かを取り出し、ぐいっと私の目の前に突き出してきた。


「ほら、逆チョコ」

「……わざわざ、ありがとう……」

「言っとくけど、オレお前にしかチョコあげていないからな」

「えっ!」

「友チョコよりも良いもんだぜ」

「そ、それって……親友チョコとか?」

「バーカ。……本命だよ」


 そうだったんだ……。

 ごめんね。


「待って!」


 背中を向けて去ろうとした彼に、私は真実を打ち明けた。


「私だって本命だもん!」


 すると彼は、また私の方を向いた。そして私を抱き締めて……。


「ありがとう。好きだよ」

「私も好き。ありがとう」

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