第30話 対応させられるのは2人と一匹
「今回、2人をダンジョンへと向かわせる要因になったのは、さきほどのクーリア司祭が原因です。クーリア司祭がここのダンジョンで見つけられた祝福された卵を勝手に横流しして私腹を肥やしていたのです。」
教皇が語った内容は2人と1匹を驚かす内容だった。
「2人に聞きますが、祝福された卵がこのダンジョンで取れるようになってしばらく立ちます。ファミルが孵化させているのにも関わらず、この街には卵から産まれた魔物がいません。何故か知っていますか?」
「……いえ、知りません。」
「クーリア司祭様からは、各地の巡礼地や司祭様を守る存在となるよう、教会で育て上げるように伺っています。」
ナミは首を振り、ファミルはクーリア司祭から聞いていたことを教皇に伝えた。
「そうでしたか……クーリア司祭はそのように。それだとファミルの側で育てるのが一番良い方法だと思いますが、それについては?」
「はい。教会の司祭や風習に慣れさせるには若い時からの教育が必要だと言われ、孵化させた後からは、ほとんど会えていません。」
「なるほど。ファミル、ありがとう。」
教皇が笑顔でファミルに声をかける。
「えっと……教皇……様。クーリア司祭が私腹を肥やしたって言う……言われるのは
何があったんですか?」
「ナミさん。いつも通りの話し方で大丈夫ですよ。……そうですね。今回、私がこの話し合いに来ることになった経緯をお伝えいたしましょう。きっかけは、とある貴族でした。その貴族はクーリア司祭にお金を渡し、卵から孵化された魔物を集めていたのです。」
「魔物を、集める……」
「えぇ。自らのパーティーなどで従順な魔物を見せびらかしていたそうです。それからしばらくして事件が起きました。」
「事件ですか?」
「はい。魔物に襲われて亡くなる貴族や商人が増えてしまったのです。」
「えっ……それって……」
「そんな……」
「ピィピィ……」
ナミとファミル、シロガネは声を出して驚いてしまった。
「……皆さんが懸念しているのは良く分かります。貴族の間でも話題に上り、すぐに調査が行われました。魔物を見せびらかしていた貴族は事件に関与していませんでした。しかし……教会で管理している魔物の数が実際の数と異なっていたのです。」
「あぁ……」
「ファミル、大丈夫!?」
「ピィィ~!?」
ファミルは頭を抱えながら、床に膝をついてしまう。
「ファミル。気をしっかり持ちなさい。貴方が責任を感じることはありません。また、教会で管理していた魔物が犯人なのかまでは調査の結果、不明でした。しかし疑念はぬぐいきれず、王家が対応する事態となったのです。」
「……何でクーリア司祭は何も影響がないんですか? あいつが原因なんですよね? あいつに責任取らしたらいいんじゃないですか。」
ナミがふらっと立ち上がり、教皇へと顔を向ける。
「ナミ!? 落ち着きなさい!」
スミナがナミに声をかけ、近寄ろうとするが、教皇が手を向けスミナを止める。
「確かにナミさんの言う通りです。もし、クーリア司祭達に少しでも罪の意識があればと思いましたが……今頃は私の部下たちがクーリア司祭達を捕らえているところでしょう。今後の事は教会内部のお話しになりますので、控えさせていただきます。」
「罰は与えるってこと?」
「罰と言いますか……そうですね。そのようなものです。」
「それってどのくらいのもの? 簡単に許すこととかあるの?」
「あいつらは教会の信用を失墜させた!断じて許せるものではない! 地獄に行こうが、さらに追い詰めてやるわ!」
教皇に付き添っている人が声を荒げて話してくる。
「おやめなさい。……連れの者が口調が荒々しくなってしまいすいません。でも、それぐらいのことをされたという認識だとご理解下さい。」
「ふ~ん……まぁいいや。すんなり出てくるようなことは無さそうって分かったから、後はそっちに任せるわ。」
「ご理解いただけてなによりです。さて、話しは戻しますが、ダンジョンについてです。王家の口出しについて、教会とギルドは同じ声明を出すことになりました。」
「声明?」
「えぇ。それには2つの確約をつけています。1つ目は、ダンジョンには教会とギルドから見張りを出して、ダンジョンから魔物を溢れさせないこと。」
教皇は人差し指を伸ばして説明している。
「……普通のことというか当たり前のことね。もう一つは?」
「ギルドが選定した特定の冒険者と教会から派遣する聖女のみとする。要するに、貴方達でダンジョン内の魔物を退治してもらいます。」
「えぇ!?」
「ピピィ!?」
「……拒否権はないってことね……期間は?」
ファミルとシロガネは驚いているが、ナミは腕を組み俯きながら、教皇に話しかける。
「……長くても半年。出来るだけ期間を短く出来るように調整しているところです。」
「ギルドとしても半年は長いと思っている。期間を短くしてもらえるように訴えているところだ。」
「……そう。教皇様。私は納得してるから、ダンジョンには行かせてもらうわ。後は期間を出来るだけ短くなるよう、王家に打診をお願いしますね。」
「ありがとうございます。全力を尽くしますのでお願いします。ファミルも急なお願いでごめんなさい。でも、これは貴方にしか頼めないの。今回だけ、私の顔を立ててもらえないかしら?」
「……分かりました。」
「ファミル、ありがとう。では早速、明日からお願いします。」
教皇はそう言って、頭を下げられる。
「……話しは以上だ。明日に備えてゆっくりしてくれ。」
ギルド長のガンプの声で、各々が席を立ち、会議室の外へと去っていた。
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