第8話 新しい出会い
「また、負傷者も多数いることから、直ちに、負傷者の治療及び、通路を結界で封鎖すること、また可能であれば騎士団にダンジョンの調査をお願いしたいとのことです。」
下水道にダンジョン?…ゲームの世界では下水道にダンジョンはなかったはず…どういうことだ?
「分かりました。シンゴさんも来てください。」
「え?俺も…ですか?」
「はい。何があるか分かりませんので。その杖が必要になるかもしれません。貸してもらえますか?」
「それは…」
「なら、シンゴさんも来ていただく必要があります。」
「嫌だと言ったら?」
「…嫌。
ならば。
ここで。
どんな犠牲を。
払おうとも…。
その杖をいただきます。」
言葉を区切って力強く話すと共に、お付きの方から強いプレッシャーを感じる。太ももに隠してたナイフを手に持って身構えているだけだが、とても強そうだ。
「どう。されますか?」
ジリジリと、お付きの方が間合いを詰めてくる。
…ここで倒したとしても、今後、死ぬまで逃げ続ける生活は嫌だしなぁ。…仕方ないか。
「…分かりました。ついていきます。」
聖女様とお付きの方、騎士団の数人と一緒に、さっきまでいた下水道へと戻っていく。何時になったらゆっくり休めるんだろう…
下水道に着くと、騎士団と女性が揉めている。
「ちょっと、何でどぶ掃除をさせてくれないのよ?」
「教会が現在、管理をしているのでお引き取りを。」
「だから、邪魔しないところで勝手にやるって言ってるでしょ。私、A級の冒険者なんだけど。クエストを自由に選択する権利があるはずなんだけど!とりあえず通して。」
「冒険者ギルドは冒険者ギルドのやり方が。教会は教会のやり方がございます。教会が現在管理をしています。お引き取りを。」
…A級…見た目はすごく若いぞ!
…鎧と刀も見たことがある!
てかコイツ…よく見たら、ヒロインの女剣士じゃねえか!
この鎧と刀はイベントを進めないと手に入らないはず…しかもA級だと?主人公と出会ってから強くなるはず…
「どうされました?」
「あ、聖女様!」
「え?聖女様?あ、本物だ。こんなところに聖女様が来るんだ。聖女様は何のよう?」
「気軽に聖女様に話しかけるな無礼者!」
お付きの方が怒ってる。騎士団も恐い顔をしてるし。
「私は負傷者がいるとのことで呼ばれたので来ただけです。」
「あ!その杖手に入れたんだ!私もその杖欲しかったんだよね~。
ん~。でも、剣士だし無くてもいいかな。その杖があるってことは、下水道はダンジョンになったのね?」
急にこっち見たと思ったら、杖を知ってるのか…
ゲームの世界でしか知られていないはず…ん?この杖を取るとダンジョンになる?どういうことだ?
「え?」
「え?」
女剣士と顔を見合わせる?女剣士が首をかしげる。
…なかなかあざと可愛い。
「あれ?その杖を取るには黒スライムの倒し方知らないとムリだし。倒し方知ってるなら、その後、ダンジョンになることも知ってるよね?」
…なんですと~!?
「騎士団が負傷したのは、シンゴさんの仕業なのですか?」
聖女様、お付きの方、騎士団の顔つきが強張っていますが…
「…初耳です。そんなこと知りません。」
「えぇ~!?常識でしょ?」
「…2人ともウソは言ってませんね…」
聖女様!ありがとう。俺は知らなかった。無罪だ。
「でも、原因はシンゴさんですね。」
…ぐうの音もでないぜ。
「じゃあ、皆でダンジョン行かない?聖女様がいるとアンデッドが出てきても楽勝だし。」
女剣士はダンジョン行く気マンマンだな。
というか、俺と聖女様の2人を指差すな!
聖女様とお付きの方を誘って行ってこい!
「私は負傷者の治療に来たのです。ダンジョンの確認は騎士団の皆さんにお任せします。」
「騎士団の人達…でも、騎士団の人達だとダンジョンクリアなんてムリじゃない?」
「なんでそう思うんですか?」
「え?だって…聖女様とあなた…転生者でしょ?
転生者じゃないとここのダンジョンクリア出来ないよ。」
「え?…えぇ!?」
転生!?女剣士と聖女様が!?
…女剣士は確かに、装備がおかしいからな。可能性は
あるなと思ってたが、聖女様も転生者だと?
…装備もそうだが、言動に転生者らしさは感じなかったぞ。
「転生…確かに転生かも知れません。ですが、私は聖女として育ちました。この世界については、それ以外のことは分かりません。」
「…え?聖女様はこの世界がどんな世界か知らないの?」
「はい。」
「…あんたは?」
「俺はこの世界が、ゲームに似た世界ではないかと思ってる。だからこの杖を手に入れた。だが、ダンジョンが出来るってことは知らなかったんだ。」
「え?ダンジョンが出来るって知らなかったの?それはウソね。だって、ゲームの世界でもダンジョン出来てたし。」
「え?」
「…え?って何?」
「…俺の知ってるゲームの世界だと、ダンジョンは出来なかったんだ。」
「…ウソでしょ?」
「ホントだ。この下水道にはこの杖があるってことだけしか知らなかった。ゲームの世界でもダンジョンなんて出来なかったんだ。」
「…何てゲーム?」
「は?」
「この世界と似ているゲームの名前よ。」
「…あれ?何て名前だっけ…えっと…あの…あぁ、あれだよあれ…えっと…何で出てこないんだ?」
「やっぱり。」
「やっぱり?理由知ってるのか?」
「私もゲームの名前が思い出せないの。でも、攻略とかアイテムの手に入れ方とかは覚えているの…変な話よね。」
…どうなってるんだ?
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