第11話

 でもまあ、と神様は言う。


 下界には神様を崇めている教会が幾つもあるらしい。

 教会で祈りを捧げてくれる信者の言葉から、七之上の活躍が耳に入ってくる可能性はあるそうだ。


 それに、と神様が優しげに語るところによると、世界で活躍することは少しも気にしなくて良いらしい。

 新たな世界で生活することを全力で楽しんで欲しいとのことである。


 七之上がその世界で生きてくれているだけで、その世界にとって大きな意味があるからだ。


「ん、そっか。分かったよ」


 二人の全裸は無言で握手を交わし、互いに頷き合うことで別れの挨拶とした。


 どちらの顔もこれから先が楽しみなのか、嬉しげに笑っている。

 神様が魔法陣から出ると、陣の中の幾何学模様がうっすらと白い光を帯びていく。

 転移の魔法が、発動したのだ。


 徐々に輝きが増していくと、光は魔法陣から円柱状に上っていった。

 白い光の柱によって七之上の姿が完全に隠されると、柱は次第に細く小さくなっていく。


 光が薄く、徐々に消えていく頃には、七之上は既にその空間から跡形もなく消え去っていた。

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