壮絶な死闘

「うおぉぉぉぉぉっ!」


 右腕のバーニアを駆使してジグザグな軌道をとって前進し、迫りくる腕や蛇を回避。それらは漆黒の残像を捕えるが電撃で痺れた。

 柊吾は縦横無尽に激しく動き回り、鵺を翻弄していく。

 待ち伏せするかのように現れた異空間には、ゴーストがレーザーを放って無数の腕を焼き払い、柊吾自身が悪魔の腕やサソリの尾に捕まっても、ゴーストのレーザー照射によって、すぐに解放される。

 ゴーストたちの援護射撃によって形成は逆転し、柊吾は瞬く間に鵺へ肉薄した。


 ――キイィィィィィンッ!


 大剣と妖刀が激しくぶつかる。

 互いに全力を込めて鍔ぜり合い、激しい睨み合いに様々な感情が交差した。

 

「とんだバケモノだな、貴様はぁっ!」


「お前がそれを言うか!」


 刃を引いては振るい、激しく斬り合う。

 鵺の命を吸い肥大化した妖刀反骨鬼と、漆黒の稲妻を纏うブリッツバスターが幾度も火花を散らした。

 距離をとると、蛇たちとゴーストたちの応酬が始まる。

 何度もぶつかり、撃ち、避けて壮絶な激戦を繰り広げる。


「いい加減に!」


 鵺は外套の内側でチャージしていた左腕を突き出し、柊吾へ向け超高熱量のレーザーを放とうと光を収束する。

 柊吾は瞬時に距離をとると、目の前にゴースト五機が密集した。

 鵺の腕から極大のレーザーが放たれ、ゴーストたちは一斉にレーザーを放って迎え撃つ。

 火力が違いすぎるため、時間を稼げたのは一瞬だったが、それで十分だった。

 柊吾はレーザーの射線上から身を反らして回避し、まっすぐに鵺へと肉薄する。


「はぁぁぁぁぁっ!」


 がら空きになった鵺の右肩へ、稲妻を極限まで収束させた刃を振り下ろす。

 防御しようとしたサソリの尾をいとも容易く断ち、刃は本体へ。

 鵺は慌てて妖刀で受け止めようと構えた。

 そこに、レーザー迎撃に参加していたなかったもう一機のゴーストが、レーザーを放って鵺の右腕を焼く。

 機転を利かせたキジダルだ。

 妖刀の防御がなくなった鵺は、大剣によって右肩から翼までを綺麗に切断される。

 

「ぬぅっ!」


 鵺は顔を歪め外套から魔獣を突き出し、柊吾へ体当たりをかます。

 アイスシールドで防御した柊吾は、やむを得ず後退した。

 再び目を向けると鵺は、地上に降り立ち右肩を押さえていた。苦しんでいるようにも見えるが、どうやら再生のために力を流し込んでいるようだ。


「させるかっ!」


 柊吾は鵺へ突進しようと刃の切っ先を向け、バーニアに魔力を込めた。

 しかし、それをグレンの声が止めようとする。


『待て柊吾! 奴はいずれにしろ再生する。今は消滅させる手を考えるんだ!』


「しかし、そんな方法なんて……」


 グレンの言うことはもっともだが、そんな方法があるのなら最初からそうしている。

 そうこうしている間にも鵺は再生を始め、柊吾は焦り始めた。

 そんな中、デュラが冷静に告げた。


『主、グングニルを使ってください』


「っ! そうかっ!」


 グングニルの宿す聖なる力なら、サタンを焼いたように再生力すら無に帰すのかもしれない。

 そう直感した柊吾がメイへ顔を向けると、後ろへ下がっていた彼女は、グングニルを大事そうに抱えていた。

 すぐに二人は目が合う。

 柊吾がメイの元へ降りると、彼女は薄紫のマントに包まれたグングニルを差し出した。


「お兄様、どうか勝ってください」


「ああっ、任せろ!」


 柊吾はブリッツバスターを地面に突き刺すと、右手でグングニルの柄を掴んだ。

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