第50話
フレイヤさんは、ふぅっと長い溜息を吐いた。
「シュン君の考察は、とても為になったわ。ありがとう」
そして、少し頭を冷やそうということに。
なので、エリーゼと一緒に武器屋と魔道具屋に行ってみることにする。それをフレイヤさんに言うと「貴方達、元気あるわね」と、少し呆れられた。
来た時の馬車の中から見えていたので、武器屋などが多い通りは判っていた。目につく武器屋に適当に何店舗か入って見る。さすがにダンジョンの素材を生かしたものが多かった。でも正直、これ、と言うのは俺にもエリーゼにも無かった。
ただ値段の高さには、なんじゃそりゃって感じで二人で思わず笑ってしまう。
魔道具屋も似たような感じだった。やはり値段が高い。
「この値段だから、ダンジョン攻略の起点をスウェーガルニにしているパーティーが多いのね」
エリーゼのその総括で、店巡りは終了。
この先ドリスティークダンジョンの攻略をすることになっても、ベルディッシュさんにはずっとお世話になるだろうな、俺もそんなことを思っていた。
ギルドに戻るとフレイヤさんが「凄くいいタイミング」と言う。昨夜のおじさん二人が居ると。何だろうと思ったら、謝罪をしたいらしい。
ま、心からの謝罪ではないと思う。でも、はい謝罪を受け入れましょうと。
それで彼らの処分が少し軽くなるんだろう。一応はBランク冒険者のようだから、ドリスティア支部の思惑もありそうだし。そこはもう好きにすれば、だね。
今日の残ってる仕事は、実際にダンジョンで確認したいことがあるのでちょっとだけダンジョンに入ること。遅い時間ではあるがフレイヤさんとエリーゼと3人で入ってみる。フレイヤさんはこのダンジョンの経験者なので、一応最新マップは入手したしルート等は全てお任せとする。
入口の少し手前から探査が効く限界を見定める。エリーゼと交代で少し進んだり、戻ったり。傍から見てたらちょっと不審者。出入りする人が少ない時間帯で良かったかも。
中に入ってからの探査は、壁越しは駄目。
うーん、やっぱりか。厳しいな。て言うか贅沢言うなって話なんだろうけど。
「何となくだけど解ってきたような気がする。予想してたけど、ダンジョンが気配を吸収してるのかな。例えば概念的な話だけど、空気が流れてくる所の気配ならわかるって感じ。それでも遠回りして届くような所は駄目」
「空気が…、ああ解る。私もそんな感じ。甘くないのね、ダンジョンは」
「入口の最初の気配遮断は、やっぱり特別だったんだな」
「そうね。あそこだけは空気がってイメージも通用しない。なんて言うか、結界…?みたいな感じ」
エリーゼは、初めてのダンジョンということで結構興奮してるが本来の目的もしっかり頑張って忘れないようにしている感じ。
俺? いや、ホントはもっとワクワクしたいんだけど、なんと言うかですね…。
まあ、珍しいっていう程度の感じはあるけど任務優先的な。
くっ…。いつかこの何とも言えない寂莫感は、必ず晴らしてやる。
第1階層での探査の確認に一区切りつけてから、ダンジョン内の壁や床などを鑑定で確かめ続けてみる。人が作ったり自然な物とは明らかに違う。オークの横穴の内部と同じだね。
もう、あの横穴がダンジョンなのは解りきっていることなんだけど、俺達の心情と言うかロマンなのか。あそこは全然ダンジョンらしくない、イメージと違うと思ってる。なので、これがダンジョン内部だという正しい基準のようなものがここで得られたということ。
「シュン君、あとで話そうね」
突然フレイヤさんにそう言われた。
(あ、しまった。鑑定のこと知られちゃったな、この雰囲気は…)
と焦るがもう遅い。目の前でやってるんだから、悟られてしまったのならもう隠せない。と言うか、フレイヤさんには知られてもいい。むしろ相談したいなということは随分前から思っていたこと。もちろんエリーゼもだけどね。
「はい。元より覚悟はできてます」
エリーゼは何のこと? という顔をしているので「後で説明する」とだけ。
という訳で、第2階層に降りたところで帰還することに。
途中遭遇した魔物は、全て俺の雷で倒して進みましたよ。
余計な体力も、エリーゼの矢も勿体なく感じたので。
フレイヤさんは、俺の雷魔法にかなり呆れてた。
話としては伝わってたんだけど、見たのは初めてだったから仕方ないかも。
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