第33話
さて、さっさと宿に帰ってまずはマスター達にお土産渡して、あとは飯食って風呂入って寝るだけ~なんて思ってたら、フレイヤさんからの個人面談を受けた俺。この談話室ってもしかして本当は進路指導室とか生徒指導室とか言われてませんか。
そしてフレイヤさんにセイシェリスさんからイメージを教えて貰った雷魔法のことを素直に報告したら、演習場に行こうと。いやまだ全然、可愛いだけの無害なものですと言ったらやって見せろと。
なので、パチッ…。
もう一回よく見せてと言われて、パチッ…。更に、パチッ…。
自分で報告しててあれだけど、雷魔法と呼べるようなそんな大層なものでもないから、結構恥ずかしい。フレイヤさんこれ以上はいじめですよ。生徒指導室でいじめですか。
最後に
「シュン君って、初めて会った時から思ってたけど。面白いわ」
だってさ。
翌日。
朝訓練はエリーゼの希望でいつも通りこなしたが仕事は休み。昼過ぎにはギルドに行く予定だ。今回の件でもう一度集まらないといけないので。
双頭龍の宿。昼前の人が少ない時間帯、俺はジャージ姿。
食堂でお茶を飲みながら読書。エリーゼはすぐ傍のカウンターの奥でイリヤさんと一緒にお菓子作りをしている。マスターは昼と夜の仕込みかな。
なんか平和だなぁ。
とは言え、並列思考が常時稼働している俺のバックグラウンドでは魔力操作による循環訓練と統合探査がバリバリに動いているんだけどね。
鑑定は人へ向けるのはまだ抵抗があるし、物に対しては同じ物ばかり何度もやってさすがに飽きてしまっているので少し持て余し気味。
出来上がったお菓子、クッキーかな。それの試食という名目で、エリーゼと俺はタダで食べさせてもらう。昨日お土産に渡したヴィシャルテンで買ったドーナツというか小さな揚げパンというか、揚げて砂糖をまぶしたお菓子のお返しなんだろう。
エリーゼと露店などを見て回った際、試食してみたら美味しかったので土産にいいなと買ったものだ。
午後から今回の護衛依頼の事と尾行されていた事など、フレイヤさんから俺達とウィルさん達の計5人を前にしての総括。
護衛任務については非常に高い評価を受けていて、エルンストさんからはスウェーガルニ支部はもちろんこれまで通りに、そして今回のバステフマークとアルヴィースとは良い付き合いをしていきたいというありがたい申し出も受けている、とのこと。
尾行者はシャーリーさんが追ったが結局見つけきれず。昨日のうちに聞き込みをしたところ、街道で不審な二人組が目撃されていたものの特定には至らず。そして、男爵家にもそのことは報告済みである。
エルンストさんの息子さんは男爵で、この街の代官様ですからね。敵も居るでしょう、貴族特有の問題もあるんだろうな。
フレイヤさんは言う。
「代官でもある男爵家と貴方たちが良い関係を築けたことは、ギルドとしても私個人としても嬉しいわ。何かあった時、皆の後ろ盾になってくれる人が一人でも多い方がね」
と、なんかカッコよくまとめてるんだけど、手にはエリーゼが持ってきたクッキー持ってるし、皆も、それをパクパク食べてる状況なので、いまいち締まらない感じ。
初めての護衛の仕事、そして別の街を訪れて感じた新しい刺激など、またいろんなことを考えさせられる経験だった。しかし俺達はまた日常へと戻る。
まだまだ経験不足な、ちょっと戦闘が強いだけの新米冒険者なのだ。俺とエリーゼのコンビは。
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