啓太24才が片思いの女社長
古森史郎
第1話
僕は
某有名私立大学を卒業して、コンピューターのウイルスを監視するプログラムを開発している会社に就職したんだ。
学生のとき、ハッカーまがいの事をやっていたからコンピューターには詳しいと自負してる。
だけどその会社でやらされた仕事って、プログラムを作る時間よりも書類を作る時間の方がはるかに多いんだ。
だって、銀行とか保険会社ってシステム開発部という部署があるでしょ、そこの連中が超面倒くせー奴ばっかりでさー。
プログラムを変更する時『あれ出せ、これ出せ』って言われて、申請書とか説明書を書きまくる訳ですよ。
一年しか持ちませんでした。いやー、一年もよく耐えて働いたなあって思う。
それで、フリーターになって色んなバイトをしたよ。ある日、朝七時から大宮の駅前でティッシュ配りをしてたんだ。
配っても配っても、中々受け取ってくれないんだよねー。
なかなか減らないからさあ、ちょっとサボってスマホいじってたんだ。そしたら僕を監視している奴がいてさー。
そいつが僕のところへやって来たと思ったら、ティッシュの段ボール箱取り上げてこう言ったんだ。
「もうお前はやらなくていい、さっさと帰れ!」だって(-_-)。
その日は落ち込んでたけど喫茶店に行ったよ。仕事探さなきゃスマホ代払えなくなるからねえ。
喫茶店の窓際に座ってノートパソコンをテーブルの上に置き、スマホをケーブルでつないでテザリングする。なんかソフト関係のいい仕事ないかなあって、調べていたんだ。
そしたらテーブルの横に、女性が現れたんだ。
「あなた、何してらっしゃるの? こんな時間に」
僕は手を止めてその女性の顔を見上げる。その人は紺色のビジネススーツに白いシャツ、七三分けのボブカットで細長い眉と大きい目、口元は愛らしくシュッとしていた。——完全に僕の好みのタイプじゃないか!
「えーと、仕事探してるんですよ」
「あら、少しお話を伺ってもいい?」
その女性が僕の顔を覗き込んで、目をパチパチさせたんだ。そのまん丸な目を見た僕はつい右手を前に出して、「どうぞ」って言ってしまう。するとその人は僕の前の椅子に腰かけ、膝を斜めに傾けてから「ありがとう」と言った。
真正面からその人を見る。そのほほ笑む顔が思いのほか可愛い! 一瞬で僕の好感度メーターが振り切れそうになった。僕の表情を察知されたかな?
「あなたの様に賢そうに見える方が、どうして仕事を探してるの?」
「はあ、大学を出てある会社に就職したんですけど、仕事がつまんないので一年で辞めました」
「あら、そう。さっきちょっと見てたらソフト関係の仕事を探してたわよね」
「ええ、コンピューターのプログラムを作るのが好きなんです。前はウイルスを監視するソフトを作る会社にいました」
「あなたお幾つ?」
「24才ですけど」
「私の会社に来ない?」
「え、」
いきなりそんな事を言われて僕はちょっと驚いた。
その人はハンドバッグから一枚の名刺を取り出すと目の前に差し出す。
「去年の秋に会社を設立したの。『コンソルロコ』って名前よ」
その名刺には、『コンシューマーズ・ソリューション・コンサルト (株)コンソルロコ 代表取締役社長
「社長さんですか?」
「ええ、そうよ」
僕はどうしようか迷った、コンシューマーズ・ソリューション・コンサルトっていったい何をする会社なんだろう? いきなり来いって言われても『はいそうですか』ってすぐについて行く訳にもいかないしなあ。だけどこの路子さんはきれいだし頭もよさそうだな、ここで出会ったのも何かの縁があるのかなあ。——しばらくあれこれ考えていた。
「あなた、すぐに決断できないなら、このお話は無かった事にします!」
路子さんは席を立とうとする。
「えええ」
もしかしたらすごくいい会社かも知れないぞ、お前すぐに決断しろ。
「はい、行きます!」
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