第8話:幼馴染と卒業

 今日はいよいよ卒業式だ。

 卒業式には雪羽の母親も来ていた。仕事で忙しいのにも関わらず、無理してスケジュールを調整して来てくれたらしい。

 だが卒業式が終わると、すぐに立ち去ってしまった。そのまま仕事場に向かうらしい。

 仕事場に向かう前に、何度も俺と雪羽に謝っていた。相変わらず律儀な人だ。

 そんなこんなで卒業式も終わり、二人で家に帰宅することとなった。




 家に帰ると、自分の部屋に入った。

 荷物を投げ捨て、ベッドに座る。


「長かったな……」


 思わず呟いてしまう。

 これは今日の出来事についてじゃない。

 俺は今日という日をずっとずっと待っていたのだ。


 長かった。本当に長った。

 小学校の頃に雪羽に出会ってから、色々あった。

 その時からだ。俺はある決意をしたのだ。


「さてと……」


 立ち上がって引き出しへと向かう。

 引き出しの中を漁り、ある物・・・を取り出す。

 いよいよこれ・・を使う日が来たと思うと、興奮を抑えられなくなる。

 それをポケットにしまい、雪羽の家へと急いだ。




 雪羽の部屋に入ると、まだ荷物整理していた雪羽がそこにいた。


「あっ……リョウくん。どうしたの?」

「…………」


 こいつは本当に俺の理想通りに育ってくれた。

 顔つき、スタイル、胸の大きさ、性格。全てが俺好み特徴だ。

 世界広しといえど、雪羽のような女は少数しかいないだろう。


 だからこそ――この日をずっと待っていたのだ。


「リョウくん……?」


 ゆっくりと雪羽に近づく。


「あの……さっきから何でダンマリなの……?」


 雪羽にそばに行くと、体を掴み――


「……へ?」


 そのままベッドに押し倒した。


「リ、リョウくん? な、なにをするの……?」

「…………ずっと待ってた」

「えっ? な、何の話……?」

「この日がくるのを……ずっと待ってたんだ」

「あ、あの……?」


 ポケットから家から持ってきたある物を取り出し、目の前に見せつけた。


「これ。何だか分かるか……?」

「え?」


 雪羽は俺の手に持っている物をジッと見つめた。

 最初は困惑した感じで見つめていたが、徐々に驚きの表情へと変わっていく。


「そ、それって……まさか……」

「さすがに知ってるか。さっき持ってきたんだよ」

「……ッ!」


 俺が持っている物。


 それは――コンドームだ。


「な、何で……リョウくんがそんなものを……」

「決まってるだろ。今から使うからだよ」

「…………」


 そう。

 これから雪羽と性行為をするために用意した物だ。


 雪羽はずっと処女のままだ。

 意外かもしれないが、これには訳がある。


 今までもキスをしたり、胸を揉んだりはしたものの、一線だけは超えることは無かった。

 雪羽が俺の理想の女に育ちきってから、食べてしまおうと決めたのだ。

 果実だって、ある程度育ってから収穫したほうが美味しいだろう?

 だから高校を卒業するまで待つことにした。


 要するに、俺は楽しみを取っておくタイプなのだ。


「もういいよな? 今日という日をずっと待っていたんだ。まさか俺が襲ってこないとか思ってたわけじゃないよな?」

「……………………あは」

「分かったらさっさと服を脱げ。もう我慢の限界なんだよ」

「あははは……」


 俺の息子・・・・も、はち切れんばかりに大きくなっている。

 一ヶ月前から禁欲してたからな。準備は万全だ。


 さっそく服を脱ごうとした時だった。


「んなっ!?」


 突然、雪羽が俺を掴み、転がるように動いた。

 するとさっきまで俺が雪羽に馬乗りしていたのに、今は俺が下になり、雪羽が俺に馬乗りになる格好になってしまった。


「お、おい! 何したんだ!?」

「ふふふ……そうだったんだぁ……」


 な、何が起きた?

 どうして俺が押し倒されているんだ?


「雪羽? どうしたんだ急に?」

「もう……そうならそうと言ってくれればよかったのにぃ……」


 雪羽の様子がおかしい。

 何が起きている?


「私はね、ずっと待ってたんだよ? ずっとずーーーーっと待ってたんだよ? リョウくんならいつか私の処女を奪ってくれるんだって。私はいつでもリョウくんに全てを捧げる覚悟があったんだよ? でもね、いつまで経ってもそんな素振りは無かった。もしかしたら私に飽きたんじゃないかって思ったこともあったの。知ってる? 前に裸見られたことあったよね? あれってワザとだったんだよ? こうすれば襲ってくれるんじゃないかって思ってやってみたの。でもね、結局何もしてこなかった。もう私には興味ないのかと思ってショックだったんだよ? それから何度か誘惑してみようとしたけど、結局どれも駄目だった。何やってもリョウくんは襲ってくれなかった。それ以外にもあれこれ試してみたけど、振り向いてくれなかったよね。そんな日々が続いてどんどん自信が無くなっていったんだよ? 卒業したら私のことなんて見捨てられるんじゃないかって。ずっと不安だったんだよ? でもね、今日やっと分かったよ。卒業するまで待っててくれたんだね。もー、リョウくんったら。それならそうと言ってくれればよかったのに。だったら私も色々と準備したのに。あ、でもね。避妊具なら私も持ってるよ。いつかこうなる日がくるかもしれないと思って持っておいたの。別に使わなくても私は構わないよ? リョウくんの好きなようにしていいからね? もし子供が出来ちゃっても大丈夫だよ! えへへ……」


 早口で喋っているが、唐突すぎて言ってることの半分も理解出来なかった。


 雪羽に何が起きたんだ?

 こんな性格じゃないはずだぞ。

 俺の知らない雪羽が居る……


「ねぇ。リョウくん」

「な、何だ?」


 その時に見せた表情は、今まで見たことも無いような笑顔だった。



「大 好 き だ よ」


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