幼馴染は俺のいいなり
功刀
第1話:幼馴染は内気
俺には幼馴染がいる。
家もすぐ隣で、小学生からの付き合いだ。
高校生になった今も、毎日のようにそいつの家に訪れている。
学校から帰ると、鞄を置いてからすぐに隣の家に訪れる。合いカギも持っているので、いつでも出入り可能だ。
幼馴染の家に入ると、目的の部屋へと一直線に向かう。
部屋の前に到着するとすぐにドアを開いた。
「おーっす。今きたぞー」
「……! もう……いきなり……入ってこないでよ……」
「別にいいだろー。今さら細けぇこと気にすんなっての」
困った顔で俺を見上げる少女。
この少女こそ、俺の幼馴染である。
名前は
髪は腰に届きそうなほど長く、大人しそうな印象を受ける子だ。
胸も意外と大きいし、スタイルはいいほうだと思う。
俺が言うのも何だが、学校の中でもトップクラスの美人に入ると思う。
雪羽は未だに制服姿だった。
俺は家に帰ってからすぐに来たからな。着替える時間が無かったんだろう。
部屋に入ってからすぐに本棚へと向かった。
「んじゃさっそく昨日の続き読むか。えーっと……」
本棚にある漫画を漁って目的の本を探し出す。
「あったあった。続きが気になってたんだよなー」
「…………」
本を手にしてから床にゴロンと居座った。
「…………ほぅ。こういう展開できたか……」
「…………」
「ほうほう……」
「…………」
しばらく本に没頭していると、雪羽から話しかけてきた。
「ね、ねぇ……リョウくん……」
「ん? なんだよ?」
雪羽は俺のことを『リョウくん』と呼ぶ。
俺の名前が
小学生からそう呼ばれていた。
「あのね……私……まだ制服のままなんだけど……」
「それがどうした? さっさと着替えろよ」
「だからね……あの……」
「今は忙しいんだ。後にしてくれ」
「うぅ……」
困った表情で俺を見下ろす雪羽。こいつはいつもそうだ。
雪羽は気が弱く、まず怒るようなことはしない。
そんな性格だからか、常に眉を〝ハの字〟にしているようなやつだ。
「だ、だからね……その……」
「んだよ。ハッキリ言えよ」
「そ、そろそろ着替えたいんだけど……」
「だったらさっさと着替えればいいだろうが」
「で、でも……」
こいつが言いたいことは分かりきっている。
だがあえて気づいていないフリをする。
「あ、あのね……リョウくんが……いると……その……」
「何が言いたいんだよ?」
「だ、だから……このままだと……着替えられないというか……」
「は? 何言ってんだお前。一人で着替えることすらできないのか?」
「ち、違うよぉ! そうじゃなくて……リョウくんがいると……やりにくいというか……」
「ふーん」
予想通りだな。
俺がいると着替えられないと言いたいんだろう。
だがそんなこと知ったことか。
「す、少しの間でいいから……部屋の外に居てほしいというか……」
「何でだよ。今いいところなんだよ。邪魔すんな」
「うぅ……」
雪羽から悲しそうなタメ息が聞こえた。
いつものことだからか、諦めたようだ。
「じゃ、じゃあ……廊下で着替えるね……」
「……は? 何でだよ」
「えっ……」
やっぱりそうきたか。
だが無意味だ。
「お前いつも廊下で着替えてるのか?」
「そ、そんなことしないよぅ……」
「だったらここでやればいいだろうが。馬鹿かお前は」
「で、でもぉ……リョウくんが居るから……」
「あん? 俺がなんだよ? 別にいいだろ。今ここで着替えろよ」
「え、えぇ……」
さらに困った表情になっていく雪羽。
けどそんな顔をしても俺の気は変わることは無い。
「それとも何か? 俺が邪魔だと言いたいのか?」
「だ、だってぇ……このままだと……」
「別に着替えるところを見たりしねーっての。どんだけ付き合い長いと思ってるんだ」
「そ、そうだけど……」
「まさかと思うが、俺の言うことが聞けないってのか?」
「……ッ」
全く。困ったやつだ。
敵わないって自覚してるはずなのに、いつも無駄な抵抗をしようとする。
「だったらここで着替えろ。いいな?」
「……わ、分かったよぅ」
「んじゃ続き読むから。くだらんことで呼んだりするなよ?」
「う、うん……」
そして再び漫画に集中することにした。
しばらくすると、後ろから服が擦れるような音が聞こえてきた。
雪羽が着替えはじめたらしい。
背後から黙々と着替える音が聞こえてくる。今の雪羽は下着姿になっていることだろう。
だが別に後ろに振り向いたりはしない。
これが俺たちの関係だ。
雪羽が俺に逆らうことは無い。
小学生の頃から変わらない。
なぜなら――幼馴染は俺のいいなりだからだ。
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