第150話 遂に現れた隻眼の男
足手纏いが増えたが、とりあえずアナスタシアを乗せておこう。ほっとくと直ぐに休みたがるからな。師匠が鬼の様な顔をして、虎次郎を睨んでいる。そんなに、アナスタシアをおんぶしたかったのか……。街道を進んでいくと
「あれ? 誰か道の真ん中に倒れてる?」
蘭が倒れている人を発見する。俺とアナスタシアにはまだ見えていない。
『どれどれー? 行き倒れ?』
アナスタシアが、虎次郎の頭をペチペチと叩き急かす。虎次郎はアナスタシアに急かされ先行していたが、途中で急ブレーキをしその場でガクガクと震えて出す。なんだ? 魔物か?
「蘭、魔物でもいるのか?」
「違うわ。道端で倒れているお爺さんを見て震えてるみたいよ」
「道端で倒れてる人が怖いのか? 師匠の方がよっぽど怖っあぎゃっ!」
師匠に鞘で頭を殴られた……。口で注意してくれたら良いのに、俺の頭はシンバルじゃないんだぞ?
『あっあああああ』
虎次郎の上のアナスタシアも震えている。
「なんだよ、どうしたんだよ。白銀の髪に刀、隻眼、キャラ濃いなあ……なあ蘭、爺さん生きてるのか?」
「洋一失礼だよ。この人は生きてるよ、
玄同勝正? うーん? 誰だ? アナスタシアが良からぬ事をしたのは確実なんだろうけど。
「お孫さんを助ける直前で……」
「ああ!! 豪爺いと似た境遇の人か!」
俺がデカイ声を出して納得していると
『やめて! 大きな声出さないで! 起きたらどうすんのよ!』
いやいや、アナスタシアお前の声の方がでかいからかな。
『ねーねー。お爺さん、なんでこんなとこで寝てんの? 風邪ひくよ?』
あっリュイが玄同さんをツンツンしてる。
「……ん? ━━なんじゃあてめえ等は、物盗りか? いやガキだしなあ。こっちじゃガキでも物盗りやってるんだったか……俺は文無しだぞ」
アナスタシアは、速攻で虎次郎の後ろに隠れた。アイシールドもびっくりの高速移動だな。
「ちんまい、嬢ちゃん。━━俺の髭を引っ張るんじゃねえよ。それとそこにいるよなあ、俺の獲物よおおお!!」
玄同さんはリュイを押し除け、声を荒げる。片目は爛々と輝きを放ち、鞘から抜かれた刀には殺気が込められている。
「どんな因縁か知らないけど、女性になんて質量の殺気を向けているんだい?」
師匠は、玄同さんに剣を抜き放ち静かに言い放つ。
「カッカッカッ。面白え小僧っ子だなあ、寝とけや」
俺の目には、玄同さんが消えた様にしか見えなかった。師匠の背後を取る。
「嫌だよ」
師匠は鞘で、玄同さんの顎を打とうとするが、玄同さんに簡単に防がれてしまう。
「筋は良い、伸び代もまだある。我流なのが勿体ねえなあ、剣の師匠がおらんだろ? 赤髪のガキを差し出せや? なっ?」
物凄い圧力だ……。ヤクザやチンピラが可愛く見える。だが、蘭やリュイは、静観してその場を動かない。
「玄同さん、貴方本当にアナスタシアに復讐する気ありますか?」
蘭の言葉に玄同さんは笑う。
「喋るクマタカか━━。人の心を見透かす様な言葉は、いけねえなあ」
蘭を見つめ、目を細め笑う。
「殺そうと思ったら直ぐにやれましたよね? 獲物が無警戒で近づいてきたら、私なら必ず狩ります。貴方は、それが出来るのにしなかった。何故ですか?」
玄同さんは、蘭の言葉を嬉しそうに聞いてから、俺を睨みつける。
「カッカッカッ。面白えなあ小僧。虎と赤髪のガキをかばってるつもりか? そんなに弱っちい身体で、震えながら」
「しっ師匠も言ってただろ? 女の子はまっ護るもんだって……! 怖いけど……」
「カッカッカッ、そんなに怯えながらじゃ格好がつかんなあ」
なんでアナスタシアをかばってんのか、自分でもわからない。ただ虎次郎にしがみつき、震えるアナスタシアを見たら、俺が護らなきゃって思ったんだよ。
「泣いて怯えてる女の子がいたら、護らなきゃって思うだろ!」
「洋一君、足が震えてなかったらめちゃくちゃ決まるシーンなのに」
「師匠! 今は俺のターンだから! たまにはカッコ良く決めさせて!」
玄同さんは、俺達を笑いながら見守っている。アナスタシアが、涙目で震えながら俺達の前に出てくる。
「アナスタシア! 下がってろムグッ━」
師匠に手で口を塞がれる。見てろって事か? アナスタシアは服をギュッと握っている、明らかに恐怖している。
『あっあの! その……こっ怖くて隠れてしまったけど、貴方の気持ちを無碍にし、こっこちらの世界に連れて来てしまい……もっ申し訳ございませんでした……私の命で済むならあっあげますから……他の人達にはその』
「むー! むー!!」
アナスタシアは死ぬ気だ……。くそっ! 師匠の力が強過ぎて、俺は抜け出せない。なんて馬鹿力だよ!
『お願いします! 神格を剥奪された私の命では、不十分かもしれませんが……! どうか!』
アナスタシアは土下座をして、玄同さんに許しを乞うている。
「許し……許しか」
玄同さんの眼光が鋭くなる。殺意、憎しみ、どれとも違う、強いて言うなら悲哀? 殺意や憎しみならわかるが、何故悲哀が?
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