第111話 必殺のVXガス!


 とりあえず現状を整理してみよう。瘴気はなくなって、堕ちた神獣も討伐した……ここまではいい、城も外壁も斬り裂いている。更に亮は、皇国の人を全員眠らせて地下に閉じ込めている。


「犯罪の臭いが、ぷんぷんするぜえー!!」


『するぜー!』


 リュイ、元ネタ知らなくても合わせてくれるんだな。だけど今はふざけている場合じゃない。


「いやーすっきりした。さっ! 創造神に文句言われる前に旅立とう!」


 師匠は、うん……文句言われたくないだけだな。


「蘭、どうしよう?」


「うっうーん。葵は、皇国の将軍も殺してるし逃げるしかないよね」


 そうだ、忘れてた! 皇国の将軍も殺してたんだ……。


「あはは。まっ良いじゃない! 亮君を置いておけばなんとかなるよ」


 勇者だし、なんとかなるのか?


「ワターシ、コノコヲツヨクシマース!」


 ヤクオウの小さい身体を、優しく撫でる亮。


「そういや、こいつヤクオウなのかな?」


「うーん。私の鑑定じゃ名前が違うんだけど……」


『これは、ヤクオウの子。ビャクダじゃなあ、ところで御主ら神殿が無いんじゃが……』


 さらっと会話に混じってきやがったファンキー爺い。顔には、うっすらと青筋が見える。

 これはやばい、キレてるパターンだなあ。どうやって宥めればいいんだ? 菓子折とか? 神殿壊したの二箇所目だしなあ。しかも今回は、跡形も無いし


「あはは。僕は約束してないしなあ。じゃあ洋一君行こうか!」


『待たんかい! 御主らやりたい放題やって帰るつもりかのう?』


 やりたい放題やったのは、主に師匠ですとは言えないよなあ。


「エルフの城の完全な形も分からないし、神殿もちゃんと見てないので、再現はできないですけど……それでも良いですか?」


 だめだろうなー。前も神殿の造りに文句言ってたし。一々文句垂れるからなあ……。


『ええよ』


 ウンウンと頷くファンキー爺い。


「「良いのかよ!」」


 俺と師匠の綺麗なツッコミが重なる。


「はあ……やりますよもう。亮、地下に閉じ込めた人達の出入り口は?」


 亮は瓦礫を退かし、階段を指す


「カイダンノシタデース!」


「なあ今……階段埋まってたよなあ。息できるのか?」


 俺の疑問に亮は、ぎぎぎぎぎぎと首を背ける。


「タブン? ダイジョーブーデイス!!」


「早く救助しろおおおおおおおお!!」


「ラジャーマルスイサン!」


 言葉はふざけているが、亮は迅速に人々を外に運び出す。


「蘭、命に別状はないかな?」


「大丈夫。皆んなきちんと呼吸をしてるし、外傷もないみたい」


 唐突に邪神レーダーが反応しだす。


「ゲェッ! 誰かに邪神の因子が付いているな……」


「叔父さん!」


 レイ先生が、お父さんに駆け寄る。叔父さん、顔怖っ! めちゃくちゃいかつじゃねえか! えーマジで? レイ先生の尻を触ったから、次は叔父さんもいっとけみたいな感じ? いややりますよ……やらせて貰うんだけど……。


「レイ先生、邪神の因子が叔父さんに付いてるみたいだから……その叔父さんのズボン脱がしますね?」


 うう、感動の再会に水を刺すってレベルじゃないぞ……。 叔父さんのズボンを脱がしますね? ってど変態じゃねえか。レイ先生も、心無しか冷ややかな眼で見てくるし。


「邪神の因子を取り除くだけなんで? ちょっとだけ……すいません……」


 尻の毛が濃い、叔父さんの筋肉質なお尻があらわになる。


━━━ブウッ!


「くっくせえ! 信じられない臭いだ! やばい臭いだ! VXガスだ!」


 叔父さんの尻と俺てが淡く光る。


「臭いと、頭痛でクラクラする……! だが人命優先だ!」


 光が収まり、邪神の因子が消える。


━━ブウッ


「おええええ!!」


 俺は、叔父さんの尻に盛大に嘔吐をしてしまった……。


「レイ先生。ごめんなさい、余りにも臭くて……」


「いや、うん。叔父さんのオナラは、凄い臭いだから……」


 レイ先生が、何故か俺が近づくと半歩下がる。蘭は、師匠と一緒に距離をとっている。


「洋一君、くっさ! オナラの臭いが染み付いてるよ!」


『臭いのーあー臭い』


 臭い、臭いって! 俺のせいじゃないのに! ファンキー爺い、てめえぶっ飛ばすぞ!

 リュイまで無言で距離を取っている……傷付くんだぞ! 虐めカッコ悪い! 前園もポスターで言ってだろ!


「ふぐう。糞おお! 邪神の因子の反応がまだある! しかも男ばかり! 蘭、俺が指示する奴らを並べてくれ!」


 その数26人の屈強な男達が並べられる。ガチホモの人達しか喜ばない光景だぞ。


「俺はガチホモじゃないんだ……キツすぎる。リアルなBLってのは、乙女の幻想とはかけ離れているんだぞ……」


 俺の手が光り、次々と男達の尻から邪神の因子を消していていく。見た目がイケメンならまだ良いが、エルフの男達って何故か、皆んなガチムチなんだよ……。線が細い人なんて皆無! 皆んな筋肉達磨で、尻だけ毛深い。悪夢すぎる……。


「ファンキー爺いは、なんで俺に向けてずっと手をかざしているんだ?」


『御主の因子が暴走しないように、コントロールしているんじゃよ。儂がやらなかったら、100%邪神の因子に呑まれとるぞ』


 おっおお……珍しく神様みたな事をしてくれてたのか。

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