第98話 建前と本音はきちんと使おう


 戦禍かあ。確かに、俺がいたら道化師や、邪神連中が攻め込んでくるかもしれない。アーレイと仲直りができていないが、次の街に行くべきなんだろう。


「アーレイと仲直りと言うか……謝りたかったけど仕方ないか」


「あれは、洋一は悪くないよ……」


 蘭が優しく撫でてくれる。だけど、アーレイに恐怖を与えたのは俺だ。俺が、怖がらせてしまったんだから一言謝りたかったんだけど……。


『手紙でも書いたら? ヨーイチが、悪い事したって思うんだったらさ、ごめんねって書けばいいじゃん! それで誰かに渡して貰えば?』


「手紙! そうか、手紙なら! 師匠、ちょっと待ってくださいね!」


「化け物って、言われた相手に手紙を出すなんて変わってるね」


 師匠は、肩を竦めて笑っている。


「地面だから、書きにくいな……。字がよれる……」


『ヨーイチ、字汚っ!』


「地面のせいだって! よっし、こんなんで良いか。初めての手紙が、謝罪文って何処ぞのスキャンダルを起こした芸能人みたいだけど……」


「あはは! 不倫した芸能人みたいだね!」


 師匠が、指を指して大爆笑をしている。芸能人は、こんな気持ちなのかな……。俺、芸能人にはなりたくないや。笑われたくないし。


「洋一、アーレイのお母さんに、手紙を渡して貰うの?」


「本当は、直接が良いんだけどなあ。そうするしか、ないわな」


 俺達は、アーレイのお母さんがいる大広間へ向かう。


『来た時は、あんまり見れなかったけど、妖って面白いねえ。城は、ぼろっちいけど』


「おっおい! リュイ、ぼろっちいとか言うな! 失礼だろ? アーレイのお母さん達に聞かれたら……」


 あっ、アーレイのお母さんが、めちゃくちゃ引きつった笑いをしてる。やべえよ、怒られるよ。あんなに優しかったのに……。


「あっあのですね、リュイはまだ産まれたばかりで、世間知らずでその」


「いえいえ、気にしていませんよ? ええ、私の一族がずっと大切にしてきた、お城ですけど? 年月は経っていますし? ぼろっちいのも……まあ事実ですからね」


 ひいいい! ムカ着火ファイヤーを超えて、ムカ着火インフェルノだよ! 怖いよ! 青筋浮いてるし、怒りマークが盛り沢山だよ!


「すみませんでした! あの、手紙をアーレイに……」


「━━手紙ですか?」


 渡すタイミングを間違えたああああ! 火に油を注いでしまった! 誰かあああ、消化器、消化器プリーズ! 114? 110? 消防隊呼んでー!


「あわわわわ、おっおりえ! アーレイをこわがらがらへびだったから、その、てまみを書いてあの……」


 やっやばい、アーレイのお母さんが怖すぎて舌が上手く回らない……! 蘭も師匠も、目を逸らしてるし! 元凶であるリュイは、すました顔してるし! ああああああ、神様、仏様、魔王様! お助けくださいいい! 

金貨1枚あげるからあああ!


『その契約うけたでー! ほな、ちょっと待っときや!』


 えっ? 今貧乳の関西弁が、聞こえたような? これはこれでピンチなんじゃないのか? 主に金銭的な意味で……。


 空から、後光が差した。


『助けに来たでー! 金貨1枚分だけやけど』


「貴女は?」


 アーレイのお母さんや、リュイや師匠は知らないもんなあ。あっ師匠が、好戦的な笑みを浮かべてる。


『うちは、商売の神をやらせて貰ってるアマルナや。そこの失礼なガキに加護を与えた神の一人や』


 失礼なガキって……あれ? 貧乳神の乳に不自然な膨らみがあるぞ? あれれー? AAAカップなのに? まさか、こいつ! パットいれてきやがった!


「アマルナあああああ!」


『うおっ! なんやねんいきなり。あっ金出しや!』


「金は出してやる、手術費用だろ? なあ、アマルナお前は間違えている。絶対にやってはならない禁忌を犯している!」


『は? 禁忌なんて犯してないわ!』


 俺は、アマルナの乳に指を指し


「パット入れてきたろ? パットだけはだめだ、今すぐやめるんだ。なっ? 貧乳でも需要はあるんだぞ? おっぱいに失礼だとは思わないか?」


 アマルナが、顔を真っ赤にして胸を隠す。


『なっ……! なっ……!』


 俺は、アマルナの肩を優しく叩き


「もういいんだ。パットなんかしなくても、お前のAAAカップは魅力的だからな? 大丈夫だからぶべらあああああああ!」


 何故だか、蘭にぶっ飛ばされた。


「いたたたた、蘭! 今真面目な話をしているんだ! 邪魔するんじゃない!」


 俺は、蘭に猛抗議を始めようとしたが


『ヨーイチ、あんたさいてー』


「柊様、女性に対して余りにも失礼ですよ?」


 二人の女性の冷めた視線に怯んでしまう。


「すげえ! 洋一君! このパットを入れた超絶美人さんは誰だい? 最初は、戦おうかと思ったけど、素晴らしい貧乳じゃないか! 実に美しい! あっパット外して貰えませんか?」


 師匠、あんた勇者過ぎるだろ……。


『なんなんやもー! 早く金貨出しや! もう帰る!』


「ああ! 洋一君、金貨を出すんじゃないぞ、出したら腕を切り落とすからな!」


 腕を切り落とすって、必死過ぎだろ……。師匠が、モテない理由は俺でもわかるな。


 師匠のテンションが上がると、俺以上にめんどくさいな。アマルナが、パットを外してくれたら解決するのに。

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