第84話 男なら絶対に欲しい力


 ニヤリと笑う葵。一体アルテミスに何をしたんだろ?


「なあ、仕返してなにしたんだ?」


 気になる、どんな仕返しだ? エロい奴か? ノクターン宜しくな感じか?


「封印した」


 葵から出たのは、予想外な答えだった。


「は?」


「だから封印したんだよ。あの封印なら、女神でも出るのは苦労するんじゃないかな? 飛ばされる瞬間にかけたから不完全な感じだけど」


 封印したって……すげえな。不完全とは言え、アルテミスを封印したのか。


「葵ってすげえんだな。半端ねえ」


「余りにも言い分が身勝手だし、正直地球に帰る事を邪魔されて、イラって来たからね」


「それはイラつくだろうな。アルテミスだし」


「洋一君もアルテミスを知ってるの?」


「ああ、子供にされて魔獣の森に捨てられた。日本で言えば、誘拐と殺人未遂だな」


 葵が引いている、そりゃ引くわな。


「ははは、酷いねそりゃ。特典とかスキルは?」


「無い、しかもステータスが上がりにくい細工までされてたしな」


 葵は目を細めて蘭を見る。蘭はやらんぞ?


「それは酷いな、そこの神獣が特典・・なのかと思ったよ。僕より強くなる可能性があるしね」


 特典だと? 蘭を物呼ばわりか? 蘭は俺の大切な家族だ、ここはビシッと言わないと。


「蘭は家族だ、特典呼ばわりすんじゃねーよ」


「洋一、落ち着いて」


「ごめんごめん。僕の世界じゃ、神獣を貰ってた人もいたからさ」


 素直に頭を下げてきた。


「お詫びにしばらく護衛してあげるよ。精霊と神と魔王に祝福された、洋一君に興味があるしね」


 ニヤリと笑いサムズアップしてくる葵この流れはまさかの掘ったり掘られたりの土木工事か!?  BLとか俺には絶対無理だ。リアルなBLなんて、目も当てられないぞ。


「おお!?  葵、お前ホモじゃないよな!?」


「ないない。僕は貧乳が好きなんだ。小さなオッパイを愛でるのが好きなんだ!」


「ワッチ、コイツ嫌い」


『セクハラ勇者ね!』


 リュイ起きたのか……。なんか、最近よく寝てるな寝る子は育つ的な感じかな? アーレイはアーレイで無い胸を隠して身震いしてるし。


「リュイ、最近寝過ぎじゃない?」


『気づいたら寝ちゃうの、何だろ? ヨーイチ知ってる?』


 まさかの聞き返しだが、そんなの俺が知る訳がない。


「いや……俺にはわからん」


「「精霊の格が上がる(のじゃ!)」」


 アーレイと葵が、2人そろって声を上げる。アーレイが、葵を見て、嫌そうな顔をしてる。


「そこの雷の精霊は、格が上がる為に、身体を休めてるんだよ。もう少ししたら、多分上がるんじゃないかな?」


「葵はなんでそんな事を知ってるんだ?」


「前の世界にいた、精霊の友達2人が同じパターンだったからね」


「葵にも精霊の友達がいたんだな。リュイとバーニアが俺の友達だ。まあバーニアには、あんまり好かれてねえけど」


「精霊は物凄く、気難しいからね」


 肩を竦めて笑う葵。色々苦労があったのかもしれないな。


「ちょっとその素晴らしい、貧乳を愛でさせて欲しいってお願いしたら、凍らされるわ、風で吹き飛ばされるわで大変だったよ」


 苦労じゃない、100%変態なコイツが悪い。


「前の世界は、それなりに楽しかったんだけど、何故か皆んな、僕が近づくと胸を隠すんだよ。そんな事しても透視のスキルがあるから意味ないのにね」


 はっ!?  透視? 透視ってあれか? 見えちゃうのか? 全部丸見え? レイ先生の乳首も見えるのか? やっやばい鼻血が出そうだ……。


「とっとっとっと透視!?  マジですか!?」


「うん! 必死でスキルスクロール探したよ。異世界に来て先ず初めに習得した、素敵なスキルさ」


 素敵過ぎる! 神が現れた! 今の肉体なら俺は犯罪にならない筈だし! このスキルを教えて貰わなきゃ!


「師匠と呼ばせてください!」


「えっなんでいきなり?」


「しっ師匠、透明化や物質を擦り抜ける……なんて事は?」


 俺は、師匠に縋り付いた。


「でっできるけど」


 師匠は、引いていた。


「うああああああああああああ!!! すげえよ勇者! すげえよ異世界!! そんな力が、あるなんて! 男の夢120%じゃないか! 真○もびっくりだよ! ラッキースケベを超えてるよ!」


 俺は興奮して、その場でブレイキングダンスの大技であるヘッドスピンをした。ヘルメットが無いから頭皮がちょっと痛い。リュイが雷を貯めてるがまさか━━━


『ヨーイチ! 最低ー! 喰らえ!』


 やっぱりかああああああ!


「アバババババババ」


 リュイに雷を喰らわせられたが、そんな事は小さな、小さな問題だ!


「冷静になりなよ洋一!」


 何故か怒っている蘭の言葉と共に、氷の塊が眼前に迫る。


「あっアブベジ!!」


 痛い、めちゃくちゃ痛い、目玉が飛び出るかと思った。


「洋一君大丈夫かい? 君達もうちょっと加減をしないと彼のステータスじゃ? あれ? HPが減ってない? 何で?」


 人が痛がってたら、師匠がめちゃくちゃ混乱してる。


「どうしました?」


「ちょっと失礼!」


 いきなり鞘で頭を殴られた。


「痛ええええ! 師匠なんですか! 痛いっすよ!」


「やっぱりHPが減らない……洋一君は、無敵なのか?」


 無敵なのかじゃねーよ! めちゃくちゃ痛かったよ!


「無敵じゃないですよ! 痛いし、天使にレイピアで刺されかけた時は、普通に血はでたし殺せるって言われたし」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る