第61話 男には浪漫武器


 新装備が、悪趣味な玩具扱い……。鎧は妥協して貰ったが、ヘルムはダメだった……。レイ先生のアイテムボックスに死蔵されてしまった、悲しい……。


「ヨーイチ、だから儂は言ったろーに! ヘルムなんて、騎士じゃないからいらんて」


「だって、頭を守らないと!」


「いや頭を狙われないように、立ち回れよ。儂の知ってる馬鹿弟子は、素手で矢を掴んでたぞ」


「俺は弱いから、レイ先生みたいな脳筋な動きはできないあぎゃっ!」


 オタマで、頭をぶん殴られた痛い…。


「人を、筋肉の塊りみたいに言わないの! ヨーイチはだからモテないのよ!」


 そんな! 俺間違った事言ってないのに! 防御力が上がってもレイ先生のお仕置きは痛い!


「そう言えば、エレン爺いアレ・・は出来たのか?」


 エレン爺いは、ニヤリと笑い工房を指差す。


「あるぞ、とっておきが! 馬鹿弟子がいない時にリュイ様に頼み込んで試射したんだが半端なかったぞ」


「やった! アレなら俺も、遠距離戦が出来るな!」


『ヨーイチびっくりするわよ! ドカーンビカー!だから』


「洋一、その装備持てるの?」


「ワシャシャ! ヨーイチが持てるようにしてあるわ! 軽量の魔法迄かけてあるぞ!」


♢エレン工房


 そこには俺が描いた、IMI TAR-21(タボール21)のアサルトライフルに似た物が、置いてあった。


「すっすげえ! スコープの横部分に、リュイの席まである!」


「ワシャシャ! リュイ様の魔力を充電し、トリガーを引くと、リュイ様の電撃が発射される。しかもだ、発射される魔力が収束して、発射されるから、威力もとんでもないぞ! ヨーイチよ、武器に名前を付けてやれ。愛着が湧くぞ?」


 名前、名前か、刀は紅夜叉ベニヤシャで決まりだな銃は雷砲らいほうだ!


「雷砲だ!」


「見たまんまだね。ネーミングセンスは相変わらずないのね……」


『ライホウ! ライホウ、カッコいい!』


「だろ!? よーし試射だ!」


 よっしゃ! 早速外に出て試射だ! 


「リュイをセットだ!」


『よーし! 魔力を溜めるわよ!』


 リュイが発光し、バチバチと音を立てながら、魔力を溜める。


『魔力セット完了! いつでもいけるわよ!』


「よーし! 行くぞ! ファイヤー!!」


 トリガーを引くと、激しい轟音を立てながら銃口から雷のビームが飛び出す。余波で地面をえぐり、木々を貫いていく。


 ついでに、俺の鼓膜も貫いていく


「みっ耳が、耳が」


「ばかたれが! 耳当てをつけないで、フルパワー出しおったのか!」


 エレン爺いが、何か言ってるが聞こえない。蘭ヒールをヒールをかけてくれえええ。


「はあ。ヒール」


 蘭のヒールで、やっと聴力が元に戻る。


「あれはヤバすぎる。俺の鼓膜がブチ壊れた……」


「威力は、折り紙つきじゃ!」


「威力は凄いけど、もう少し洋一でも、使えそうなのは無いんですか?」


「うーん。じゃあこれはどうじゃ? 弾にリュイ様の魔力を込めて貰い撃つタイプじゃ」


 エレン爺いが次に出したのは、俺がハンドガンタイプも欲しいと言って書いた、リボルバーだ。


「おっこれなら! ファイヤー!」


 結論……反動で肩が外れかけたが、鼓膜は無事だし威力もある。リュイの魔力で、弾速も上がる素敵仕様。素晴らしい!


「どっかで、見たことありそうな感じだが、これなら使えるな! でも、弾はどうしよう」


「ワシャシャ大量に作ってあるわい。あるだけ持ってけ。なくなったらまた作るわい。ただしこれに魔力を入れられるのは精霊のリュイ様だけだ。バーニア様だと溶かしてしまうし、他の精霊でもだめだろうな」


「リュイと俺、専用装備か! 良いねえ! 浪漫武器だ! エレン爺い、蘭の爪装備は?」


「有るぞ。これもまた凄いのが出来た! グリフォンの魔石にレッドドラゴンの魔石と両方の爪を合わせた渾身の力作だ!」


 赤黒く光る爪を蘭につけてあげる。


「蘭似合ってるぞ!」


「そうかな?」


「カッコいいし! 可愛い! 蘭マジ天使っほげえ!!」


 鳩尾にタックルはだめだよ蘭……。


「蘭よ、その爪に魔力を流してみろ。ヨーイチの装備も魔力が有ればもっと色々出来る機能はあるんだがヨーイチには無いからな」


 魔力なしで悪かったな……俺だって魔力欲しいー! 堺さあああん! 魔力くださーい!


『むりむりー!』


 律儀に返事をくれたが、そんなに明るく言わないでも良いのに……。


 蘭が魔力を爪に流すと、爪が赤く光りを灯す。


「その状態で、相手に振るえば、熱線が相手に飛び、焼き斬る。超近接戦用だ! まあ蘭には、魔法があるし早々に使う事にはなるまいが、これは保険だな。更にグリフォンとレッドドラゴンの魔石に内在していた魔力が、蘭に供給され常時魔力の底上げをしてくれる」


「おお! 蘭が、パワーアップだな!」


 蘭が、めちゃくちゃパワーアップした! 良かったこれで蘭の身の安全が増す。


「後はヨーイチ、これをやる首から下げとけ」


 燻んだくすんだ色をした、石が着いたネックレスだった。


「これ何?」


「わからん。さっき昼寝してたら、紗香が夢に出てきてお前にこのネックレスを渡せって。儂も見た事がない石だし、ハンマーで叩いたが傷一つつかんかったわ」


 げっ! 人の物を迷わずハンマーで叩くとか、エレン爺いには倫理観とか道徳心は無いのかよ! せっかくの紗香さんからの贈り物が、壊れなくてよかった……。


「叩くなよ! 壊れたらどうするつもりだったんだよ!」


「ワシャシャ! そりゃ窯に焼べて無かった事にしたわい!」


 何て恐ろしい爺いさんだ……。

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