第58話 加護も金で買えるんやで


 豪爺いは、ピエロと邪神の動向を探り、可能なら始末すると言い、天界を離れて行った。


 そんな話の最中も、光一はずっと泣いていたけど。


「光一、もしかしたら邪神を倒せれば道は開けるかもしれないんだ。だけど創造神の神殿巡りもあるから、直ぐにとは……いかないんだが」


「お騒がせして、すみませんでした……」


 正直豪爺いや堺さんのせいで、そんなに気にしてやれなかった……すまん光一。


「いやだから……光一ちょっと待ってくれよ! 俺と蘭が頑張るからさ!」


 光一は力無く頷くのみだ。なんてまかかならないかな……。


『うーん。光一君だっけ? 君の家族に、手紙を出すくらいなら出来るよ? 現状は洋一君達の頑張りに、期待するしかないけどねえ。手紙位なら、僕がサービスするけどどうする?』


 堺さんの言葉に光一が、反応する。


「家族に届けて貰えるんですか!?」


『住所と名前が分かればね。まあ、向こうでは死んでる扱いだから少し書き方を工夫しなきゃだけど。手紙は枕元にでも置いておけば、信憑性も少しは出るだろうしね』


「お願いします! 僕なんでもしますから! どうか!」


 光一が、必死に頭を下げている。


『対価はいらないよ、柊君達の頑張りで邪神が消えるなら万々歳だしね』


「うっ……地味にプレッシャーが」


 豪爺いの孫を助けなきゃいけない、光一の手紙、邪神討伐……責任重大過ぎるな


『ヨーイチ君、僕はそろそろお暇するね! 僕を呼びたくなったら、天に向かってエロス愛してると叫んでね!』


 不気味な事を言いながらエロスは去って行った。


「紗香さんは、天界でまだ修行? するんでしょ?」


「ええ、まだ力の制御が上手く出来ないからね。洋一君、無茶しちゃだめよ? 命あっての話なんだからね? 蘭ちゃん、洋一君を宜しくね?」


「はい。家族として、きちんとお世話します」


 おかしいな、俺の扱いが捨て犬みたいだぞ? ちゃんと世話するなら飼っていいよ的な。


『僕は、天界で暇つぶししてるよ。ピンチになったら助言はしてあげるね! それと黒岩さんの事は、余り信用し過ぎない方が良いからね?』


 なんでだ? さっき敵対してたからかな?


「豪爺いを信用しちゃだめなの?」


『あくまでも、信用し過ぎない事。これが、僕が言える範囲の助言だよ』


「うーんまあわかった!」


『これ、絶対わかってないやつだなー。蘭ちゃん頼むね?』


「わかりました。あの一つ聞きたいんですがいいですか?」


『何かな?』


「邪神側も異世界に地球人を召喚したりするんですか?」


 蘭の質問に堺さんの目が、少し鋭くなった。


『するよ。地球人は、恩恵やスキルを受け取りやすいし、なにより洗脳しやすいからね。現に、邪神側の筆頭であるアルテミスに召喚された、洋一君がいるじゃないか?』


「それはわかっているんですが、一人気になる少年がいて、その少年が固有スキルを持っていたんです」


『あちゃー。向こうサイドに固有スキル持ちかー。生贄は膨大な数だったろうなあ……』


 生贄? 多分、蘭が言ってるのは勝利君の事だろう。勝利君を召喚するのに、大量の生贄が必要だったのかな? あれでも、光一や紗香さん達は、生贄無しだった気がするけど。


『邪神側が行った召喚はねえ、生贄有りきなんだよ。強力な固有スキル込みで、こちらに転移させる荒技。まあ外道なやり方だよ。アナスタシアは死した魂か、死の縁ギリギリの魂と肉体を使ってるから生贄の必要が無い。もちろんノーリスクでは無いよ? 例としてあげるなら、光一君みたいに肉体が衰えていたり、固有スキルがなかったりと、様々だけど軽いもんさ』


 じゃあ邪神側は、強力な手駒を揃え放題じゃないか!


「堺さん! それじゃ邪神側に有利過ぎません? こっちがめちゃくちゃ不利な気が」


『邪神側のリスクは生贄の数と質によって、スキルが変わるところだよ。凡人を100人集めても1人の天才に叶わないでしょ? それと、莫大な魔力が必要になる。だから邪神側も、頻繁には行わない筈だよ。リスクが高いからね』


 なるほど、なら大丈夫なのかな?


「じゃあ、勝利君の洗脳を解く方法はあるの?」


『うーん、難しいね。まあその子を捕まえたら僕を呼びなよ。ピエロ程度の洗脳なら、今の僕でも解けるしね』


 流石は堺さんだ! 良し勝利君を救う目処も立ったぞ!


『柊君は、前向きだね。クリスマスに夜勤をして、一人寂しく弁当を食ってる人もいるのに』


「えっ? 何の話ですか?」


『いや何でもないよ』


 堺さん、急にクリスマスとか夜勤とかどうしちゃったんだ? ボケ足りないのかな?


『そんな事より、神殿探しはいつから行くんだい?』


「エレン爺いの装備が完成してたら直ぐにでも行きます!」


『そんな二人に、僕からプレゼントをあげよう』


 堺さんの手が光り、俺と蘭を赤い色の光が包む。


『僕の加護だよ。柊君にはエロスやアマルナの加護もあるから滅多に発動しないようにしといたけどね。それに……多分今のステータスで、発動したら爆発しちゃうし』


「ばっ爆発!? 魔王の加護が恐ろし過ぎる!! それにエロスの加護って、あいついつの間に!」


 エロスの加護とかまじでいらねえ。


『エロスの加護は、ちょっと厄介かもね。ネタバレはしないけど。アマルナの加護は、お金を払わないと発動しないんだよ。ただ発動したら、どんどんお金が減るから要注意だよ?』


「金次第って、そう言う事かああああああ!!」


 あの無乳めえ! 加護発動したら常時金を貪り盗られるとか、めんどくさい設定つけやがって!

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