第50話 計画通り
邪神を倒すとか、無理ゲー過ぎる。旅立った勇者の前にラスボスが、居るようなもんだぞ!?
「因みに、蘭の力が……邪神に通じたりは?」
『今のままじゃ厳しいかなあ。蘭ちゃんもわかってるでしょ? まだ、神獣としての力を全て使えてないって事が。本来の力ならピエロ野郎も、一撃だった筈だからね』
「そうなのか蘭?」
「うん……。身体が馴染まないと言うか、違和感が拭えないと言うか」
俺は、そんな状態の蘭にずっと甘えて無理をさせてたのかよ……。最低じゃねえか。蘭のパートナーが、聞いて呆れちまう失態だ……。
『まっ! 後100年位、神獣として徳を積めばいけるじゃろ』
『ハッハッハッハ! それじゃ柊君達が死んじゃうよ。蘭ちゃんは神獣だから、寿命はあってないような物だけど』
『ならばどうする気じゃ? 邪神を儂が倒すような事はせんぞ?』
おっさん達が、うるさくて感情にも浸れない……。
『創造神の加護を蘭ちゃんに授ければ良いじゃん。そしたら向かうところ敵なしだよ? 僕以外には』
『えー。まあ確かに儂が倒す訳じゃないから直接じゃないけどさー。儂の加護ってバレたら、アルテミス怒るんじゃない? 儂、怒られたくないしい』
渋ってやがる……ん? 待てよ良い事思いついた! 心を読まれないように、バストの歌をひたすら頭の中で歌い続けよう。
AカップBカップCカップ━━━
「Dカッじゃなかった堺さん、堺さん! 作戦タイーム! ファンキー爺いは心覗くの禁止で! 堺さん! 心を覗かれないようにわちゃわちゃして!」
『わちゃわちゃ? 面白そうだからオッケー』
堺さんが、部屋に土の壁の仕切りを作り、ファンキー爺いと、俺たちの間を遮る。
『結界もしたし、読唇術で見えないよう、わちゃわちゃしたけどこれで良いの?』
『声は聞いてて、いいんじゃろー!?』
壁の向こうからアホな発言をしてやがる、ダメに決まってんだろーが。
堺さんが、魔法で結界を重ね掛けする。
『で? 柊君は、何を思いついたのかな?』
「先ずは蘭、俺が不甲斐ないばかりに無理をさせてたみたいだな。本当は、一番に気づかなきゃいけなかったのに……申し訳ない!」
「洋一、心配させない様に隠してた私が悪いんだから気にしないで」
俺は蘭を抱きしめた。蘭は優しい、いつも俺を庇ってくれる。俺は蘭に利を与えられているのだろうか……。正直、蘭から与えられてばかりだ……。
『えっとあのー。二人のラブラブ振りを、僕は見てればいいのかな?』
堺さんの存在を忘れていた!
「あっいやその、そそそそうだ。ファンキー爺いはアルテミスに怒られたくないんですよね?」
『らしいねえ、怒らせとけばいいのに』
「それはまあ、置いときます。あいつがこちらに来てから、俺達に干渉して来ない理由は、わかりますか?」
『ん〜ん〜良いかなあ。そもそもアルテミスが放置してるからいけないんだしねえ。理由はね柊君の眠ってる力が原因だよ、干渉したくても出来ないから放置してるだけ。単純に、忘れてる可能性の方が高いけど』
「なるほど! ならこっちにも有利だ! 見えないなら加護を与えても、多分気づかないですよ!」
『えっえーそれはどうだろう? どうかなあ?』
「大丈夫です。少し話した感じだけど、細かい事は気にしないタイプだろうし。性格は絶対大雑把! これは間違いない」
『良く分かってるなー! 流石柊君』
「よし! 全力で、なあなあにして加護を頂こう大作戦です!」
「大丈夫かなあ」
堺さんが、魔法を解いた。やっぱり魔法ってカッコいいな。この作戦ならオールオッケーな筈だ!
『さー! 作戦は決まったかね?』
ファンキー爺いさんはワクワクしていた。
『作戦? 作戦と言うかなんと言うか』
堺さんが、苦笑いをしている。あの完璧な作戦に不満でもあるのかな?
「ファンキー爺いさん、アルテミスは控えめに言っても粗野で粗忽で粗暴です。そして物事を深く考えない、適当な奴です」
『ふむ、確かに! その通りじゃ!』
「だから加護を与えても、バレません!」
『確かに!』
計画通り!
『だが……駄目じゃなー』
何でだよっ! 確かにって言ったじゃねえか。
「今、確かにって言ったじゃないか!」
「あの、加護が与えられない理由とかあるのでしょうか? 私の品格が、足りないからでしょうか?」
蘭が哀しげな声色を出す。
「おい、爺い蘭に文句があんのか!? 鼻フックするぞ!」
『早ちりするんじゃない。儂が文句があるのは御主じゃ、他力本願、自分が弱い事を棚に上げて人に頼りすぎじゃないか? 御主、神獣ちゃんを護れるのか? 神獣ちゃんが、強くなって、はたして側にいる資格があるのか? 神獣ちゃんの変調にも気付かなかった、御主が』
正にぐうの音も出ない正論だ、俺は弱い、蘭の変調にも気付かなかった。このままじゃいけないのはわかっている。
だけど……! だけど……!
そんな事はわかっているんだよ! 誰よりも! この世界に来て、嫌って程、痛感してるんだよ!
「強くなりてえよ! 修行してるよ! どんなにレベルが上がりにくくても、同年代の奴等より弱くても、必死に修行してるよ! だけど、なにかが足りないんだよ! 加護をくれた奴等もいるけど、それは借り物の力だし! 俺の力じゃないのはわかってんだよ!」
俺は、手から血が出ている事にも、気付かずに握り続けた。
「洋一、もう大丈夫だから……。私はわかっているから」
蘭が、優しくヒールをかけてくれた。
『ホッホッホ、やっと心根を晒したのう』
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