第32話 手裏剣?最先端は石だよ石


 三人で家路に着くと、桜さんがめちゃくちゃびっくりしていた。


「日本風の家が! 隣にはちょっと壊れてるけど、煙突付きの家が!」


 ナイスリアクション。蘭が、作っただけあるな!


「日本風の家? あー右のでかいのが、俺とレイ先生の、左が光一と紗香さんの。紗香さんは療養中だから負担かけたらだめね! 煙突付きのが、神級鍛治師のエレン爺いの工房件自宅ね。壊れてんのはエレン爺いが爆発させたから」


 全くせっかく作ったのにすぐに壊しやがって……まあ自分で勝手に直すから良いけどさ。


「爆発ってマッドサイエンティストでござるか? エレン? エレンってどっかで聞いた事あるような気がするでござる」


 エレン爺いってやっぱ有名人なのか? まあ鍛治の腕はNo. 1らしいからな。


「エレン爺いは、No. 1らしいからね」


「No. 1なら、聞いた事あるのも頷けるでござるな!」


「桜、それでいいのね……」


 蘭が、何やら俺達を可哀想な目で見ている。


『ヨーイチ、お帰り!』


「おう、ただいま。こっちが新しい地球仲間の桜さんな! コスプレ趣味の人だ!」


 桜さんが、不思議な顔をして俺を見てる。


「突然何もいないところで私の紹介をしはじめたでござる……まさか洋一君には心の病が?」


 はっとした顔をした後、泣きそうな目でこちらを見てる、盛大な勘違いをしてやがる! 俺は幻覚を見てるわけじゃないぞ。 誰が心の病だ!


「桜は、精霊が見えないのね」


「精霊が、いるでござるか! うわあ。いいなあ私もお喋りしたいなー」


 桜さんのテンションが、うなぎ上りだ。ボルーデジマックスだな、某ゲームなら巨大化しちゃうテンションだ。


『あら見えないの? 光一や紗香が、見えてるから洋一以外の異世界人は見えるのかと思ってたわ』


「さり気なく、俺を省くな。傷つくだろ! 俺だって異世界人だ!」


 リュイめ! シカトしやがった!


「羨ましいなー異世界に来てから獣人やドワーフやダークエルフには会ったけど、基本城のガチムチ兵士とお爺ちゃんしか知り合いいないからなー。洋一君はずるい!」


 ズビッシと指を刺されてしまった。頬を膨らまして拗ねてる、小動物的な可愛さがある。癒されるなー。


『ヨーイチ、鼻の下が伸びててキモい』


「伸びてないし、きもくないわ!」


 何て失礼な奴だ、すけべな目で見てないよ! ほんとだよ! 癒されてんだよ!


「リュイ様、桜に加護を与える事はできますか?」


 蘭がリュイに聞いてるけど、加護って確かそんなほいほいあげれないんじゃないのか? よくわからんけど


『良いよ! じゃあいくよー!』


 やばっ! アレがくっ


「「目があああああああああああ」」


 2人そろって、目を押さえてその場でのたうち回る。


 リュイにまた、目潰しをされた。ポケモ○のフラッシュより強烈だぞ! 失明したらどうしてくれんだ!


「リュイ、やるなら言ってくれよ、失明したらどうすんだよ」


「目がチカチカして何も見えないでござる、加護を貰う試練でござるか!」


 桜さんが勘違いしてるし


『2人目の加護だから、はりきっちゃった! これで桜も友達ね!』


「声は聞こえるのに、目が眩んで姿が見えないでござる。でも異世界で初めて精霊の友達でござる!」


 友達になれて、桜さんははしゃいでるけど、まだ目が眩んでるのか? 明後日の方向を向いているな。女の子だから回復が遅いのかな?


「洋一、多分男女差があるのか? とか考えてるけど違うからね。洋一が変わってるだけだから」


「心を読むんじゃない、恥ずかしいだろ」


 平然と心を読みやがって、照れちゃうだろ。


「何じゃヨーイチ客か? 遊んどるなら手伝え」


 エレン爺い、が工房の修理の手を止めて俺達の方に歩いて来た。


「非力な俺に、何を求めてんだよ。エレン爺い、アスベルク王国から遊びに来た俺と同郷の桜さんだ」


「ワシャシャそれもそうじゃな。ん? まてサクラ? あーもしや王の孫疑惑がある異界の女子か?」


 王の孫疑惑って何だ? 桜さん地球人だよな? 俺の疑問をよそに2人は話しはじめた。


「あっ、私の事知ってる? はじめまして甲賀桜です」


「はじめましてじゃないぞ、御主城に来た儂に奇妙な形の投擲武器とうてきぶきを依頼してきたじゃろ? 覚えとらんか?」


 投擲武器? 手裏剣とかクナイかな? 桜さんコスプレイヤー型の忍者だし。


「あー!! こんなん作るなら石でも投げろって言った爺いちゃん!」


「ワシャシャ思い出したか。ヨーイチの知り合いなら作ってやってもええぞ」


「俺、割引って奴だな!」


「割引? 無料じゃけど」


 無料なら先に言えよな。


「はあ、洋一無理に2人の会話に混ざらないの。リュイ様が暇そうにしてるよ?」


『暇そうにしてるって、空気を読んでただけよ! サクラまだ見えないの?』


「はっお爺いちゃんのせいで、忘れてた! きゃー!! 何これ、めちゃくちゃ可愛い!」


 ござる口調すら忘れてJK並みにはしゃぐ桜さん。


『えっ可愛い? えへへ照れちゃうな』


 リュイが、モジモジしてる。あんなリュイ初めて見たぞ。


「可愛いって言われて、照れてんの? ぎゃあああかあっあああああ!」


 いつもより電撃が痛いぞ、火傷したらどうすんだよ全く。


 エレン爺いめ、会話に飽きたのか修理に戻りやがった。皆んな、自由過ぎるだろ。


「洋一、前にも言ったけどデリカシーがなさ過ぎ。だから地球に居た時も番が出来なかったんだよ? 前にも言ったでしょ?」


「こら! 桜さんの前でその話はするんじゃない、誤解されちゃうだろ」


「デリカシー云々より、あれだけの電撃を受けて何で平気何でござるか? 感電死するレベルでござるよ」


 桜さんが、めちゃくちゃ引いてる。リュイが絶妙な手加減をしてるからじゃないのか?


『さっそんな事より、レイや光一を紹介するからついて来なさい!』


 あからさまに話題を変えやがった。あの電撃ってやっぱ死ぬレベルなのか?


「なあ蘭、あの電撃って…………あっいない。みんな待ってー俺の家だぞー!」


 一人置いて行かれた俺は、焦ってリュイと蘭と桜さんを追いかけた。

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