第16話 此処に住む? 宜しくな!

 悲しいすごーく悲しい現実に気付いてしまった。俺は神より強いのに、人間と魔物以下。神って何なの? 村人以下なの? いや村人が実は最強説でもあるのか?


「いつか、俺は村人より強くなってやる!」


「洋一は相変わらず目標がかなり低いよね。世界一強い奴になるとかじゃないの? こういう時は」


 蘭が呆れている。だが俺には俺のやり方がある。着実にいかなければ!


「世界一強いのは蘭に任せる、俺は先ず村人を超える次に農夫を超える次に狩人を超える次に冒険者ってな具合にステップアップしてくんだ」


「ふーん。そう言えばレイから念話があって戻って来るって。光一の分の布団も頼んどいたよ」


 さらりと流しやがった。


「えええ! 念話俺もしたかったのに! まっ帰って来てくれなんら良いか」



 次の日光一といつもの様に畑仕事をしていると、外から野太いオッさんの不快な声が響いてきた。


「なっ何じゃこりゃあああああああ!! 」


「うるせっ、何だよ一体」


「洋一君、見に行こうよ」


 二人で外に出ると、大風呂敷を背中に背負った身長160位の筋肉ムキムキの髭モジャオッさんとレイ先生がいた。


「レイ先生久しぶりです! 会いたかったです!」


 光一がギョッとした顔で俺を見ている。何だよ、何か文句あるのか? おおん?


「レイ久しぶり。光一、洋一は基本女性には猫被りだから気にしないで」


 猫被りって今日日聞かないよな。


「ヨーイチ久しぶりだね、蘭ちゃんも元気してた? そちらの方は初めましてかな?」


「あわわわわわわ、いっいせかいじん、また戦わされりゅ」


 あちゃー光一が異世界人アレルギーを発祥し出したか。


「光一、レイ先生は危険じゃない。俺の先生だから大丈夫だからな? 怖くない怖くない」


「ヨーイチちょっと失礼よ。私は戦いが嫌いな人に戦わせるなんて事は無いはよ?」


「あわわわ、ぼきゅ光一です、洋一君と同じ国からきっきました」


 それだけ言うとダッシュで部屋に帰って行った。あいつ俺に会った時は人見知りしなかった癖に、異世界人見たらこれじゃ、暫くだめだな。


「ヨーイチ私何かまずかったかな?」


「ああ、大丈夫ですよ。あいつ俺と同郷何だけど、ちょっと無理やり戦わされ過ぎて、異世界人アレルギーになっちゃったんだ。俺達の国は戦いと無縁だしね。それで精神的に参って逃げ込んだ先が此処って訳」


 光一はまだ子供だし、魔物や人間と命のやり取りを無理にする必要は無い。そんなんさせられたらストレスで死ぬわ。


「戦いと無縁の生活してたのね……。それなのにいきなり殺し合いの生活をしろって言われたら辛いよね。でも私は無理に戦わせる気は無いんだけどなあ」


 ちょっとシュンとしているレイ先生、可愛いな。


「それもこれも女神が悪いんで、しこたま文句言ったら探さないでって、言って消えってたよ」


 レイ先生が顎が外れそうな位驚いている。


「えー!!! 女神様が来てたの!? 女神様が降臨するなんて歴史的一大事よ!」


 そんなに大事なのか? 普通に遊びに来たぞ?


「精霊王の爺いも来てたけど、まあ普通だよ。皆んな暇だから遊びに来ただけだし」


「洋一違うでしょ、精霊王様は気をつけなさいって警告と、女神様は勘違いで降臨してきたんでしょ。洋一と違って暇人じゃないの」


「なっ何い! 俺だって畑仕事や訓練してるんだぞ! ニートではないぞ!」


「はいはい、引きこもり乙。それでレイそっちのドワーフの人は? 何か家をベタベタ触ってるんだけど」


 毒舌のマシンガンだ。ハートが砕け散りそうだぜ……。


 そう言えばあの爺いさん、さっきから人の家触りまくって何してんだ?


「あーこの人は」


「儂ゃ神級鍛治師のエレンじゃ。レイが珍しい素材を持ってての、こいつの狩りの腕に余る素材だから儂が問い詰めて着いてきたんじゃ」


 爺いさんは鼻息荒くしながら家を触っている。因みに自己紹介の時にこちらを一切見ずに答えやがった。


「ごっごめんなさい、勝手に。私の狩の師匠でもあるからその逆らえなくて」


 レイ先生は凄く申し訳なさそうにしてるがそこじゃない。


「爺い! ベタベタ触るな。こっち向けよ失礼だろーが」


「何じゃ小僧」


 いかつい顔してんな。だが俺は怯まんぞ!


「俺は家主だ、そして蘭の家族だ。今は光一とリュイも入れてチーム地球の生活を取り戻せ! だよろしくな」


「チキュウ? 何の事かわからんが、小僧が家主か。儂も此処に住むからよろしくな!」


「ああよろしく」


 俺達は固い握手を交わした。何だ友好的じゃないか。


「「えっ!?」」


 蘭とレイ先生がびっくりしてるけど、どうしたのかな?


「ん? 何か変だった?」


「何じゃ何かおかしな事があったか?」


「「いやいやいやいや」」


「エレン爺いは此処に住みたいんだろ? 何が出来るか知らないが住みたいなら住めばいいだろ? 光一のリハビリにもなるし」


 当面は地球に帰るあてもないし、光一のリハビリはしなきゃならんしな。


「儂は鍛治師じゃ、しかも神級鍛治師鍛治師しんきゅうかじし! 鍛治師の中で一番じゃ!」


「一番らしいから、まあなんだ適当に頑張ってもらえばいいだろ?」


 神級が何か知らないが、一番なら頑張って貰えばいいだろう。俺の装備を作って貰おっと。


「師匠!? あっあの国から来ていた、士官の話やら仕事やら、どうするつもりなんですか!?」


 士官の話? 士官って国の重鎮とかじゃないのか? 実は偉いのかこの爺いさん? 


「もう仕事は受けん、儂は此処に住む。小僧が気に入ったし、この建築物や壁の素材も気になる。それにいい素材も沢山あるんだろ? なら儂は此処から動かん」


 動かないらしいから、お国には諦めて貰おう。


「蘭、工房的なの作れる? 防音対策マシマシで」


「はあ。ラーメンみたいに言わないでよ。まあ出来るよ、エレン要望書を書いて。素材もあるんでしょ? あるなら使うから」


「話がわかるの! 馬鹿弟子とは大違いだわい、そういや小僧達名は無いのか?」


 大風呂敷から次から次へと訳の分からない物を並べる爺さん。生き生きしてんなー。


「あるわ! 俺は柊洋一、こっちは蘭。洋一って呼んでくれさっき逃げ出したのが光一な。あいつの装備かなりレアだから後で見せて貰えよ、女神が造ったらしいぞ」


「ヨーイチ! 女神が造った装備もあるのか! ひゃっはー!! 此処は天国じゃ! 良き弟子を持ったわい」


 やはり鍛治師はレア装備に目がないようだ。これで光一共仲良くなれるだろう。


「あんまり興奮して倒れるなよ血圧あがるぞ」


「蘭ちゃん、ごめんね。師匠言い出したら聞かないから」


「レイこっちこそ、ごめん。洋一も一回決めたらテコでも動かない頑固者だから」


 何やら二人でため息をついている。エレン爺いはハイテンションで小躍りしている。


 鍛治師なら俺専用装備とかも作れるのかなあ、ドラゴン一式とか、モンハ○みたいな感じで。賑やかになってきたな。後は光一をどうするかだなあ。

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