第8話 現実は男の夢を撃ち砕く

 蘭はレイを慰めながら思った。レイはエルフと精霊のあり方に悩んでいたのだろう、そんな時に洋一は簡単に精霊と友達になってしまった。対価も代償も無しに。


「ヨーイチは凄いね。普通さ、どんな人間でも精霊と友達になれるなら力をくれって思っちゃうのに。ヨーイチは邪な考え一切なしでさ、今もあんな風に遊んでる」


 寂しそうな目をしながら洋一をみるレイ


「少し変わってるのよ。洋一はね、小さい頃から遊ぶ暇も無く師匠の元で修行の毎日を送っていたの、だから友人と呼べる人は居なかったの。だからかな、毎日私に話かけていたわ、私はまだ神獣になる前だし喋る事が出来なくてもどかしかったわ」


 悔しそうに呟く蘭


「そうなの?」


「ええ、だからこの世界では沢山の人に触れて欲しいの。だけど、洋一は怖がっているのよ。

 ステータスが弱いって理由もあるけど、何よりも人が沢山居る場所で自分がちゃんとやっていけるかどうか、自分が受け入れられるかどうか。だから必要以上にはしゃいでるの。

 そんな中リュイ様は洋一に友達になりたいと言ってくれた、洋一は嬉しかったのよ。この世界で初めての友達だから異種族だろうと気にしない、最初はゴブリンに話しかけようとしてたくらいだしね」


「それは何て言うか、ヨーイチらしいわ」


 レイはやっと笑った。するとドタバタと外から洋一が走って帰って来るのが見えた。


「蘭! レイ先生! 花摘んできた、リュイが教えてくれてさ、めっちゃ綺麗だろ? これ家に飾ろうぜ」


『この花は花瓶に水でも入れておけば長持ちもするわ。アタチを褒めなさい!』


「リュイはすげーんだぜ、ピューッて飛んで花見つけてくれるしさ!」


「そうね、ヨーイチありがとう、リュイ様もありがとうございます」


 良かった、リュイと花を摘んできたかいがあったぜ。レイ先生が笑ってくれた、少し安心したぜ。きっと蘭が慰めてくれたんだろうな、蘭は昔から優しいし。


『アタチは一度精霊界に帰るわ。ヨーイチ遊んでくれてありがとう! また来るね』


 精霊界って何処だろ? 色んな世界があるんだなあ。俺はこの世界の子供達より、強くならねば。


「あっ蘭! 風呂入ろうぜ、蘭も疲れたろ? たまには洗ってやるぜ」


「じゃあ私がヨーイチを洗ってあげようか?」


「えっ!?」


 レイ先生とお風呂だと!? いっいかん、鼻血が出そうだ。


「はあ、レイダメだよ洋一はスケベ何だから。危ないよ?」


 蘭め余計な事を言うんじゃありましぇーん!


「スケベって言ったって子供でしょ? 大丈夫よ、行こ」


 やった! レイ先生とお風呂だ、ひゃっほーい! 風呂に行き、服を脱ぎ捨てる。


 俺の心はワクワクが止まらなかった。


「入るわよー」


 レイ先生が入ってきた、入って来てくれたのだが、薄い服を着ている、何故だ何故だああああああ。俺は固まってしまった。


「洋一、何を期待してんのさ。洗ってくれるとは言ってたけど裸になるとは言ってないし、ましてや一緒に湯船に入る何て言ってないでしょ?」


 らああああんバラすなあああ!! 淡い男心だったのにいいい。


「全くヨーイチは、今からそんなんだと大人になってから大変だよ?」


 中身は大人なんだあああ、クソビッチの呪いのせいで見た目は子供になってるけど、子供だからこそのラッキースケベ期待してたのにいい。その日の夜は枕を濡らした。


♢次の日


『ヨーイチアタチが来たのよ!』


 リュイが飛び込んできた


「ふぁあ。まだ早いぞ、おやすみ」


 眠い寝かしてくれ……


『寝るなあああ!!』


「ぎゃああああ」


 こいつ、癇癪ついでに雷撃してきやがった。俺じゃなかったら死ぬぞ!


『さっ今日は何して遊ぶ?』


 良い笑顔しやがってこの野郎


「蘭えも〜ん、リュイが虐めるよう」


 リュイを無視して、蘭に話しかける


「ヨーイチが起きるの遅いんだよ。レイはもう素振りしてるよ」


「ムムムム、遊んでる場合じゃない、俺も素振りしなきゃ! リュイ行くぞ!」


『素振り? 行く行く!』


 素振りをしに行く途中、俺はリュイに気になる事を聞いてみた。


「この世界にはどれだけの種族がいるんだ? 人間だろ、精霊だろ、エルフだろ? 後は?」


『ヨーイチは馬鹿だね、ドワーフに、獣人族に、魔族に決まってるじゃん』


「獣人!? 獣耳! いつか会いたいなあ。せめて村人並みの強さを手に入れなければ!」


 獣人最高! ケモミミ最高!


『目標低っ! 驚きの低さね! 流石よ』


 リュイに小馬鹿にされた


「ばっか同年代の女子にも勝てないんだぜ? 蘭の相棒として女子以下じゃ洒落にならん」


『ヨーイチカッコ悪い』


「ぐぬぬぬ」


 弱いのは重々承知だが、いざ女の子ぬカッコ悪いて言われると地味に凹む。気持ち悪いよりはましだけど……。


「せめて体力だけでもあればねえ、他の場所にも行けるけど洋一はその体力すらないからね」


『あれ? でも私の力あげたから多少は体力も上がったはずだよ?』


「「「えっ?」」」


 全員の視線がリュイに集まる


「蘭緊急事態だ! 俺のステータスを見せてくれえええ!」


「わかったよ。緊急事態では無いけど」


 蘭はため息混じりにステータスを家の壁に投影してくれた。


柊洋一

12歳

職業 引きこもり笑


『引きこもりってあははははは』


「笑うな、職業はほっとけ! 」


「らーん! ステータスハリーハリーハリー! 」


「はいはい。あっほんとだ。少し強くなってる」


称号ーー

レベル5

体力50

魔力 0

攻撃力30

防御25

素早さ30

運500


スキル

雷耐性小・精霊視

加護

雷精霊の加護


「やったああああ、同年代の奴らに勝てるうう! しかも初スキル、やったぜ!」


 すげえスキルだ! やっとファンタジー要素が俺にも!


『ちょっとヨーイチ!! 何でアタチの加護あげて、そんな弱さなの? 運だけは凄いけど』


「運と魔力以外、オール10アップってあまり変わらないのよね、洋一はめちゃくちゃ喜んでるけど」


「ひゃっほーい今夜はパーティだぜ!!」


 俺のテンションはうなぎ上りだ!


『パーティ? パーティなの? やったわ!』


 俺はめちゃくちゃ喜んでいた。リュイも何だかんだ喜んでくれた。今夜はドラゴン肉のパーティだ!


「あの蘭ちゃんそれって同年代のレベル1の平均よね? レベル5の条件なら勝てないんじゃ」


 蘭はレイの口を塞いだ。


「そりゃ勝てないわよ。洋一はステータスやレベルが異常に上がりにくいのよ」


「えっそれは何故?」


「完璧に偽装された女神の呪いよ。何れは解除してあげたいんだけどね、私のスキルじゃ呪術は対象外なの、呪術だってわかったのもつい最近よ。正直やられたわ」


「そんな、じゃあヨーイチは下手したらずっと」


 レイはヨーイチの呪いについてかなりショックを受けていた。


「何とかするわ。その為にヨーイチにはもう少しだけ強くなって貰わないとね、せめて村人位にはね」

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