第33話 復活

 城の中に隠れながらドラゴンの大群が去るのを待っている間に、オレは新しく取得した職業である勇者について、確認していた。


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ユウ

Lv.100


STR:10,029

CON:11,790

POW:16,268

DEX:12,043

APP:45


職業:勇者

EXP:502,290

SKILL:1,092


【両手剣術Lv.20】【片手剣術Lv.54】

【全力斬り Lv.55】【火炎斬りLv.21】

【プラスダメージ5】【プラスダメージ10】【プラスダメージ20】

【気配察知】【以心伝心】【調査】【言語力】【直感】【威圧】【間合い】

【速射】【フェイント】【回避】【身体強化】【防御態勢】

【弓術Lv.11】

【配膳 Lv.60】【下ごしらえLv.44】【手料理Lv.30】【調理Lv.42】


【診察Lv.54】【視診Lv.51】【聴診Lv.39】【触診Lv.11】【打診Lv.5】

【スラッシュLv.22】

【クロススラッシュLv.19】

【トリプルスラッシュLv.12】

【ドラゴンスラッシュLv.5】


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「勇者、ねぇ……」


 目の前に表示させたステータスを確認しながら、オレは呟く。職業欄にセットした勇者は、既にレベル100に達していた。


 そして、勇者となったことで新たに取得できるようになったスキルも眺めてみる。スキルリスト一覧から、使えそうなスキルを片っ端から習得していった。新しく習得するのに必要なスキルポイントも、1000貯まっているし使い所だと思った。外に飛んでいるドラゴンの大群に対抗するたの、最終手段。




 覚醒、ベルセルク、大撃断、グレートダッシュ、跳躍、集中、フォース、大防御、戦いの技にステータス強化など、色々なスキルを習得した。


 今朝、この城に逃げ込んだ。時間が経過して、日が沈み始めていた。暗くなって、夜になるとようやく、上空からドラゴンの大群は見えなくなる。


 どこかに隠れていないだろうか、注意深く周囲を観察してみたところ大丈夫のようだった。半日以上も隠れ続けて、ようやく旧魔王城から出られる。


「やっと、先に進めるね」


 マリアは、早くこの旧魔王城から出ていきたいと言っていた。やっとの思いで、という感じだろうか。パトリシアとクリスティーナも同意して、頷いている。


「一応、この先も注意が必要だ。オレが先行して偵察してくるよ。3人は後ろから、ゆっくりとついて来てくれ」

「いいえ、偵察は私が行きます!」


 マリアが偵察を引き受けると名乗り出るけれども、ここはステータスが一番高いと思われるオレの方が適任だろう。もしもドラゴンと遭遇すれば、撃退もしくは逃走が可能だからだ。


「いや、オレが行くよ。マリアたちは後から」

「……了解」


 気が進まないようだったが、無理やり納得させて、オレは城の外へと偵察に出た。


 外に出てきて、もう一度、空を見上げる。ドラゴンの影は見当たらなかった。オレたちを狙うのを諦めて、去ったのだろうか。



 辺りにドラゴン以外の敵も潜んでいないか、危険がないことを確認するため、城の周りを一周して見まわるが、危険そうなモノは見当たらない。よかった。


 よし、大丈夫そうだった。あとは、王都に帰るために旧魔王領を抜けるだけだな。オレは、3人の待っている城の中に戻ってきた。


「どうでしたか?」


 外の偵察を終えて戻ってきたオレに向かってマリアが、ドラゴンは居なかったかと聞いてくる。彼女に頷いて、オレは答えた。


「大丈夫、ドラゴンは去った。早く、ここから出よ……っ!」


 オレは、マリアにドラゴンは居なくなって安全だと伝えて、外に出ようとした瞬間に、鈍い痛みのような感覚を頭の奥に感じた。思わず、地面に膝をつく。


「どうした?」

「ユウ?」

(ッ……!? これは? 一体?)


 マリアとパトリシアの心配する声が聞こえたが返事する余裕がない。オレの頭の中に突然発生した正体不明の痛みが、じわじわと増してきて嫌な予感が増していく。


 その時、城内部の上階から不気味な声が聞こえてきた。


「……フフフッ、やっと封印が解けたわ」


 その声の主は、3階の王座に居る。直感的にそう感じたオレは、立ち上がった。


「ユウさん?」

「……」


 マリアが、突然膝をついたり、黙ったり、立ち上がったりするオレに疑問を抱いたのだろう。名前を呼ぶ声が聞こえたが、オレは城の上階を睨みつけて黙ったままだ。どうしようか。


「皆は、ここで待機! 危なくなったら逃げるんだよ!」

「しかし……、わかった!」


 何か言いたそうに口を開くパトリシアだったが、途中で言葉を止め、オレの指示に従ってくれた。


 オレは、城の中を目的地に向かって走りだした。パトリシアはもちろん、マリアとクリスティーナも後からついて来ない。これでドラゴンとの戦いとは状況が違って、1人で戦える。もし危なくなったら、自分1人なら戦闘から逃げ切ることが出来る、という自信はあった。だから今は、彼女たちについて来られては困るのだ。


 階段を駆け上り、2階、3階と上っていく。そして、玉座へ続く扉を開いて中へと入った。すると、そこにある王座には先ほど居なかった、何かが座っている。




「ふん、人間か。封印を解いてくれたのは貴様か?」


 王座に座っているのは、真っ黒な女性だった。

 長い黒髪、黒い肌、大きな瞳でパッチリとしている。瞳の色はルビーの宝石のように真っ赤で、印象的だった。魔法使いのようなローブに見える衣装を着て、背中には大きな黒いマントを付けていた。


「答えよ、人間よ」

「っ!」


 目の前の女性が、オレに向けてスキルの威圧を発動させたのが分かった。スキルのレベルが低かったのか、それほど効果はない。だが、その行動によって敵意があるということが判明した。攻撃を仕掛けてきている。



「あんたは誰だ?」

「ふっ、ワシを知らんのか。この城の主、魔王だよ」


「何っ? 魔王?」


 驚いたオレの反応を見て、愉快そうに笑い出す魔王を名乗る女性。


「そう。400年もの間、よくもワシを封印してくれたな人間よ」


 その言葉は、オレに対してではなく、人間という人種に対して向けられていた。

 しかし、封印が解けてしまったのか? 400年間、何事もなく封印されていたというのに。やはりオレたちが来たことで刺激してしまい、封印が解けてしまったのだろうか。


 魔王と名乗る女性の封印が解けた。この先、彼女は何をしようとしているのか。

 目的を知ることが先決だと考えたオレは、質問を投げかけていた。


「封印が解けたあんたは、どうするつもりだ?」

「知れたこと。人間を滅ぼすのだ」


 このまま野放しにすることは、非常に危険だ。過去の記録、魔王の所業を考えると放って逃げる事は出来ない。だが、対処の方法は分からなかった。


 かつて、勇者が魔王を封印したと伝えられている。だが、その封印の方法をオレは知らない。再び封印するにも、どうやればいいか……。



 仕方なく、オレは剣を抜く。今のオレでは勝てる相手かどうか分からないけれど、ドラゴン戦で勇者の職業を取得したことが、この魔王戦に続くフラグだったのだろうなと、今更になって思う。


 先ほど取得したスキルが、目の前の魔王に対して有効なのか。それも分からない。けれどもとにかく、このまま逃げることは出来なかった。


「まずは、貴様からだ! 人間!」


 魔王と名乗る女は、王座から飛び上がると、凄いスピードでオレに接近してきて、その勢いのままオレの頭上から攻撃してくる。

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