第17話 ギルド試験・前編

 推薦状については、特に問題もなく取得することが出来た。あとは、ギルドが用意するという試験を合格するだけで、冒険者身分証明証を発行してもらえるはずだ。



 クララに推薦状を書いてもらった翌日。オレは、推薦状を持って再度ギルドの男性受付に話をするために、カウンターまで足を運んだ。


 時刻は昼過ぎ。建物内はガランとしていて、他に人は居なかった。

 

「推薦状、貰えました」

「了解しました。あとはギルドの試験に合格するだけですね。これは、女性が冒険者になる時に受ける試験と同じ内容です。注意してくださいね」


 男性受付は、笑顔を浮かべて言った。彼の表情を見ると、どうやらギルドが用意をしている試験はそんなに難しくはないとオレは予想するが、どうだろうか。


「ギルドの試験は、2つあります。まずは実地試験です。モンスターを倒してきて、ドロップするアイテム、ヤマノ草という素材を合計10個手に入れてきてください」


 指定されたアイテムを集める。ゲームのクエストなんかに、よくあるような内容。オレは頷いて、了解した。


「期限は1日です。今から開始ということで、明日の今の時間を過ぎる前までには、ギルドに持ち込みをお願いします」

「え? 今から?」


「いいえ。試験の説明が終わり次第、スタートになります」

「ッ……、わかりました」


 まだ少し猶予はあるが、説明が終わった瞬間には問答無用で試験がスタートされるようだ。ヤマノ草というアイテムには、聞き覚えがあった。この町に来た時、初めてマリーとモンスターを狩って手に入れたアイテムだろう。


「ヤマノ草は分かりますか? 草原に生息している、アリーアという名のモンスターを倒すことでドロップするアイテムですよ」

「はい、分かります」


 モンスターの名前は知らなかったが、生息地と容姿は分かる。モグラのような土色をしていて、大きな爪を持ったモンスター。マリーとの狩りの時に何匹か倒した経験がある。その時にヤマノ草もゲットしていたので、ヤマノ草というアイテムについて分かる。この試験に関しては、楽にクリアできるだろうと考える。



「実地試験に際しては、仲間の手は借りないように、1人で試験の課題を進めるようにしてください」

「わかりました」


 試験は、1人で行わなければならないらしい。マリーやクララに協力をお願いして手伝ってもらう、ということは出来ないのか。まぁ、今のオレのレベルならば、問題なく課題をこなすことが出来るだろうと思う。



「もう一つは、技術試験です。技術試験は、戦闘技術に関する試験ですよ。これは、ギルド側が用意した試験官と模擬戦を行ってもらいます。実地試験が終わり次第すぐの試験になりますので、こちらも注意してくださいね」

「実地試験後、すぐに試験するの……。わかりました」


 いくつか新しく対人戦用のスキルは取得しておいたほうが良いかもなと、考える。対人戦についてはまだ経験が無かった。なので、技術試験というには、少し用心していかないと危ないかも知れない。



「説明は以上ですが、なにか質問はありますか?」

「いえ、特に質問は無いです」


 まずは草原に1人で向かってからモンスター狩りをして、ドロップ品のヤマノ草を10個ゲットするという課題を済ませる。その後で、技術試験で対人戦を行う。試験内容はバッチリ頭に入った。後は実行するのみ。


「ありがとうございました。早速、草原へ行ってヤマノ草を手に入れてきます」

「お気をつけて」


 俺は男性受付にお礼を言うと、早速1人で草原へと繰り出した。


 目的はヤマノ草ということで、標的はヤマノ草をドロップするアリーアというモンスターだ。アリーアは、この草原に出現するモンスターの中で中位の強さだが、今の俺なら手こずることもなく、倒すことが出来るぐらいのモンスターだ。



 草原にはオレの他には人の気配がなく、他に冒険者は見当たらない。なので、一人でゆっくりとモンスターを狩ってく事にする。



 早速、標的を見つけたので、一応周りに警戒しつつ、モンスターに攻撃を加えるために、腰に掛けてある剣をゆっくりと抜く。


「とぉっ」


 掛け声で相手を威嚇し、標的に対して正確に攻撃を加える。一撃のもと、アリーアと呼ばれているらしい、モグラ似のモンスターは倒れる。



「おっ、ラッキー」


 運がいいことに、1匹目を倒していきなりアイテムがドロップされる。間違いなくヤマノ草だった。この調子なら、直ぐに10個のヤマノ草は集まるだろう。

 その後、広い草原をアリーアを探して狩り、探して狩りを繰り返していった。




 太陽は、遠くに見える山の向こう側に沈み始めた。辺りがオレンジ色に、暗くなり始める頃には、課題のヤマノ草10個を手に入れることができていた。


 明日のタイムリミットまで余裕を持って、ギルドに課題の提出をしに行きたいなと考えていたが、予定していた通りに進みそうだ。




 辺りが真っ暗になる前には町へと戻った俺は、そのままマリーの家へと帰宅した。


 最近は、当たり前になったマリーとの夕食を過ごす時間。今日の食事は、俺が用意したものを、帰ってきたマリーと一緒に食べる。食事中に、試験のことを話したり、マリーの仕事について聞いたりしながら、過ごした。食事が終われば、食器を片付け寝室へと戻ってくる。



 明日の技術試験に向けて準備をしようと、ベッドに横になりながら、スキルリストを眺めるオレ。


 使えそうなスキルをいくつか選んで、新たに取得する。スキルポイントは、だいぶ余っている状況なので、取得するスキルは選び放題だ。


威圧Lv.1:相手を押さえつけるプレッシャーを放つ

剣術Lv.1:剣で戦う武術を身につける

回避Lv.1:攻撃回避の能力アップ


  どれも、取得したばかりのスキルなのでLv.1のままだった。

 あらかじめ、取得しておいてスキルレベルを上げればよかったと後悔するが遅い。対人戦を想定していなかった、自分の予測の甘さに反省する。少々不安だったけど、無いよりはマシだろう。


 明日の技術試験に出てくる試験官はどんな人物なのだろうか、想像を巡らしながら明日の試験に備えて身体を休めるように、ぐっすりと眠った。

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