第3話 Feeding

ローナは左手にスプーンを持って食べようとした。

不格好な持ち方で野菜がたくさん入ったシチューにスプーンを運ぼうとした。

カチーン!

「!」

スプーンは器の縁に当たって手から滑り落ちてしまった。

「……(泣)」

声を出さずにアレックスは笑っていた。

「ほらよ。こんなこともあろうかともう一本。」

「ありがと」

さらに差し出された2本目のスプーンで挑んだ。

今度はシチューのなかには到達できたものの、野菜をスプーンの上にのせる

ことすらままならない。

ましてやすくったり、一口大に切ったりなどもってのほかだ。

その様子の一部始終を眺めていたアレックスは遂に堪らず吹き出してしまった。

「ぶ、不器用なヤツ」

「ふにゃぁ~」

向かい側のソファーに座り、彼女の左手にあったスプーンをよこせと右手を出した。

彼女はきょとんとして彼の顔を見ていた。

「どれ貸してみな。」

ローナは怪訝そうにスプーンを手渡した。

受け取ると器を手に取り、中身を何度か混ぜた。

首を傾げる彼女を彼は見てみない振りをして、平然とした顔で器の中にある野菜をすくった。

口元へ持ってくるとふぅふぅ…とちょっと冷まし、それから彼女の口元へと近づけてきた。

「ほれ、口を開けろ!」

その行動を見て、彼女もようやく理解した。

大きな口を開けて、まるでツバメの子供のように待っていた。

ほろっと野菜が入った。

「ぱくっっ」

じわぁ=と旨味が広がった。

「うまぁ~! アレックスの料理も捨てたもんじゃないわね。もっとーっ」

「へーへ。」

「あ~ん」

「第二波接近!飛行機」

ガチッーン

ローナは待ちきれずにスプーンにかぶりついてしまった。

「おいおい…汗」

「はぐはぐっ」

「何もわざわざ音出しながら食わんでもいいだろう…」

「アル!もっとーっ」

(しかし、何か親鳥にでもなった気分…)

「はいな、お姫さん、もう一口。」

「あ~ん」

アレックスは半分ヤケになりつつも、仕方がないと思うことにした。

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