第1話 新大陸への旅立ち

冬から春にかけて、新大陸へ向かう準備を進めてきた俺とティーナ。

いよいよ今日から、新たな旅のスタートだ。


“そう言えば、ティーナ。 実家ではず~と姿を見せていたけど、今度の旅の間

は如何するの”


“それは今まで通り、ステルス状態をキープして旅をするわよ”


“まぁ、その方が周りの目を気にしないで、のんびりと旅をする事が出来るか”


“そう言う事よ!”



俺とティーナが会話している場所は、ロシアーノ帝国の港湾都市サンクトにある

外洋航路の客船が接岸している乗船ターミナルだ。


そして何の因果か、俺とティーナが今回乗船する予定の外洋航路の客船は以前

船内を案内して貰ったことのある客船だった。


“ジョン、良かったじゃない。 船内の何処に何がるのか判っているんだから”

“そうだね! そこは安心して船旅を過ごせるね”


ピンポンパンポ~ン


『外洋航路客船:ファイヤーバードのご乗船をお待ちのお客様に申し上げます。

乗船の準備が整いましたので、乗船カウンターまでお越しください。

定刻での出港を予定しておりますので、乗船ターミナル内などにお忘れ物など

無さいません様にお気を付けください。

なお、出港時刻は午後1時です』


乗船手続き開始を知らせる、館内放送が乗船ターミナル内に響き渡る。


“ティーナ、乗船出来るようだよ”

“いよいよね!”


俺とティーナは逸る気持ちを抑えるようにして乗船カウンターへと向かった。



ぼぅ~、ぼぅ~、ぼぅ~~~


汽笛を鳴らして、客船ファイヤーバードは護岸からゆっくりとその船体を離岸

させると外洋に向かって出航した。


俺とティーナは、客室に荷物を置いて船体後部にあるフリーデッキに向かう。

そして、そこから遠くなっていく港湾都市サンクトの街を眺めていた。


“新大陸はどんな所なんだろうね、ティーナ”

“もう、ジョンたら。 気が早いわよ船で一月は掛かるんだから、着いてからの

お楽しみで良いんじゃないの”


“それも、そうだね”


船はユーロスター大陸を左手に見ながら、東へと進路を取って新大陸を目指して

進んで行く。

ユーロスター大陸が見えなくなる前には、船内放送で知らせてくれるようなので、その時にまた俺とティーナでフリーデッキまで来て、ユーロスター大陸の姿を目

に焼き付けておこうと思う。



一月後......。


俺とティーナは、無事に新大陸の西海岸の港湾都市へと上陸を果たした。


一ヶ月の間の船旅は、特に問題もなく過ごせていたので、ここでは割愛させて

頂きます。 by.ジョン...。



午後1時、客船ファイヤーバードから下船した俺とティーナは、客船ターミナル

のデッキに足を運んで接岸している船を眺めていた。


“ティーナ、無事に新大陸に到着したわけだけど、先ずは宿探しからかな”

“それが、先決よね”


“そうだ、初代の魔導師様から引き継いだ地図が使えるかどうか試してみようか”

“そうね、あれが使えればかなり楽になるわね”


俺とティーナが話している引き継いだ地図というのは、クリスタルを特殊加工

して出来たもので、縦20cm・横15cm・厚さ3mmの大きさがあるプレート状の

物となっている。

このクリスタル・プレートの内部に描かれている魔法陣に、魔力を流して魔法

陣を起動すると、このプレートを中心に半径10km位を詳細な地図として映し出

してくれると言う高性能な物となっていた。


結果から言うと、プレートに魔力を流して起動するとあっという間にこの付近の

地図を表示してくれた。


“凄いわね、ここでも宿とか何のお店とかの表示まで記号で表されて出てるわ”

“そうだね、初代様の技術力は今よりも断然高いよね”


地図を使えることが確認出来た俺とティーナは宿を探すためにプレートを片手

に歩き始める。

そして、新大陸へと降り立った客船ターミナルを後にした。

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