12

 

彼女は僕の表情をうかがいつぶやいた。




『日本人はおくゆかしい』



 いや彼女の中の日本文化って・・・



「じゃあ気やすくノジュールって呼ぶのはダメ?」




恐る恐る彼女の顔をうかがうと彼女は笑顔でこたえた。




『うんノジュールがいい』



自己紹介だけでここまで疲れたのは初めてだ。



「ところでノジュールちゃん」



フィナは僕をにらむ。



「いやノジュール・・・ 」



彼女は笑顔でうなづいた。



「話を戻すけどノジュール、

 僕にイルカの泣き真似まね、教えてくれる?」


『うん簡単』



そう言って彼女は口をすぼめ再び鳴いて見せた。



『ピュウ』



僕もそれを真似まねて出してみる。



「ぴゅう」


『ぴゅう違う、ピュウ 』



案外あんがいむずかしい。



「コツってあるの?」


『口を閉じて鼻からゆっくり息を出す。

 ピで上がって、ウで下がる』



僕は再び真似まねて見た。



「ピュウ」



そして彼女を見る。



『うん出来てる』



イルカ達もそれを真似る様に、

「ピュゥピュゥ」と鳴いていた。



「イルカの言葉がわかったら楽しいだろうね」



ふっとそんな言葉をもらしていた。



『わかるよ』



彼女はさも当然の様にそうかえしていた。



「いや僕にはイルカの言葉わからないから・・・」



彼女はふたたびつぶやく。



『わかるよ』



そう言って彼女はおもむろにポッドの中から

何かの機械を取り出した。



ゴーグル型の鉄の機器。


ケーブルの様な物でつながれたそれを僕に差し出す。



『アクアボイジャー』



彼女はそう言ってそれを僕に手渡した。



「アクアボイジャー? て何?」



僕はそれを受け取り彼女の顔をうかがう。



『イルカと会話出来る機械だよ』



さも当然そうに彼女はとんでもない事を

口ばしていていた。


僕がその謎の機械を手に迷っていると、

彼女は再び囁いた。



『イルカと話したくないの?

 そのアクアボイジャーを頭につけて』



 

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