『そう私はあなたのママじゃない。

 宇宙人でもない。

 ただの無力な子供よ 』


それはあなたと同じねと言ってるようで、

僕は益々ますますこの少女に興味きょうみいだくのだった。


いたっい彼女は何者でどこから来たのか?


彼女の瞳は何もかたってはくれなかった。


でもその言葉の中には、

真実が隠されているような感じがした。


彼女は常闇とこやみの水平線を見つめたまま、

まるでひとごとのようにつぶやいた。


『一緒に・・・  』


彼女は途中とちゅうでその言葉を飲み込み、

それ以上は何も言わなかった。


ふと見上げると虚空こくうに広がる満天の星々が、

そんな二人を見下ろしていた。


しおらぎながら、ぎゆく優しき時間。


いつの間にか二人を乗せたポッドは海水におおわれ、

その中で浮かんでいた。


その周りを何かが横切るのが見えた。


青き燐光りんこう残像ざんぞうように海面に輝跡きせききざみ、

その遊泳の跡を残していく。


背びれが二つ、無人島に取り残された小人の周りを獲物えものねらうように回っていた。


「サメ!?」


僕は足をつけたままの無防備な幼女を見て、

咄嗟とっさに彼女を引き上げると、

そこから遠ざかった。


ちがうよ』


腕の中の少女は静かにそうつぶやく。


違うって?


『違う』


そうつぶやき少女は、

おもむろに笛の様な物を取り出すと、

それをくわえ吹く素振りをした。


だがそこからは何の音も聞こえてこない。


聞こえなかったが異変はすぐに起こった。





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