第14話 お母さん

 今日パパが、札幌へ行った。三日後の夜でないと帰ってこない。寂しいな。


 そして次の日、学校から帰ってきて、余りにも寂しくて、近くにいるのに最近ご無沙汰にしているお母さんと話した。道路を渡れば抱き合えるのに、何故か電話になってしまう。


「お母さん元気?」


「私はいつも元気だよ。彩夏こそ元気なの?」


「うん、一寸ね」


「何かあった時はいつでも電話して良いんだよ。今日はどうしたの?」


 お母さんの同居人が、帰ってくる時間までまだ二時間あると言うので、お母さんに来てもらった。そして私は、ゆっくり話始めた。


 彩夏がパパに対して思っている事、彩夏に対してパパの思いの推測を、今までの経緯も交えて話した。そして、経験どころかまだキスもしてない事も言って、密着タイムが今の彩夏の一番の幸せの時間だとも報告した。

 そして今日、たった一日居ないだけでこんなに落ち込むのは、正真正銘の恋に間違いないと確信したとも付け加えた。


 お母さんは、

「そっか、それは間違いなく恋だわ」

「大人になったね、彩夏」

「史絵ちゃんも応援しているのなら、お母さんも応援しなくちゃね」


 と言って、自分の事を話し始めた。


 お母さんの同居人は、以前とは違って、最近勤め始めて真面目にしているとか、お母さんと結婚したがっているとか、その男の誠意が見え始めて来たので、お母さんの方も少し考え始めたとか、でも彩夏が大学を出て社会人になるまでは、前山の性にはならないと考えている事も言っていた。彩夏の学費は心配ないので是非大学に進んで欲しいとも言われた。


 そして、お母さんが色恋で応援出来る事は、ベッドの上での男の取り扱い方を教える事位だけど、今必要なことで無いし、今出来る事は、彩夏の恋が実るまでは、お母さんの家には戻さないで、北島さんの傍に居続けさせる事しかないね。と言っていた。


久しぶりにお母さんの愛情を感じた一日でした。


そして、それから二日が経った。


「ただいまぁ、彩夏、帰って来たよ」


 

玄関から聞こえた声に、嬉し涙が自然と溢れた。





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