第269話 邪神

俺とジャイアントハーフの聖騎士リン、ブラックジャガー獣人のノワの3人は、王城が崩壊した瓦礫の下から現れた。


皇帝を追って王城の地下へ行ったら、皇帝が変な魔物を呼び出して、その魔物の所為で王城が崩落し閉じ込められていたのだが、瓦礫はリンの「聖騎士の守りパラディンガード」で防ぎ、ノアの闇の触手で脱出したのだ。


俺達が地上に現れると魔物が暴れ捲っていたらしく、王城周辺も瓦礫の山と化していた。


しかも、俺の仲間達である剣聖ルイ、コボルトアサシンエンペラーのコウキ、レッドデビルベアエンペラーの袈裟懸けの3人とその魔物が戦っていた。


仲間達3人は劣勢を強いられていたようで、身体のあちこちを負傷していた。


俺達が地上に出た場所は魔物の背後。


さっさと片付けるか。


俺は時を止めて、聖剣をアイテムボックスから展開した。


そして、魔王のブーツで空を走り巨大な魔物の後頭部へ近付くと首をはねた。


魔物の首に一本の赤い線が走り、時を動かせば首が落ちるはず。


と思ったのだが……。


魔物がくるりと顔をこちらに向けた。


斬ったはずの首があっという間に治ってる?


ん? 時は止まってる……よな?


俺の仲間達であるリン、ノア、ルイ、コウキ、袈裟懸けの5人も動いていないし……。


ブオオオオオオ!


魔物の尻尾が俺を襲う。


俺は空を駆けて尻尾を躱す。


魔物は俺を睨み、身体もこちらに向ける。


コイツ、時が止まっていても動けるのか!


やべェぞ。時を止めたまま戦うと、俺の仲間達は躱せないので魔物の攻撃が当たってしまう。


俺は時を動かした。


俺は空中に留まり魔物と睨み合う。


「グオオオオオオオオオオ!!」


魔物が咆哮し息を吸い込み始めた。


「瘴気のブレスが来るワン! 逃げてワン!」

コウキの言葉に俺はリンの側へ戻る。


リンは「聖騎士の守りパラディンガード」を発動し防御の姿勢をとっていた。


魔物の瘴気の息は俺達に直撃したが、リンの「聖騎士の守りパラディンガード」を破る事は出来ない。


しかし俺達の周りの瓦礫が瘴気により溶けだした。


「クッ、何だこのブレスは!」


俺は神眼で魔物を鑑定した。


魔物の核は悪魔と同様に魔物の身体中を動いていた。


「アイツは悪魔か? アイツは悪魔と同じで核が身体の中を動き回っているぞ」


「悪魔ではないですぞ。邪神ですな」

俺の後ろから聞き覚えのある声が聞こえたので振り向くと、青白い馬に乗った屈強な男が立っていた。


蛇の尻尾を持つ長い髪の無表情の顔。魔王ソロモンが召喚する72柱の悪魔の1柱であるバティンだ。


「邪神!!! ……バティン! なぜここにいる?」


「帝国の王都に濃厚な魔力の塊が現れたので、ソロモン様から様子を見てくるように仰せつかったのです」

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