第263話 ひょっとこ剣士再び

剣聖ルイはひょっとこの面を着けると、レッドデビルベアエンペラーの袈裟懸けは鬼の面を着け、コボルトアサシンエンペラーのコウキは狐の面を着けた。


ルイはヤエチゴ商会の馬車に向かって走り出す。


ヤエチゴ商会の護衛達が民衆を襲い始めたところに、袈裟懸けは黙って腕を軽く振る。


「袈裟懸けの『飛空爪』は久しぶりに見たワン。先に行ってるワン」

コウキはそう言うと影に沈んでいく。


袈裟懸けの『飛空爪』は民衆を斬り伏せようとした護衛の首を切断した。


「な、なんだああああああ!」

護衛達は首が落ちた仲間を見て驚く。


「待てえええええええええ!!!」

民衆を飛び越えヤエチゴ商会の馬車の前に飛び降りたルイ。


護衛達と民衆の間に割り込み剣を構える。


「あれは誰だ」

「誰だ」

「誰だ」

「誰だー!」

「なんだァ? てめェ……」

護衛達はひょっとこの面を着けたルイに注目していた。


「人の世の生き血を啜り、不埒な悪行三昧、醜い浮世の鬼を、退治て─」


「ひょっとこ剣士だ!」


「はぅ……」

(折角、タクミ様に教えていただいた決め台詞を言おうとしたのにぃ~)


「あいつはロイケブクで我々の邪魔をしたひょっとこ剣士です」

護衛隊長がヤエチゴに説明していた。


「ほう、例のひょっとこ剣士か。いひひ、良いところで出会ったぞ。此処で会ったが百年目! ボンザーさん、リアドドさん、やっておしまいなさい。いひひ」


「「へい! アラホラサッサー!」」

「ポチッとな」

ボンザーと呼ばれた護衛が手元のスイッチを押すと……。


ズゴゴゴゴ!!


地面から巨大なゴーレムが現れた。


呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン!


「シェー!」

「うあああああ!」

「なんだありゃあ!」

「ヤバいんじゃね」

「逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ、逃げちゃ駄目だ……」

慌てふためく民衆達。


「騒ぐな神経が苛立つ!……ワン」

影から現れたコウキ。


「え! 陰茎がぁ?」

民衆の一人が叫ぶ。


「何で陰茎が苛立つねん。ワン」

コウキはゴーレムに飛び掛かると、右のパンチ、一撃でゴーレムの頭を叩き壊した。


ドガン!!


「「へっ? 一撃!!!」」

「なん……だと……?」

「嘘……だろ……?」

目が飛び出る程驚くボンザーとリアドド。


「わい、ずらかりまっせー」

リアドドは馬車を飛び降りて……。


「アラサッサ」

「ホラサッサ」

ボンザーとリアドドは逃げ出した。


「このスカポンタン!」

ヤエチゴがボンザーとリアドドを睨む。


「モンゴエ! やっておしまい」

ヤエチゴが護衛隊長に命じる。


ヒユッ!


瞬時に飛び出す影。


モンゴエがボンザーとリアドドを抜き去ると、ボンザーとリアドドの首が落ちた。


「また、つまらぬ物を切ってしまった……」


そこに民衆を掻き分け袈裟懸けも現れて、袈裟懸け、コウキ、ルイ、3人の無双タイムが始まった。


ヤエチゴ商会の護衛達は、帝国各地から金にものを言わせてスカウトした手練れの者達。


帝国騎士の精鋭とも同数であれば勝るとも劣らない実力があるのだが、以前のルイならともかく、コウキと袈裟懸けとルイの敵ではなかった。


「ヤエチゴ! ロイケブクではマサイタ王国出身の者達に酷い事をしてくれたな!」

ルイはヤエチゴに詰め寄る。


「バレなきゃ犯罪じゃないんですよ。いひひ」


「駆逐してやる……!」


「モンゴエ! やっておしまい」


モンゴエとルイの高速戦闘が始まった。剣と刀が空を斬り、目にも留まらぬ斬撃を躱しながら戦う。


「ルイ、手助けは必要か?ワン」

信じられない事にコウキがルイの後ろに余裕でついて、会話を始めた。


「嘘……だろ……? あのスピードに余裕でついて来るなんて……」

モンゴエが動きを止めて立ち尽くす。


「何黙って見てたのよ」


「いや、自分で倒したいのかと思ったワン」


「な訳ないでしょ! 私が倒したいのはヤエチゴだ」


「分かったワン」

コウキが影に沈む。


コウキを探して、キョロキョロ辺りを見回すモンゴエ。


「お前はもう死んでいる」

モンゴエの背後に血塗れのナイフを持つコウキが現れた。


「ウボァー」

崩れ落ちるモンゴエ。


「なんてこった! モンゴエが負けるとは……」

後退るヤエチゴ。


ズシャッ!

「ひでぶっ──」


「成敗!」

ルイがヤエチゴを両断した。


── これでいいのだ。


こんな落ちでいいのか?


無理矢理感の台詞が多かったですが、ご容赦を……。

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