第251話 帝国の勇者ハヤテ4

勇者ハヤテとそのパーティーは魔王国に侵入していた。


常闇のボークの索敵の技術は優秀だ。敵に見つからないように敵がいないところを、闇に紛れてゆっくりと進む。


「ボーク、ちょっと待て」

先を進む常闇のボークに声を掛ける勇者ハヤテ。


「はい?」

立ち止まり振り向くボーク。


「ん~、そろそろ食事の時間だな」

勇者ハヤテは懐中時計を見た。


「ほらね、やっぱり12時だ。どおりでお腹が空いたと思ったんだ」


「そうね。今日のメニューは何かしら?」

と同行している第三王女ミフジ。


「じゃあ、転移で戻ろうか……」


「転移!」


オトキ帝国の王城に転移する勇者ハヤテのご一行。


王城で食事を済ませるとまた転移で魔王国に飛ぶ。


そして、また魔王国をゆっくりと進む。


夕方の6時になると……。


「さて、今日の活動はこれぐらいで終わるか」

勇者ハヤテのご一行は転移で王城に戻り、進捗報告後に夕飯を食べて、お風呂に入り、寛いで……、寝る。


翌朝……。


「ああああああああ!! こんな進み方ではいつまでも魔王城に着かないぞ!!!」


起床後、皇帝の呼び出しを受けた勇者ハヤテご一行。


「しかし、労働時間は1日8時間と──」


「黙れえええええええええ!!!」


ハヤテの言葉に怒り捲る皇帝。


「食事に睡眠に、いちいち帰って来るなあああああ!!!」


「しかし、美味しい食事と充分な睡眠を取らないといざと言う時に──」


「口答えするなああああああ!!! お前らは今どんな状況か分かってんのかあああ!」


「は、はあ……」


「ギミヤ王国で帝国同盟軍は魔王軍に敗退し、魔王軍はマフクシ王国に侵攻しようとしている。こんな状況でゆっくりする余裕はない! お前らが魔王を倒さないと帝国はなくなるのだぞ! いいかあ! 魔王を倒すまで帰って来るな! 今直ぐ魔王国に行けえええ!」


手元にあったペーパーウェイトをハヤテに投げつける皇帝。


バシッ!


流石にハヤテには当たらない。右手でペーパーウェイトを掴む。


「くっ……。ミフジィイイイイ!!! さっさと行けえええ!!!」


怒り心頭の皇帝。


「は、はひぃいいい」

第三王女ミフジは皇帝の剣幕に震え上がる。


「食事も寝るのも現地でやれええええ! 直ぐに魔王の玉を取って来いやあああ!!」


「は、はひぃ!! ハヤテ行くわよ」


「えええええええええ!!! ブラックじゃないすか!」


「良いから、早く!!!」

ミフジの剣幕に諦めのハヤテ。


「はぁ、……転移!」


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「はぁ、腹減ったぁ……、朝食をたべてないんだよなあ。食料も持たないで敵国に来るなんて、最低だよぉ」


魔王国でお腹を押さえてとぼとぼ歩くハヤテ。


「ふう、そうよね……」

ミフジもしょんぼり歩く。


「コンビニのおにぎりでも食いたい……」

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