第213話 大都市ロイケブク2

ロイケブクの検問は冒険者証を提示して通り過ぎる事が出来た。


剣聖ルイ改め従者オカメは、従者と言って冒険者証を出さないし、お面を着けて外さないので、ちょっと不審がられたが、取り敢えずは問題は無かった。冒険者は越境フリーで歓迎されているらしいのだ。


「先ずは宿泊先だな」


「良いホテルがありますよ。一度泊まって見たかったのです」


オカメにお任せしたら、インサンシャ16の近くにあるスプリンホテルに案内された。


「え? スプリンホテルがぁ……、な、無い……」


絶句のオカメ。案内されたのは、ホテル跡地だった。もうねぇ、なーんにも無い、更地でした。


ブセイ商会で経営している高級ホテルなのだが……。


やむを得ず、駅に隣接している高級ホテルであるタンメト・ロポリに宿泊する事になった。


タンメト・ロポリも紛うことなく高級ホテルだ。スプリンホテルに勝るとも劣らないらしい。


ホテルのロビーでソファーに座って、オカメがチェックインするのを待っている間。


「ノワ、ロブクにおけるマサイタ国民の現状調査をお願いするよ」


「了解でーす」


ノワはシュッと消えて調査向かう。


その後、チェックインを終えたオカメと合流し、冒険者ギルドに向かう事にした。


ギルドに行く途中で……。


「ええええええ!」


驚くオカメ。


「ブセイ商会が無い!」


ブセイ商会があった場所も更地になっていた。


大商会らしいのだが……、何でだろう、何でだろう、何でだ、何でだろう♪


更地には立て札立ててあって『ヤエチゴ商会所有地』と書いてあった。


「ヤエチゴ商会って知ってる?」


俺は、オカメに尋ねる。


「王都ダチヨにある大商会ですね。ロイケブクには無かったはずです……」


ダチョウ? ……ダチヨか。言い難いねぇ。


「ふーん、なんだか怪しいねぇ」


「しかし、ブセイ商会程の大商会が無くなるなんて、今だに信じられません。ブセイ商会がマサイタ国民に愛される店だったのに……」


「ふーん」


「あああああ、マサイタのうどん屋さんもなくなってるぅぅぅぅ……」


うちひしがれて、跪き頭を垂れるオカメ。


その時。


「おい、お前らぁ! もしかしたらマサイタ国民じゃねえのかぁ? あ"ぁ?」


チンピラ風の男が顔を傾けて、俺を下から睨んだ。


「ん? マサイタ国民じゃねえよ。冒険者だ。」


俺は冒険者証を男の目の前に出した。


冒険者には国籍がない。根なし草的な職業であると同時に何処にも属していないので、何処にでもいける。


「ふん、怪しいが冒険者証があるから無国籍か。気を付けな、マサイタ国民は捕まるからよ。紛らわしい真似はしない方がいいぜ」


「忠告有り難う」


男は背を向けて去って行った。


「おい、オカメ、立ち上がれ! さっさと行くぞ!」


「はい……」


オカメは『はっ!』と何か思い出した様に、コンビニ風の小売店トファミ・リーマーに駆け込んだ……。


そして、項垂れて戻って来た。


「やっぱり……。マサイタ国民の心の友でもあるギョウアカ・ギニュウ商会のリガリガくんアイスも売ってなかった……」

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