第212話 大都市ロイケブク
オトキ帝国マトシ領の大都市ロイケブクは、オトキ帝国有数の都市だけあって、遠くからも高層ビルが見える大都会の様だ。
剣聖ルイ改めて従者オカメの話によると、ロイケブクは通称『ロブク』と呼ばれ、インサンシャ16という名の16階建ての高層ビルを中心に、大規模な繁華街を擁し、ブセイ商会、コパル商会、ブトウ商会、ネルミ商会などの大商会が出店する傍ら、腐女子の聖地である『乙女の道』などもある、マサイタ国民憧れの大都会らしい。
俺達がロイケブクに近付くと長い列が出来ていた、どうやら入口で検問をしている様だ。
「何だろうね?」
俺が従者オカメに聞く。
「はぁ、何でしょう? ロイケブクは入市フリーのはずですが……」
おかめの面で顔は見えないが、従者オカメは明らかにやる気がない雰囲気をダダ漏れにして、歩いている。
確かにおかめの面を着けろと言われても、俺は着けたく無いなぁ。
俺達はロイケブクに入る行列の最後尾に並んだ。
すると後ろから列に並ぼうとした数人の人達が、いきなり挙動不審になっていた。
「どうする?」
「ヤバいかなぁ?」
「ヤバいよヤバいよ」
「くっ、逃げるか!」
「逃げましょう」
後ろに並んだ人達はヒソヒソ話をしていたが、急に逃げ出した。
逃げた人達を検問していた衛兵が見つける。
「何だ!」
「逃げたぞ!」
「追えぇ!」
衛兵が魔道バイクに乗り、あっと言う間に後ろにいた人々に追いつき、後ろから槍の石突きで突き倒すと、魔道バイクから降りて拘束した。
「お前等、マサイタ国民だな!」
「離してくれぇ」
「マサイタ国民の密入国は重罪だ、こっちに来い!」
「助けてくれ、『いけふくろう』で俺を待ってる人がいるんだぁ」
「『乙女の道』に行きたかっただけなのよぉ」
「ロブクは俺達の……」
両手を拘束されて、連行されるマサイタ国民達。
列に並んでた人達がその光景を見て、ヒソヒソ小声で話しだした。
「やーねぇ、田舎者のマサイタ国民が紛れてたわよ」
「まだロブクに紛れてるのかしら」
「たまにいるのよねぇ」
「隠れマサイタもいるしねぇ」
「あの人達の所為で、こんなに検問で時間が掛かるのを自覚してるのかしら」
「迷惑よねぇ」
「迷惑よぉ。マサイタに引っ込んでて欲しいわぁ」
これって相当ヤバい事になってるなぁ。
マサイタ国民が衛兵達に連行されているのを横目に、俺達は検問に進む。
「マサイタ国民と言うだけで捕まえるとは……」
従者オカメは肩を震わし拳を握り締めて、怒りを堪えていた。
別に差別じゃねぇよな。国交断絶中の密入国なんだから、スパイ容疑もあるし捕まったら重罪は仕方ないだろう。
「自重しろよ」
俺はオカメの肩に手を置き注意する。
「は、はい……、しかし……」
「タクミ様から自重って言葉が出るなんて、ビックリだわー」
小声で呟くブラックジャガー獣人ノワに。
「おい! ノワ、聞こえてるぞ」
「すいませーん」
てへぺろのノワ。
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