第177話 会話
2本足で立ち上がった身長5mの巨大な熊のモンスター、レッドデビルベアの特殊個体『袈裟懸け』は、巨大な赤茶色の壁として、冒険者達の前に立ち塞がり見下ろす。
「クアアアアアアア!」
甲高い鳴き声が響き、前足の爪が冒険者ノハダを襲う。ノハダは大剣を構えたまま飛び退き爪を躱す。
ノハダ仲間カヨコスは盾を持って、袈裟懸けに体当たりした。
袈裟懸けはカヨコスのシールドバッシュにもびくともしない。それどころか、前足の爪をカヨコスに突き刺す。
カヨコスは盾で袈裟懸けの爪を受け流そうとしたが、袈裟懸けの爪はカヨコスの盾ごとカヨコスを貫いていた。
ズゴッ!
「ぐふっ」
倒れるカヨコス。
「カヨコスぅううううう!」
叫ぶノハダ。
「クアアアアアア!」
響き渡る袈裟懸けの声。
「私の獲物だぁ!」
剣聖ルイが飛び込み上段から剣を振り下ろした。
袈裟懸けは素速い動きでルイの振り下ろしを避けた。
避けた?
ノハダ達と戦ってた時は、全く避ける素振りも無く、攻撃をされるがままでカウンターで攻撃していた様だし、あんなに素速く動いて無かったぞ。
遊んでいたのか、それとも……?
4つ足で身構える袈裟懸け、ルイも必中と思っての振り落としを躱されて警戒している。
声を出したらバレバレだけどねー。
ノハダは仲間達の遺体を気にしながら大剣を構えた。しかし、袈裟懸けの雰囲気が変わった事を気付いていない。
目つきが鋭く低く唸る袈裟懸け。
四つ足を地につけて、膝を曲げてゆっくり横に動く。本気を出してルイの隙を窺っている。
ルイを警戒している袈裟懸けを見て、ノハダは踏み込み渾身の力で、剣を振り落とした。
「たああああああ」
あっ、不味いぞ。袈裟懸けの本気度がさっきとは全然違うのに気付かないのか?
「クアッ!」
ドカッ!!
袈裟懸けはノハダには目もくれず、ルイを注視したまま、前足を横に払いノハダを叩き飛ばした。
ノハダの首が折れ曲がって、大木に直撃した後、バウンドして転がった。
ああ、ノハダは袈裟懸けを倒せるレベルでは無かったな。共闘してやればよかったか? ちょっと後悔するな。
しかし、こうして見ると袈裟懸けは、Aランクの冒険者が倒せるレベルでは無さそうだ。
Sランク案件かもな?
猫を被ってたのか、猫を被るって言う表現はおかしいか? 何らかの意図があって実力を下に見せてた様だ。
ルイも袈裟懸けの実力を感じて、直ぐには手が出せなそうだ。
ルイには悪いが、しょうがないだろう。
俺も行くか。
俺が前に出ると、ジャイアントハーフの聖騎士リンと、ゴブリンキングのゴブマルも俺の後についてきた。
俺達が戦線に加わろうとしたら、袈裟懸けは逃げる素振りをする。明らかに俺達の実力が分かってる様だ。
袈裟懸けって頭が良さそうだなぁ……。
「俺はタクミだ。人間の冒険者を殺しているお前を討伐しに来た。言い分はあるか?」
「クア?」
袈裟懸けは怪訝な表情で俺を見た。
「急にどうしたんですか?」
ルイは袈裟懸けを見ながら俺に問い掛ける。
「いや、袈裟懸けに話が通じるなら、納得の上戦いたい。袈裟懸けにも言い分があるかも知れないだろう。」
「熊のモンスターですよ。」
「俺は種族で差別はしない主義なんだ。話が通じるなら、まず会話をする。袈裟懸けは頭が良さそうだぞ」
「クア、クアアア、クアクア」
袈裟懸けは俺の話が理解出来るのか、何やら話始めた様だ。
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