第174話 森の状況
「依頼を受注する時に聞いたのだが、どうもここのギルドの討伐依頼が、極端に減っている様だ」
受付で受注を終え、戻って来た剣聖ルイが話し始めた。
「そう言えばCランク以下の依頼が、極端に少なかったなぁ。受注されたので無かったのではないのか?」
俺はギルドの依頼票が貼ってある掲示板を見た時の事を思い出す。
「そうなんです。だから私達もこんな時間に、ここで油を売ってる次第です」
『森の狩人』のリーダーキオーツも同意する。
「なんかヤバい事が起きてるのか? また悪魔関連とか?」
なんか嫌な予感がしないでもないぞ。
「いえいえ、全くそんな事はありません」
剣聖ルイは俺の後ろにいるゴブリンキングのゴブマルを見た。
何でも無かったみたい。
ゴブマルは無言で跪いている。
「ゴブリンの部隊が駐留してますよね」
剣聖ルイは俺に視線を戻す。
「ん? ああ、成る程。ゴブリン達が近隣の森のモンスターを討伐してるのかぁ!」
「そうなんです」
剣聖ルイはまたゴブマルを見た。
「それは、そうですな。拙者達も食べなければ、生きていけぬので……」
「え!! もしかして……、まさかゴブリン?」
『森の狩人』のシャマナが驚きゴブマルを見た。
「しぃー。内緒だよ」
俺は人差し指を口に当てる。
「あ、すいません」
周りを見て口を押さえるシャマナ。周りにいる冒険者達はこちらの事は気にしていない様だ。
「私がゴブリン達と移動中も、次々と仲間に加わるゴブリンやコボルト、オーク、オーガと言った亜人種がいたのですが、今でも続いているのでしょう」
「拙者達とサトウ国の噂を聞いて、近隣や遠方からも、森の亜人種が集まってくるでござる」
「人族に住み家を追われたり、同胞が襲撃されたりしていたからだろうね」
「現在この都市のギルドでは、ゴブリンやコボルト、オーク、オーガの討伐依頼は無くなりました」
「ああ、ラナが気を利かせたんだろう。冒険者とゴブリン達が争うと問題になるからね」
「森の中で亜人種と出会うので、森にも行き辛くなってますし、依頼が少なくなって、稼げなくなった冒険者が都市を出た為、冒険者の数は少なくなりました。私達も採取の依頼で何とか日々生活していますが、先が見えないので、都市を出る事を考えています」
キオーツが会話に入ってきた。
「そうかぁ。サトウ国に来るか? 歓迎するぞ」
「え! サトウ国? タクミ様はサトウ国の関係者なのですね。良いのですか?」
「良いとも、全く問題は無い。ダンジョンもあるから、それなりに仕事はあるはずだ。しかし亜人種や獣人と仲良く出来る事が前提だな」
「ありがとうございます。後程、メンバーと相談してから、決めたいと思います」
「まあ、無理はしないようにな。ところでルイ、討伐はBランク以上で森の奥にいる強力なモンスターになると思うが、ゴブマルと擦り合わせしたほうが良いかもな」
「そうですね。既にゴブリン達が討伐している可能性がありますよね。どうゴブマルさん、既に討伐したモンスターはこの中にいる?」
ルイは依頼票をゴブマルに渡す。
ゴブマルは立ち上がりルイから依頼票を受け取り確認すると、
「これとこれは退治したでござる。素材はまだ駐留地にあるはずでござる」
「あちゃー、残念。早めに行かないと、他のモンスターも退治されちゃうわね、急ぎましょう」
「そうだな」
ルイの言葉に俺達は立ち上がり、『森の狩人』に別れを告げて、森の討伐に行く。
悶絶して気絶している『黒の衝撃』の4人は床で倒れたまま……。
ギルド職員や他の冒険者は、俺達に近付かない様にしていたらしく、俺達が冒険者ギルドか出る時に、『黒の衝撃』の元に駆け寄っていた。
ジャイアントハーフの聖騎士リンが、『黒の衝撃』を回復する訳ないので、ナニは潰れたまま治らないだろうね。
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