第164話 悪魔討伐依頼

街の高級レストランの個室にて、ラナの使いの者と向かい合う俺達。俺とブラックジャガー獣人のノワ、ジャイアントハーフの聖騎士リン、剣聖ルイ。


「私はラナ様の使用人で名前はミアタと申します」

「同じくズイです」

「同じくジフです」


3人の女性から挨拶された。


「早速だが、どんな用事だ」


女性の内リーダー格であろうミアタが、口を開く。


「マヒロシ王国がミーズ村に現れた悪魔の討伐に失敗して、危機に陥っております。どうか助力いただきたくお願い致します」


「助力って、討伐してくれって事か?」


「は、はい……」


「何で貴方達が来た?」


ラナとか、それなりの地位の貴族じゃなくて、使用人の女性がお願いに来たって言うのが解せないなぁ。


女性3人は椅子から立ち上がると、徐に土下座した。


「どうかお願い致します」


「ふぅん、そう言う事か」

俺は土下座した女性達を訝しげに見る。


「ど、どういう事?……ですか」

剣聖ルイが俺を上目遣いで見る。


「まあ、俺を甘く見てるって事だろうね。レク王子のお願いを聞いた背景を知ってるんだろう。土下座して必死にお願いすれば、聞いてくれる可能性があると判断したが、俺に土下座してまでお願いする貴族は近くにいないので、替わりに女性に来させたんだろうね。女性が土下座でお願いすれば何とか出来ると思ったんだろう」


「卑劣ですね」


「そうだな」


「そんな事を言わずに、どうか、マヒロシ王国をお救いください」

相変わらず土下座したまま頭を下げる女性達。


「ラナが直接来ればいいのに、使用人に来させるとはなぁ。ラナは俺にすがって土下座したくなかったんだろうね」


「ですよねぇ」

ルイは同意するが、ノワとリンは他人事の様に出された料理を黙々と食べている。


「で、報酬の話を一切しないが、まさか報酬無しで討伐依頼をしようと思って無いよね? マヒロシ王国が悪魔に滅ぼされた後、悪魔を倒すって言う手もあるんだけど、マヒロシ王国は悪魔討伐の報酬に何を用意してるのかな?」


「そ、それは……」


「ちょっと意地悪だったか? 王国そのもの以上の報酬なんて、用意出来ないだろうからね」


「サトウ国に接するダフジエ公爵領を報酬と致します」


「ふむ、そこまで追い込まれているのか。領地を他国に渡そうとするとはな」


「何卒、ご助力をお願い申し上げます。」


「ノワ、状況を教えてくれ」


「はーい。サトウ国と戦争するために集合した軍隊を、悪魔が魅了し手に入れましたー。その軍隊が王都を占領中、王家の者はツハママ領に避難しておりまーす」


「なんだ、既に王都は落ちてるのか。ダフジエ公爵領を報酬にしたって事は、軍隊の中核がダフジエ公爵軍なのかな?」


「はーい。その通りでーす」


「ははは、報酬で貰わなくても、サトウ国から攻めれば直ぐ奪えるんじゃないか。俺を馬鹿にしてるのか? まあ、とは言っても情けぐらいはあるからな、マヒロシ王国がサトウ国の属国になるなら助けてやろう」


「私達では判断できません。ですが一刻を争う状況故、どうか御慈悲を……」

土下座で何度もお願いする女性達。


「ったく! 一刻を争うなら、交渉権が無い奴を寄越すなよ、知らんぞ」

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