第145話 副ギルド長ノナカ

常設依頼と思われる薬草を採取して、冒険者ギルドに戻った俺達。


夕方のギルドはそれなりに冒険者が受付並んでいた。


Cランク以上の冒険者はマイーヤ村に行ってるはずなので、Dランク以下の冒険者達だろう。


ギルドの中に入ると俺達の姿を見て、飛んできたカスザさん。


「タクミ様、先程はすいませんでした。ギルド長がお待ちしていますので、こちらにどうぞ」


血の気が引いた顔で震えながら案内しようとするカスザさん。


「あ、ちょっと待って。常設依頼と思われる薬草を採取したので、先に受付してくれるかな」


俺はカスザさんの誘いを断って、列の最後尾に並ぼうとした。


「それでは採取の受付を最優先で行いますので、こちらにどうぞ」


カスザさんは列の先頭に俺達を案内し、受付を開始した。


列に並んでいた冒険者達から不平不満の言葉がとんできた。


「おいおい、カスザさん!何で列を抜かすんだよ」

「俺達並んでるんだけどぉ」

「お前等、横入りすんなよぉ!」


カスザさんは、今にも泣き出しそうな顔で冒険者達を睨む。


普段の優しい顔から一変した、カスザさんの剣幕に冒険者達は黙り込んだ。


俺達は受付のカウンターに採取した薬草と冒険者証を置いた。


「え? こんなに沢山!」


俺がアイテムボックスから出した薬草の数に、ギルド内も騒然とした。


その声を聞いて受付の奥から出て来た、眼帯をした丸坊主で髭面の男。


「何事だ!騒がしいぞ!」


「あぁ、副ギルド長!この方がタクミ様です」

カスザさんが俺達を副ギルド長に紹介する。


「おう、俺は副ギルド長のノナカだ。あんたが特級アンタッチャブルのタクミさんかい?」


「そうです。俺がタクミです」


「ふ~ん。あんたがねぇ・・・」

ノナカは俺の頭の天辺から足の爪先まで、見上げて見下ろす。


「あ、これが報酬です」

カスザさんが素速く計算したのか、報酬を布袋に入れて俺に渡す。


俺は中身を確認せず布袋をアイテムボックスに入れた。


「ちょいと付き合ってくれ」

ノナカが顎で俺に合図する。


「む、失礼な!」

ジャイアントハーフの聖騎士リンが剣に手を添えるが、俺はリンを制した。


「リン、止めとけ」

「しかし・・・」


俺はノナカの後に続くと、ギルド裏の訓練場に連れていかれた。


「なんだなんだ!」

とギルドにいた冒険者達が野次馬なって付いてくる。


ギルドの訓練場で副ギルド長のノナカと向かい合う。


いつの間にか、周りを冒険者達が囲んでいた。


「こんなところに連れて来てどんな用ですか?」

と俺はノナカに尋ねる。


「特級アンタッチャブルの実力をちょいと見せてくれ」


はぁ、俺の体格や服装を見て、侮ってるんだろうなぁ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る