第146話 ギルド長マチク

リシオジの冒険者ギルド。その訓練場で俺と副ギルド長のノナカは向かい合っている。


周りを遠巻きに囲む野次馬の冒険者達。


「おいおい、あの余所者とノナカさんが、試合をするみたいだ」

「はぁ、あの防具も着けてないチビで痩せっぽちか?」

「勝負になんねえだろう」

「ノナカさんってつい最近現役を引退したばかりだぞ」

「Aランク冒険者だったよな」

「そうそう、強剣のノナカって言ったら衛兵だって手出ししないよな」

「うはぁ、あいつ馬鹿だな」

「何やったんだ?」


野次馬の声を聞こえない振りをして、ノナカは俺を見下ろす。


ノナカは身長190cmはありそうだ。


「特級アンタッチャブルの実力をちょいと見せてくれ」

ノナカが俺にそう言った。


「具体的にどう言う事ですか?」

俺が尋ねると。


「俺と試合をしてくれれば良い。緊急通知だけでは、納得出来んのだ」

木剣を2本持ち出し1本俺に手渡そうとする。


「ふ~ん。条件がある、俺が止めと言うまで勝負は終わらない。殺さないでやる。それでいいか?」


俺は木剣の受け取りを拒否して、魔王の手甲をノナカに見せた。


「素手でやるのか? おかしな条件だが良いだろう」


「素手で充分だ。いつ開始する? 魔法も使って良いし、真剣でも良いぞ」


俺が言うと、ノナカは一瞬怪訝な顔をした。


「殺さない条件だろ、木剣で充分だ。何時でも良いぞ」


副ギルド長が距離を取るため、俺を見たまま後ろに下がろうとした。


舐めてんのか? この禿げオヤジは。


俺は時を止めて、ノナカをぶん殴った。腰を入れたフックを上顎辺りにぶち込む。吹っ飛ぶノナカ。俺は倒れたノナカに馬乗りになり、時を動かす。


そして「信じられない」って顔をしてる、ノナカの顔を殴る。


ドカッ!

「ぐはっ」


ノナカは目を見開き俺を見るが、顎の痛さに思わず両手を上げてガードしようとする。


顎の骨は複雑骨折で当分食事は流動食だな。と思いながらガードした右腕を殴る。


バキッ!


「あつっ」


折れて変な角度に曲がるノナカの右腕。


「なんだなんだ!」

「いつの間にか、ノナカさんが倒れてるぞ!」


バキンッ!


「イタイイタイ」

顔をカバーしようとした左腕も変な角度に折れ曲がった。


「待て!」


訓練場の入口から声が掛かった。


俺は無視してノナカを殴る。

目をつぶり堪えられない痛みを堪えようとするノナカ。

「ひぃ」


「ちょっと待て!」

更に大きな声を出して近付く男。


無視して殴り続ける俺。

痛さから気絶も出来ないノナカ。

「ひぃ。た、たふへて」


「待てって言ったら待て!もう止めろ!充分だ!」

男は俺の側で大声で叫ぶ。


無視して殴り続ける俺。

泣き声のノナカ

「ひゃめてくらはい・・・」


「止めてくれ、お前の実力は分かった。止めてくれええええ」

懇願する男。


無視して殴り続ける俺。


泣きながら謝るノナカ。

「ほめんなはい、いはい、いはい。ほめんなはい、ひぃ」


「俺はギルド長のマチクだ。もう止めてくれ」

俺の肩を掴むマチク。


「次はお前か?」

俺は振り返りざまマチクもぶん殴る。

殴り飛ばされ転がるマチク。

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