第92話 マッドバイソン

「じゃあね。」

俺達は剣聖ルイと別れた。


ルイは何とか頼み込んで、商人の馬車に縛られた『至高の剣』の冒険者達を乗せて、町に向かう。


「近くの草原に狂野牛マッドバイソンって言う、美味しいモンスターがいるんだってー。」


ブラックジャガー獣人のノワが、ルイに聞いたらしい。


「寄り道して狩って行きたいなー。」


「良いねぇ。狩って行こう。」


「やったー。」


俺達は、マッドバイソンがいる草原に寄ってから町に向かう事にした。


ジャイアントハーフの聖騎士リンが御者になり地竜の馬車で進むと。


「マッドバイソンの群れがいました。」


リンの言葉に馬車の前の窓から外を見ると、遠目にマッドバイソンの群れが見えた。


「お!いるねぇ。」


100頭はいそうだ。


川で水を飲んでいるマッドバイソンの群れ。


マッドバイソンは茶系の体毛だが、頭と肩と前肢が長く縮れた黒い体毛があり、体長は5m程度か、体高は2.5m。頭に一対の角がある。


体高がリンの身長を超えているらしい。

相当大きいなぁ。


遠目に見てるので、実感は無いが、近くで対峙したら、迫力があって怖いだろうなぁ。


「美味そー。食べ応えありそー。じゅるっ。」

ノワは涎を拭う。


そっちかよぉ。怖いより食欲の方が強いんだな。


「群れ全体を相手にするのは危ないので、群れから離れた個体を狙うそうですよ。」

リンが説明する。


「離れるまで待つのかい?」


「そう聞いています。1日後を付けて1頭狩れるかどうからしいです。」


「面倒だね。」


「群れから離れた個体が幼体の場合は、狩らない方が良いみたいです。」


「え?子牛って美味しいんでしょー。勿体ないよー。」


「子牛を狩ると群れ全体で狂った様に襲ってくるそうです。」


「そっかぁ。多産じゃ無いモンスターは、幼体を大事にするんだよね。それでマッドバイソンなのかもな。」


「そう言われてますね。」


「群れ全体を狩ったらダメかな?絶滅したりしないかねぇ。」


「どうでしょう?群れは一つでは無いと思いますが・・・。」


「んじゃ、半分ぐらいにしておくか。」


「は?範囲魔法で殺すと、素材や食材として利用出来なくなりますよ。1頭づつ剣で斬り殺さないといけないので、1頭づつ離れた個体を狙うと時間が掛かりますが・・・。」


「地竜だって突き飛ばされるかもねー。」


「大丈夫、大丈夫。」


俺は時を止めた。


魔王のブーツで宙を駆けて、マッドバイソンの群れに駆け寄る。


地面は凸凹や泥濘もあるので、宙を最短距離で走った方が圧倒的に速いんだよね。


アイテムボックスから聖剣を出す。


マッドバイソンの群れの端から、1頭づつ首を斬り落とし、アイテムボックスに収納していく。


「・・・48、・・・49、これで最後だ。・・・50っと。」


50頭狩ってアイテムボックスに収納すると、また宙を駆けて元に戻る。


聖剣をアイテムボックスに収納して、時を動かす。


「え?半分消えたあああ!」

「ほんとだー!」


「狩ってきたよ。子牛もゲットだ。」


「流石タクミ様ですー。」

「もう規格外過ぎて、呆れるばかりです。」


「今日の夕飯はマッドバイソンのステーキにしましょー。」


喜ぶノワと呆れるリンであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る