第72話 レク王子の訪問

リトットのダンジョンを攻略した俺達は、宿に戻った。


暫くダンジョンで野営だったので、お風呂に入りふかふかのベッドでぐっすり眠った。


翌朝、朝食を食べていると、宿屋の人が近付いて来た。


「タクミ様、お客様が見えていますが、如何致しますか。」


「誰だい?」


「レク王子で御座います。」


「レクかぁ。何処か部屋を借りられるかい?」


「可能で御座います。応接の部屋で宜しいでしょうか。」


「うん。そこにレクを案内してくれ、飯を食ったら行く。」


「え?王子をお待たせするのですか?」


「そうだよ。」


「そ、そうですか・・・。承知しました。」


ーーーーーーーーーーーーーーーーー


朝食後、俺はレク王子が待つ宿屋の応接室へ右手をあげて入った。


「よう、待たせたな?」


ソファーに座っていたレクが立ち上がる。

「兄貴、すいませんでした!」


「兄貴?俺はレクの兄ではないぞ。」


「いやいや、それはそうですが、尊敬の呼称と言いますか、そう呼ばせて下さい。」


「なんか、やだなぁ。」


「あはは、それはそれとして、ダンジョン帰りで直ぐにお呼び立てして、すいませんでした。兄貴が怒っていると聞いたので、お詫びに来ました。」


「普通にイヤだろう、休みたいし。」



「そ、そうですよね。」


「もっとも後から来いってのも、面倒臭くてイヤだけどな。」


「そ、そんな事言わずに御礼させて下さいよ。」


「貴族は嫌いなんだよ。面倒になったら、この都市を潰しちゃうよ。」


「えええええ!そんな事しないで下さい。この都市の領主であるリトット伯爵が、兄貴の実力をいまいち信じて無いので、心配なんですよ。」


「だろう。そんなところにノコノコ顔を出したら、喧嘩になっちゃうぞ。」


「はぁ、そうですよね。今回も兄貴に報償を渡す為の招待を、リトット伯爵に任せて失敗しました。」


「ふむ。」


「まさか、ダンジョンの入口で待ってて、領主の館に直ぐ来いって言うなんて思わなかったっす。」


「そうかぁ?」


「王子と領主が呼んでいるから、Eランク冒険者なんて直ぐ来るのが、普通だと思っているんです。普通のEランク冒険者だったら、当たり前なんですけどね・・・。」


「うん。」


「結局、兄貴の実力を見誤っているのですよ。」


「そうかぁ。面倒だからこの都市を出ちゃうよ。ダンジョンも攻略したしね。」


「え?攻略したんですか!」


「したした。これがダンジョンコアね。」


俺はダンジョンコアをアイテムボックスから出して、レクに見せた。


「おおおおおお!まさかダンジョンを攻略してるとは・・・。流石兄貴です。王国の歴史に残りますよ。」


「歴史に残さ無くて良いよ。誰にも言うなよ。面倒な事になるからね。」


「は、はぁ。取り敢えず手持ちのお金を御礼として置いて行きます。残りは王都に来たときに渡します。」


レクは布袋に入った金貨をジャラッとテーブルの上に置いた。


「いらんけど、レクの顔を立てて貰っておくよ。王都に行っても居城に招待するなよ。」


俺は金貨の袋をアイテムボックスに入れた。


「そ、そんなぁ。遊びに来て下さいよ。」


「王都を潰しちゃうよ?」


「それは勘弁して下さい。」

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