第56話 管狐

俺達はダンジョンに入ると、5匹のインプが襲って来た。


「ケケケ、シネー!」

「ケケケ、ファイアボール!」


ブオオオオオ!


インプから火の玉が飛んで来た。


「私が守る!」


ジャイアントハーフの聖騎士リンが、1歩前に進み、左手の盾を展開し受け流す。


リンは聖騎士の鎧を展開しており、右手に剣を持っていた。


「インプども!覚悟しろ!」


盾を構えたまま前に進むリン。


ブラックジャガー獣人のノワが、低い体勢で左右に動きながら、リンの前に駆け出す。


俺はアイテムボックスから聖剣を出して、リンの後ろをついていく。


筒の様な物を持って、俺の後ろを狐獣人の薬師ババがついてくる。

「その剣は!もしかして・・・。」


「ん?どした?」

俺は前を向いたままで、ババに聞いた。


「せ、聖剣じゃろう!」

「そだよ。」


「えええええええ!タ、タクミ様はゆ、勇者!」


「それ、秘密だよ!」


「はぁ、何という事じゃ。伝説の勇者のパーティーに入ってしもうたのじゃ。」


その頃、ノワが先頭のインプに到達。

滑らかでしなやかな動き、しかし素速く、インプの下から飛び上がる。


インプはファイアボールを連発するが、当たらない。


ノワの右手で握る短剣が、黒い闇の魔力で覆われて伸びる。


ブシャッ!ゴトンッ!


先頭のインプの首を刈るノワ。


首を刈られたインプは、死んで下に落ちた。


その時、リンがかなり接近していた。


「クケケ、シネシネ!」

「コッチニクルナ!」


他のインプが「ロックランス」や「アイスランス」の魔法で攻撃して来たが、リンは全て盾で防ぐ。


「良し、ちょっと攻撃するから、リンとノワは避けろ!」


俺は聖剣を横に構えて草薙に振る。


リンは俺の後ろに下がり、ノワは這いつくばる。


ブアアアアア!シュッ!


ボトッ、ボトッ、ボトッ、ボトッ。


聖剣より光が溢れ、その光が伸びて残るインプ4匹を切断した。


切断されたインプの死体が地面に落ちる。


俺は聖剣をアイテムボックスにしまう。


「ひゃあ、一撃じゃと!流石じゃのう。」

ババは驚愕の表情で俺を見詰める。


「インプって強いよね?ダンジョンの上層に出現するのは、おかしいよな?」


「そうじゃな。」


「昨日冒険者ギルドでも1階に出現するのは、スライムかゴブリンだって言ってたよねー。」


「うんうん。」

リンが頷く。


「何だか、不穏な雰囲気だねー。」

特に警戒の様子もなく、お気楽な感じのノワ。


「そうだね。」

リンも平常心だ。


「まあ、レベ上げに良いな。」


「そだねー。」

「そうですね。」


「ええええええ!危ないじゃろう!」

焦るババ。


「大丈夫だよー。落ち着いてー。」

ババの肩を優しく叩いて、落ち着かせるノワ。


「素材を回収しようか。」


「はーい。」

ノワが短剣でインプの死体に近付く。


「ババ様、インプの素材は角と爪と牙でいいのー?」


「翼と尻尾、耳、眼もあると良いのじゃ。」


「へぇ。素材が沢山で良いねー。」

ノワは短剣で解体していく。


「儂も手伝うのじゃ。」

ババは手に持っていた筒に魔力を込める。


コーン!!


筒より小さな狐が数匹現れて、触手の様にインプの死体に伸びる。


狐達は死体より素材を集めて持って来た。


「おお!便利だな。」


「使役しておる、管狐くだきつねじゃ。」


「良いね。」

俺はノワと管狐達が集めた素材を、アイテムボックスに入れた。

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