第47話 第三王子レク

全身鎧フルプレートアーマーを装備した数人の人族の男達が、リトットの冒険者ギルドに入って来た。


扉が壊れる勢いで乱暴に蹴り開けられた。


「やっぱり田舎町は臭いなぁ。」

けものの匂いだ。」

「獣人どもが多いからなぁ。」


勝手な事を言いながら歩いて来る。


ノワと話していたジャッカル獣人のジャキは顔を顰めて、全身鎧フルプレートアーマーの男達を睨む。


周りの獣人達も同様だ。


「おい、なんか此奴こいつら反抗的な態度をとってるぞ。」

けものの癖に生意気だなぁ。」

「あー。どけどけ!」

「匂うぞ、あっち行け。シッシッ。」


ジャッカル獣人のジャキは、受付の列を離れて、全身鎧の男達の前に立つ。


「おい、余所者が偉そうにするな!」


「ん?」

全身鎧の男達の先頭にいた男が、顔を顰めて汚い物を見る目となった。


「無礼者!」

その隣の男が剣を一閃。


目にも止まらぬ速さ、剣の腹でジャキを薙ぎ払った。


ほう、なかなかの剣速だ。かなり腕が立つ様だな。重い全身鎧であそこまで動けるのは凄いね。


キンッ!!


金属音、ジャキは短剣で受けるも、弾き飛ばされる。


ドカッ!ドゴンガコン!


壁に激突して呻くジャキ。


ジャキも咄嗟に短剣で受けるとは、素早さがあるようだ。


「貴様ら、この方を誰と心得る?!

マヒロシ王国第三王子のレク様なるぞ!」


「獣人風情が気軽に声を掛けるなどもっての外、跪くが良い。」


「クッ。」

ジャキは痛む身体を我慢して跪く。


冒険者ギルドの中にいる者も一斉に跪いた。


俺とジャイアントハーフの聖騎士リンと、ブラックジャガー獣人のノワの3人だけ、立ったままでレク達を見ている。


「貴様ら、殿下に対して不敬である。よって不敬罪として死罪を申しつける。」


先程剣を振るった男が、刹那に踏み込んできて俺に剣を振り落とす。


リンが俺の前に1歩進み、盾を展開して軽く受け流した。


絶対の自信を持って振り降ろした剣を、軽く受け流されて戸惑う男。


戸惑いながらも1歩引いて構えた。


リンは一瞬のうちに聖騎士の鎧も展開し、右手に剣を構える。


「不敬は貴様らだ!タクミ様に刃を向けたな!許さん!」


「おいおい、リンそれ以上は秘密だ。」


「畏まりました。」


「タクミ?聞いたことが無い名だ。」

「な、何者だ!」

「聖騎士の全身鎧か、全身鎧を展開する魔道具は初めて見たぞ。」

「あの様な魔道具をを持っているとなると、高位の聖騎士。」

「高位の聖騎士が護衛していると言う事は、教会の上層部か?」


全身鎧の男達は、勝手に推測して結論を出している。


「あー。俺達は身分を明かすことは出来ないぞ。」


「何!殿下の御前であるぞ。」


「そもそも全身鎧に身を包んで顔も見えないのだが、殿下である証拠でもあるのか?」


「何!この鎧が何よりの証拠だ。」


「鎧が?便利な鎧だな。入れ替わったら分からないだろう?入れ替われない術式でも組まれているのか?」


「そんな術式があるわけなかろう!」


「では、証拠にならないだろう。」


「ううう、煩い!その者共を殺せ!」

レク王子は苛ついて、俺達を殺す指示を出した。


「し、しかし教会関係者に変に手を出すと、後々厄介な事になりますよ。」


「煩い!煩い!俺の命令だ!ぶち殺せえええええ!」

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