第44話 コウキと分かれた

俺と聖騎士リンと黒豹獣人のノワの3人は、公爵軍殲滅後に牧場に戻った。


出陣していない元勇者教教主レンと前暗部隊長のケントジジイが、牧場で待っていたので、状況を報告した。


教主レン改め領主レンは俺に言う。

「それでタクミ様は、他国へ行かれるのですね。」


「そうだ。後の事は任せた。」


「承知しました。タクミ様が必要になった際、お望みの資金や戦力を何時でも提供出来る様に致します。」


おお、俺のして欲しい事をよく分かってるじゃん。


「有難う。頼むよ。」


「お任せ下さい。」


「ジジイ、ノワはこのまま俺に同行して貰う事にする。」


「はい。そのつもりでおりました。ノワは王家暗部の中でも随一を誇ります。きっとお役に立つ事でしょう。」


「役に立つわよー。当たり前じゃない。」

ノワは笑って胸を張る。


「リン、タクミ様の事は頼むぞ。」

レンもリンに向かって話し掛けた。


「承知しております。私はタクミ様の盾!何人たりとも指1本触れさせません。」


「うむ。その意気だ。」


「はい!」


俺達がレンとジジイとの会話を終えた後、牧場で働くコボルトのコウキのところに顔を出した。


コウキは笑顔で仲間のコボルト達と働いていた。


俺に同行してた時には見たことが無い満面の笑顔。


「コウキ!」


「あ、タクミ様だワン。」

駆け寄るコウキ。


「俺はリンとノワの3人でこの国を出る事にした。お前はここに残って、仲間のコボルト達と一緒に牧場で働け。」


「え!一緒に行きますワン。」


「いや、コボルトの仲間と一緒に働くお前を見ていたが、お前はここで働いていた方が幸せだ。」


「でも・・・ワン。」

俯くコウキ。


「大丈夫だよ。コウキが同行しなくても、ノワが仲間になったので、探索や諜報関連は問題無い。」


「確かにそうですが・・・ワン。」


「私に任せてー。タクミ様を暗殺者からも守る自信があるからー。」

ノワがコウキを撫で撫でしてる。


「そ、そうですかワン。確かにノワさんの方が僕よりスキルが上だから、問題は全く無いのですが・・・ワン。」


「今まで有難う。恐らくこれから向かう国によっては、コボルト族を魔物として認識する国もあるはずだ。それを考えてもコウキはここに残った方が良い。」


暫く考えていたコウキは。

「・・・分かりましたワン。ノワさん、タクミ様を宜しくお願いします。」


コウキはノワに頭を下げると、俺に向き直った。


「タクミ様、僕はタクミ様の奴隷になって幸せです。タクミ様が僕みたいな者でも必要になったら、何時でも声を掛けて下さい。コボルト族が必要になった場合も、仲間と共に何時でも駆け付けます。」


「うん。有難う、その時は宜しく頼むよ。」


俺とリンとノワの3人は、地竜が引く馬車に乗り、隣の国に向かった。

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