第30話 公爵家長女アンナ2

俺達は公爵の居城にある宝物庫より財宝を奪取して外に出た。


そこに公爵の長女アンナが、5人の騎士を従えて、腕を組み仁王立ちで待ち構えていた。


「馬鹿女カノンの姉とは、随分無礼な事を言うわね!まあ、カノンは公爵家の全財産を、どこぞの馬の骨にくれて遣った、大馬鹿だけどね。」


「そうだろ。馬鹿の姉も馬鹿だ。」


アンナの後ろにいた騎士達が、俺の無礼な物言いに怒り剣を抜こうとする。


アンナはそれを手で制する。


「まあ、良いわ。宝物庫から持って来た物を返しなさい!」


「おや?魔法誓約書に従わないのかい。」


「ふふふ、魔法誓約書に従って、態々貴方達が宝物庫から財宝を持ち出すまで待ってたのよ。持ち出した後、貴方達が私に返すのは問題ないわ。」


「成る程、誓約書の範囲外を狙った訳だ。」


「ノワ!あんたもそんな奴等の側にいないで、こっちに戻りなさい!

魔法誓約書に従って、1度聖騎士リンの配下に入るのは、やむを得ないけど、誓約書の適用範囲はそこまでよ。

その後、王家側に戻っても、誓約内容に触れる事にはならないわ。」


ノワはアンナに怒りをぶつける。


「馬鹿を言わないで!王家の為と偽りながら、あんた達の我が儘に付き合って、何の罪もない人達を殺すのは、もう懲り懲りなのよ!


これから暗部は、王家の暗殺部隊から、この世界の為、使徒様の暗殺部隊になる事にしたわ!」


え?世界の為?そんな大層な事する気無いけど・・・。


使徒様の?って・・・。


あれか?王家の騎士達がジジイの前で、俺の事を「使徒様」って呼んだから、暗部のノワも俺の事を「使徒」だと思ってるんだな。


う~ん、勢いで「使徒」を名乗っちゃったのが、ここまで影響したかぁ。


はぁ、どうしよう。


「シト?世界の為?何言ってんの?

暗部は王家の為に働けば良いのよ!

今までの恩を仇で返す気?

崇高な王国を敬え無いなんて、やっぱり亜人ね。獣は狩るべきだわ。」


ノワは唇を噛み無言でアンナを睨む。


「王家が没落寸前の今、公爵家の財産まで無くなれば、この国は大変な事になるわ!何より私が贅沢を出来なくなるのよおおおおおおおお!

私の輝かしい未来を返しなさい!」


「そんなの知らんがな。自業自得だろう。」


「無礼な物言いは変わらないわね。良いわ、決闘で勝負を着けましょう。」


「決闘?お前等姉妹は、決闘が好きだなぁ。何でも力ずくで解決しようとするな!俺にメリットは無いので、受ける気は無い!」


「あら?不敬罪で死刑にしても良いのよ。私が勝てば財産を全て返して貰う。万が一貴方が勝てば不敬罪を許してあげるわ。」


「不敬罪ねぇ、遣ってみろよ。俺は全然怖くないよ。」


「ふふん。その方が手っ取り早いわね。不敬罪で斬り捨てして、財産を取り戻すわ。後悔しない様にね。」


「そっちこそ後悔するなよ。」


「さあ、騎士の本懐を果たしなさい!無礼な奴等を討ち果たすのよ!」


騎士達は武器を抜いて構えた・・・。


ん?


1人だけ、既に右手の杖を俺達に向けていた。


咄嗟に俺は時を止めようとしたが、既に俺達は炎に包まれていた。


畜生!余計な話は魔法の詠唱時間を稼いでいたのか!

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