第29話 公爵家長女アンナ1
俺達は公爵家の全財産を貰う為、公爵の居城内にある宝物庫に来た。
「鍵が掛かってるなぁ。」
重厚な扉は固く、ちょっとやそっとでは、空きそうに無い。
強引にぶち壊す事は出来そうだが、どうしようか。
「私が開けます。」
暗部の黒豹獣人であるノワが、開けられるらしい。
「おお!頼むよ。」
ノワは、針金の様な道具を、鍵穴に差し込みガチャガチャと回しながら、魔力を流していた。
カチッ。
「お!開いたか?」
「いいえ、ここからです。物理的な鍵は外しましたが、魔法の鍵が残っています。」
ノワは更に魔力を流す。
魔力を強くしたり弱くしたり、時には耳を扉に当てて、物音一つ立てず繊細に・・・。
俺と聖騎士リンは固唾を飲んで、その様子を見守る。
グオン。
重く低い音が響いた。
「開きました!」
扉はかなり厚い鉄板だった。
これは、壊せなかったかもなぁ。
ノワに開けて貰って良かったよ。
「おお!流石ノワだ。有難う。」
「いえいえ、それ程でも・・・。」
照れるノワは可愛い。
黒い尻尾が揺れている。
俺は宝物庫に入り、根刮ぎアイテムボックスに収納した。
大量の金貨と宝石、美術品。伝説の武器と防具。様々な魔道具。
王家と同じぐらいはあったな。
「タクミ様は、公爵家の全財産を貰って行くのですよね?」
ノワが俺に聞いた。
「そうだよ。」
「宝物庫以外にも財産があります。」
「だろうね。」
「そちらも取りに行くのですね。」
「う~ん。隠してある財産を探すのは、時間が掛かりそうだからなぁ。」
「分かりました。配下の者が隠し財産を含めて全ての財産を、お持ちします。」
「え!そんな事可能なの?」
「公爵家の事は裏も表も知り尽くしておりますので・・・。」
「有難う、助かるよ。」
えへっ。
照れ笑いのノワ。
意外と若いのか?
ノワの黒い耳がピクピク動いた。
「誰か近付いて来ます。」
「ん?」
「近付いて来るのは、女性1人と男性5人です。」
「そこまで分かるのか。ノワは凄いねぇ。」
「それ程でもぉ。」
ノワがちょっとくねくねしてる。
「宝物庫のドアの外で、待ち構えていますよ。」
「出入口は一つしかないからなぁ。」
俺が先頭で宝物庫を出ると、腕を組んだ女性と、その後ろに5人の騎士が待ち構えていた。
「ちょっとおおお!何遣ってたのよ!貴方達が聖騎士リンの一行ね。」
女性が左手を腰に当て、右手の人差し指でリンを指差した。
「・・・。」
リンは無言で俺を見た。
「そうだが、あんた誰?。」
俺は訝しげに女を見る。
綺麗な顔立ちだが・・・。
生意気が真っ赤なドレスを着ている。
狐目の女。
「まさか私を知らないの?信じられない、何処の田舎者なのかしら?」
「知らんね。」
「公爵の長女アンナ様です。」
コソコソ耳打ちするノワ。
ノワの耳打ちが聞こえたらしい。
「そうよ!私がアンナよ!跪きなさい!」
これはまた、あああ、面倒臭そうな奴が登場だ。
「お前が馬鹿女カノンの姉なのは分かったよ。で、何の用だ?」
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