悪逆無道の異世界冒険記

ボルトコボルト

第1話 勇者召喚

「おお、勇者様!我が世界に来ていただき有難うございます。」


石造りの大きなホール。

足元には魔方陣。

多分召喚の間。


目の前に豪華な神官の服を着た爺さんと白いドレスで満面の笑みの綺麗で可愛い女の子。


「私は勇者教の教主レン・レンロードと申します。」

「私はこの国ミヤキザの王女ナナミ・ミヤキザです。」


「ふ~ん・・・。」


名前も名乗らず、訝しげに教主と王女を見る俺。


二人の後ろに並ぶ騎士達が顔を顰め、腰の剣に手を伸ばす。


俺の名前は佐藤拓海さとうたくみ

引きこもりのコミュ症。


中学で苛められて、引きこもりになったが、通信制の高校を何とか卒業した。


働く事が出来ず、自分の部屋でオンラインゲームとラノベの小説を読む事が生き甲斐だった。


完全に親の脛を齧って生きていた。


ある日、オンラインゲーム中に寝落ちして、起きたら神様に呼ばれて転生する事になった。


ラノベではトラックにひかれて、死んで転生するのだが、生きてるのに無理矢理転生された。


将来に希望が無かったので、別に問題は無いのだが・・・。


教主レンが何やら一所懸命説明してるが、殆ど聞いて無かった。


最後に「と言うわけで魔王を倒して欲しいのです。」と言う言葉は聞こえた。


「断る。」

と間髪入れずに断った。


「はぁ?ちゃんと聞いていましたか?魔王を倒さないと元の世界に帰れないのですよ!」


教主は俺がちゃんと聞いていない事を分かっていて、少し怒り気味に言ってきた。


「え!魔王を倒しても元の世界に帰れ無いでしょう。」


「な、何を言ってるのだ。」

教主が慌て始めた。


隣の王女の笑顔も引き攣っている。


「誘拐してこの世界に無理矢理呼んで、騙して魔王を討伐させた後、俺を殺すんでしょ。」


「そ、そんな事は無い!」

教主は必死に否定する。


「誘拐と言われましたが、元の世界で死んだ者が、勇者として召喚されます。寧ろ新しい生を貰った事に感謝されるべきではありませんか?」


王女がしたり顔で説得し始めた。


「ああ、それね。今まではそうだったみたいだけど、俺については神様が同姓同名の人と間違ったみたいだよ。生きていた俺が呼ばれたんだ。これって誘拐だよね。」


「え?」

王女は目を開いて呆然とする。


「それで、神様には謝られたし、色々教えて貰って、チートのスキルもくれたので、神様は・・・許した。


だけど、あんた達を許す気は無い。」


「・・・。」

教主と王女は何も言えず。


「召喚した勇者を騙して、魔王討伐後に殺してた事は神様も知ってたよ。


結果的に世界は救われているので、目をつぶってたみたいだったけど、心を痛めてたぞ。」


「・・・。」


「お前等が他力本願で、自分達で解決すれば良いのに、他の世界から召喚なんてするから、こう言う事が起きるんだ。自分達で魔王を倒せば?」

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