第1話「転生」
「はい、ひっひっふー!! ひっひっふー!!」
「んあああああああ!! ひっひっふぅぅぅぅぅぅ!!!」
「もう頭出てるよぉ!! はい、踏ん張ってぇ!!」
「うんんんんんんんんんんんんんんんん!!!!」
すぽん! 俺・爆・誕!!
「よっしゃ出た!! おめでとう、男の子だよ!!」
「おぎゃぁぁぁぁぁ! おぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」
はぁ…はぁ…く、苦しかった…。こんな狭いところから無理やり出されたらそりゃ泣くわ。赤ちゃんの産声の正体がはっきりとわかった瞬間だったよ。
「旦那様! 御子がお生まれになられました!!」
「おぉ! そうか!」
微かにバタバタとした音が聞こえ人の出入りが激しくなっている。俺は生まれたばかりの自分の体に触れてみると、なんかローションでも浴びたかのようにぬるぬるした。そりゃ生まれたてなんだから血とか色々なものが付着してるのは分かるけど予想以上に気持ち悪い。
そんなことを考えていると、俺を取り上げた人の手によって温いお湯の中に優しく入れられて体を洗われていく。どうやら産湯に浸からされているようだ。ぬくぬくである。
「気持ちいいでしゅか~? すぐキレイキレイしましゅからね~」
この人は助産師さんか何かなのかな? しかし、この歳(生まれたてだが中身は16歳)で赤ちゃん言葉を使われるとなんだかむず痒くなってしまうのは俺だけだろうか。助産師さんの手で俺の体を隅々まで洗い終わるとタオルのような暖かい布に包まれ、何やらゴツゴツした人の手に渡された。まだ目はあまり見えないが、多分この人が今世の俺の父親なのだろう。
「よくやった…よくやったぞリューネ!! 見てみろ、可愛い男の子だぞ!!」
「えへへ……私頑張ったよ~。あなた、この子の名前はもう決まってる?」
「あぁ勿論だ。3日3晩考え抜いて決めてきたぞ。この子の名前は…クロード。クロード=グレイナードだ!」
「クロードかぁ。じゃあクロちゃんだね。これからよろしくね、クロちゃん♪」
俺はゴツゴツした手から柔らかい手へと渡され、優しく抱きしめられながら頭を撫でられる。この人が母親かな。俺の新しい両親はどうやら優しい人達のようだ。
「あなた見て見て。目元があなたそっくりでかっこいいんだよ~」
「そうか? 口元はお前に似て可愛らしい気がするがな。さすが俺達の子だ。将来は女を泣かせる美男子に育つに違いないぞ!」
「えへへ~、嬉しいなぁ。ねぇあなたぁ…チューしたいなぁ」
「リューネ…」
どうやら両親の夫婦仲は悪くないらしいな。険悪な両親の子供になんて生まれたくもないから非常にありがたい。だが俺の目の前でいきなりラブラブしないで頂きたい。こちとら彼女いない歴=年齢だぞ。
「あうー、えぁー」
ラブラブを阻止しようと声を出そうとするが、やはり上手くは出ないようだ。まぁ生まれたてですからね。
「わぁ! しゃべったよ~! クロちゃ~ん、ママですよ~」
「クロード~、パパだぞ~」
俺が喋ったのが嬉しかったのか、2人して甘い声を出してくる。親バカになりそうだなこの2人。
「この子はきっと立派な男になるに違いない! 大きくなったら立派な冒険者になれるように鍛え上げてやらないとな! 今から楽しみだ。ぬふふふふ…」
「もぅ、気が早すぎるよぉ? …クロちゃん、これから元気に育ってね♪」
母親が俺の頭を撫でてから、額に優しくキスをした。
今日から俺はクロード=グレイナードとして生きていく。せっかく人生やり直せるんだから、悔いの残らないように精一杯頑張っていこうか。うん。
§ § § § §
俺が生まれて、あっという間に一週間が過ぎた。
動けるようになるまでは特にやることもない。毎日食う出す寝るを繰り返す日々だ。前世の記憶を持っている俺からしたら動けない状態で過ごすっていうのは結構辛いものがある。
そんな中でも何か出来ることないかな~と考えていると、女神様から聞いた『限界まで魔力を使って休息をとったら魔力が増える』って言葉を思い出した。ていうか、そもそも今の俺って魔法使えるのか?
スキルの使い方は生まれる前に女神様に聞いている。周りに誰もいないのを見計らって女神様から貰ったスキルの一つ、【真眼】を自分自身に発動してみると、目の前に四角いモニターのようなものが表示され、そこに自分のステータスが浮かび上がってきた。
名前:クロード=グレイナード
年齢:0歳 種族:人間
称号:グレイナード子爵家3男
レベル:1
HP:5 MP:12
筋力:2 体力:2 魔力:9
精神:68 敏捷:1 運:300
EXスキル
【魔法創造】
スキル
【無限収納】【真眼】【言語理解”極”】
…精神値が高いのはなんとなくわかる。中身16歳だし。しかしなんでこんなに運が高いんだろう? まぁ運がいいのは良いことなんだろうけど、ここだけ数値がずば抜けてると妙に気になってしまう。まぁ今の俺にはそれを確かめる術なんてないからどうしようもないんだけどね。
運は後回しにして、どうやら今の俺にも一応魔力はあるらしい。あとはこの魔力を消費するための手段の確立だな。実験も兼ねて【魔法創造】で使っても周りにバレにくい魔法を作ろうか。0歳児の俺が魔法を使ってるのが周囲にバレたら……とてつもなくめんどくさそうだし。主に親達が。
【魔法創造】の詳しい説明を見るため、【魔法創造】の項目にさらに【真眼】を掛けてみると、そこから派生して概要欄が出てきた。
【魔法創造】
自分の思い描く魔法を創造することができる。ただし創造する為には魔力をコストとして支払う必要がある。コストの魔力量は創造する魔法の難易度によって変動する。
一度創造した魔法は、創造時に使用した魔力量の半分を消費することでいつでも使うことができる。
※神の禁忌に触れる魔法を創造することは禁止されている。
要は超簡単な魔法なら今の魔力量でも作れるかもしれないってことだよな多分。それを使って今から魔力を鍛えれば、将来いい感じのモテモテ魔導師になれるかもしれない。
意識を集中して【魔法創造】を起動する。物を動かすくらいの魔法なら簡単でいいかな。
《魔法創造起動。
術式構成:魔力を使用して物を動かす。動かす物の重さによって魔力消費量が変動する。
術式名:
※
割とギリギリだけどなんとか作れるようだ。YESっと。
体内で【魔法創造】が発動する。体の中の魔力をほぼ全部消費したからか、激しい倦怠感が体を襲ってきた。しかしこれで
だけど今日はもう無理…。物凄く体がだるいし超眠たい…。おやすみなさい…。
§ § § § §
毎日両親やメイドの目を盗んではコツコツと魔法を使い続けている。最初のうちは近くにあった積み木や絵本を5秒位動かしたら意識を消失していたが、その成果もあって次第に魔力量が増えていったらしく、今では5分くらいなら動かし続けるようになっていた。
現在の【真眼】で見た俺のステータスはこんな感じ。
名前:クロード=グレイナード
年齢:0歳 種族:人間
称号:グレイナード子爵家3男
レベル:1
HP:6 MP:108
筋力:3 体力:3 魔力:35
精神:73 敏捷:2 運:300
EXスキル
【魔法創造】
@【念動魔法】
スキル
【無限収納】【真眼】【言語理解”極”】
努力の結果、どうにかMPが100を超えたようだ。3ヶ月でここまで魔力が伸びれば上々じゃないか? しかし、乳児でこの魔力量はどうなんだろう。もしかしたらこのぐらいの魔力量ならそこら辺にいる子供と変わらないのかもしれないが、判断基準がないのでよくわからない。分からないことは無理に考えても仕方ないので気にしないことにしよう。
そういえば最近になってやっと目がまともに見えるようになり、家族の顔と名前が一致した。
まず父の『ガルシア=グレイナード・ファルネス』35歳。種族は人間。
今俺がいるこの国、クリスティア王国内にあるファルネス領の領主で爵位は子爵。(領主は名前の後ろに自領の名前がついて、他の貴族からはその名で呼ばれるらしい)
銀髪のリーゼントっぽい髪型をしていてかなりのイケメン。全身が筋肉に覆われたマッチョメンで剣の達人らしい。元凄腕冒険者で、剣で挙げた功績で平民から貴族になったとかなんとか。
次に父さんの第1夫人である『オリビア=グレイナード』35歳。種族は人間だけど祖父がエルフだから実質クォーターエルフになるらしい。少し寿命が長いらしいが人間とほとんど変わらないようだ。
緑色のショートヘアーでスレンダーな、教育ママっぽいメガネ美人。領主である父さんの秘書をやっているらしい。昨日も父さんがサボってるのをひっ捕まえて説教してるのが聞こえていた。真面目な人なんだろうね。
オリビア母さんには2人の子供がいて、長男の『マティアス』13歳と、次男の『ディオン』12歳。2人は王都にある貴族院と言う学園に通っていて、併設されている寮で暮らしのため今は家にはいない。親達の話を聞く限り、2人共かなり優秀なようだ。
俺の実母で父さんの第2夫人の『リューネ=グレイナード』28歳。種族は人間。
腰まである金髪の緩いウェーブがかった髪で、推定96cmのビッグなお胸の持ち主。おっとり系で超優しい。リューネ母さんは元冒険者の魔術師で、父さんとは昔パーティを組んでいた事があったようだ。
冒険中に父さんに何度か命を救われた事がきっかけで惚れたらしく、リューネ母さんの方から何度も告白して攻め続け、なんとか父さんを陥落して結婚したらしい。おっとりしているようで実は結構アグレッシブな人みたいだ。
そして俺の実姉でグレイナード家長女の『フェリシア』4歳。リューネ母さんに似たゆるふわ系金髪ポニテ美少女。俺のことが大好きらしく、何かにつけて引っ付いてくる。母さんのかわりにおっぱいをくれようとして出なくて泣いてしまう優しい子だ。
第1夫人のオリビア母さんと第2夫人のリューネ母さんの仲はかなり良好。長男と次男が王都の貴族院に行って家に居ないからなのか、俺を母2人と姉の3人でとことん甘やかしてくる。
「リューネ、クロードのお洋服買ってきたから着せてあげましょう!」
「うん、いいよ~。フェリちゃんも一緒に着せてあげよーね」
「うん! はーいクロちゃん、お着替えの時間だよー」
「あうあうあー」
こんな感じで毎日着せ替え人形と化している。喜んでくれて何よりだよ。でも女の子みたいな格好させるのは出来れば勘弁してください。変な趣味に目覚めたらどうしてくれる。
そんな乳幼児な俺にも、とても大切な時間がある。
「そろそろおっぱいの時間だね~」
毎日の赤子にのみ許されたお楽しみ、おっぱいタイムである!
美人な年上お姉さん(母だが)のおっぱいを吸える。しかも巨乳(重要)。前世が純情チェリーボーイの俺にとっては刺激が強すぎるのだが、生きていくためには吸わなきゃならない!(使命感)
リューネ母さんが服を捲り上げ、俺の目の前に巨大な肌色のスイカを2つ出現させる。
「ほ~らクロちゃん、いっぱい飲むんだよ~」
「あぅ~、うぶ~」
俺は吸う。ガッツリ吸う。暖かい母乳はほんのりミルキーな甘いママの味がした。いたずら心に負け、先っぽを唇に挟んで強めにクリクリするとリューネママがぴくっと震える。
「あんっ! こーらクロちゃん、乳首ハムハムしちゃダメだよ~。メッ!」
ごめんなさい。エロくてごめんなさい。でもしょうがないじゃない。男の子だもん!
§ § § § §
そんな感じで過ごしているうちに月日は過ぎ去り、あっという間に生まれてから1年が経とうとしていた。
俺は今だにおっぱいを卒業できていない。というか卒業したくない。なぜあの魅惑溢れるおっぱいを卒業してドロドロとした離乳食を口にしなければならないのか。訳がわからないよ。
だが俺の成長は当然かもしれないがその辺の乳幼児より格段に早い。半年でハイハイが出来るようになり、今では少しだけ歩けるようになってきた。
「あんよはじょ~ず、あんよはじょ~ず~」
「あいや~」
「すごいよクロちゃ~ん! いっぱい歩けたねぇ!」
「あい~」
そんな俺の今の目標は念動魔法サイコキネシスで空を飛ぶこと!
念動魔法サイコキネシスは物質を宙に浮かせて自由に動かせるんだから、自分にかければ自由に空も飛べるんじゃね? と考えついて実践してみると、多少体を浮かせることが出来たがすぐに力尽きた。念動魔法サイコキネシスは重量によって魔力消費量も増加する魔法だ。積み木のような軽いものは大体20g程。これくらいならしばらく浮かせることができるが、自分の体重は現在8~9kg。積み木のおよそ400倍である。こんな重いもの持ち上げようとしたらそりゃすぐに魔力不足で失神するわ。
昨日は失敗してしまったが、今日はもっと慎重にやってみよう。
空を飛びたければ浮遊魔法を創造するという手もあるが、この念動浮遊訓練はいい魔力トレーニングになる。 もしも念動魔法サイコキネシスでDrスランプあ○れちゃんのタ○ボくんのように自由に空を飛ぶことが出来るようになれば、魔力量もきっとすごいことになるに違いない! 頑張れ俺! うおー!
パタパタパタ、ガチャ
「クロちゃーん、おむつの交か…ん…」
「あぅ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
突然部屋に入ってきたリューネ母さんの目と、宙に浮いてる俺の目がバッチリ合ってしまった。これ、ヤバくないか?
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