異世界まったり冒険記~魔法創造で快適無双~
南郷 聖
プロローグ
「ここは・・・?」
目を覚ますと、月明かりに照らされた、白い花があたり一面に咲き乱れている丘の中心に立っていた。地平線まで続くその光景は、綺麗を通り越して若干不気味に感じてしまうほどだ。
しんと静まり返ったその空間には人の姿はおろか虫の一匹すら見られない。
「俺、部屋で寝てたような気がしたんだが・・・夢か?」
夢にしては体を撫でるように吹く風を感じるし花の匂いもしている。お約束の如くほっぺたを抓ってみるがジンジンとした痛みを感じる。どうやら夢ではないらしい。
そんなことを考えていると、突如空の一部が光だし、その光が集まって人のような形を象っていく。
『残念ながらこれは夢じゃないんですよねぇ』
「っ!? 誰だ!」
そこには太ももまである長い金髪の蒼い天女っぽい衣装を着た美女が浮いていた。出るとこは出て引っ込むとこは引っ込むモデル体型。俺の知ってる芸能人なら広瀬○ずに似ている気がする。俺の予想では身長165cm程、B92・W58・H94。服を着ていてもそのナイスバディは確認できる。学校では的中率90%オーバーの3Sスカウターと呼ばれている俺に間違いはないはずだ。
…ていうか、なんでこの人浮いてんの!??
『それは私が女神だからです♪ 初めまして、坂本 匠さん』
「女神…様…。マジっすか」
『マジです。輪廻と転生を司る女神セラスヴィータと申します。以後お見知りおきを』
マジらしい。まぁこんなに綺麗な人なら女神も納得だ。
『あら、綺麗だなんて嬉しいですね♪』
…心、読めるんすか?
『はい。私のスリーサイズは当たってるので、誰にも言っちゃ嫌ですよ///』
どうやら今日も俺のスカウターは絶好調なようだ。
女神様は微笑みながらゆっくりと俺のそばへと降りてくる。近くに来ると解るが、人間には感じられない神々しさのような威圧感を感じる。これが女神の威光というものか。
いろいろ聞きたいことはあるが、これだけはハッキリしておきたい。
「そ、それで、あなたが女神様ってことは、俺…もしかして死んだんですか?」
『はい、残念ながらお亡くなりになりました。原因は寝てたからわからないと思いますが…焼死ですね』
しょ、焼死!? どういうこと!? 俺寝てたんじゃないの!?
『あなたが寝ている間に、あなたの家が放火されて全焼しちゃったんですよ。その時の周囲の風も強かったからあっと言う間に家が燃えてしまったのです』
女神様が手を空に向けると、モニターのようなものが現れた。そこに映っていたのは、今も燻り続けている俺の家を消防士たちが消火活動をしている所だった。そこに集まる近所の野次馬たちの笑顔が癪に障る。おい写メ撮るな。
『あなたのご両親が海外旅行中だったのがせめてもの救いでしたね』
「……そう…ですね…」
俺の両親は結婚記念日に旅行に行くとか言って俺を置いて今はオーストラリアだ。まぁ置いていかれたわけじゃなく、海外とかめんどくさくて自分で断ったツケがこのザマだ。今も燃える家の光景を見ていると、俺の宝物たち(主にフィギュア)も俺と一緒に燃え尽きてしまったのだろう。まぁ俺自身は寝てて痛みも何も感じなかったことが唯一の救いだろうか…。
まだこれからやりたいことあったんだけどなぁ。来週アイ○スの最新作でるから半年前から予約して楽しみにしてたし、それに…それに俺まだ童貞だったんだぞ! 女の子に告白されてみたかったし、付き合ってあんな事やこんな事やそんな事してみたかったのに…。あー鬱だ。死のう。って俺もう死んでるのか。アハハハ…。
『え、えーっと、そんなあなたにいいお話を持ってきたんです!』
俺の不穏な空気を感じ取ったのか、女神様がモニターを消して無理やり笑顔を作っている。
「…いいお話ですか? もしかして生き返れるとか!?」
『いえ、生き返るのは流石に無理ですね。私でも完全に燃えてしまった者を復活させることは不可能です。そうじゃなくて、転生しないかっていうお誘いです。あなたが現世で過ごした世界ではなく、私の管轄する異世界、ウェスタリテへと』
「転生…異世界…異世界転生!!??」
まじか!! 俺がたまに読むラノベの剣と魔法の世界でチート能力を駆使してハーレム作って俺TUEEEしたりするあの異世界転生? 俺も女の子とキャッキャウフフしながら無双できるの!?
『やはり最近の地球の若者は話が早いですね。貴方の考えで大体合ってますよ。まぁ、ハーレム作ったり俺TUEEEってできるかは匠さんの努力次第ですけどね』
おぉ大体合ってた。
「でも、なんで俺が? 誰でも転生できるんですか?」
『誰でもではありません。転生できる対象は善行を多く積んだ若き魂のみになってます』
…善行なんて俺積んでたかな? 普通にのほほんと暮らしてただけな気がするけど。
『いえ、匠さんが死ぬまでの16年間で結構な人が助けられてますよ。たとえば、電車の中で痴漢にあってた女子高生を助けたり、車に轢かれそうな子供を助けてみたり、橋の上から飛び降り自殺しそうな人を説得して助けてみたり…』
そういえば確かにそんなことあったな。
生前、なぜか俺の前ではなにかしらのトラブルが起きていた。そして目の前で起きたトラブルは放っておくわけにも行かず、そこに介入しては出来るだけ解決していったのだ。どうやらそれが善行にカウントされていたらしい。無駄な努力じゃなかったってことだな。
『そんな訳で、匠さんは転生条件を満たしているので、女神である私が転生するかの回答を聞きに出向いたのです。坂本 匠さん、あなたは異世界に転生する意思はありますか?』
「…ちなみに転生しなかったらどうなりますか?」
『どうもなりませんよ。異世界に転生しない場合は通常通り輪廻の輪の中に入ってもらい、他の死者と同じように審判を受け、天国か地獄に送られます。あなたの場合天国確定ですけど。そして勤めを果たしたあと次の生命に転生することになるでしょう』
「なるほど」
まぁこのまま死ぬなら異世界転生しないって選択肢はないよな。でも転生って今持ってる記憶とか全部失って転生するんだよな。それだと意味なくない?
『匠さんの場合、善行の値が一定以上あるので特別に記憶はそのまま引き継ぐ形でも大丈夫ですよ。別の世界に生まれ変わることになるので肉体は赤ちゃんからの新規スタートですけどね。そして私からいくつか贈り物も与えましょう』
「俺、異世界に行きます!」
特に悩む必要はなかったようだ。決断は素早く。基本ですな。
『あなたの意思は確認しました。それではこれからあなたが行く世界のことについて説明しましょう』
「お願いします!」
女神様の話だと、これから行く異世界はLV有り、スキル有り、魔法有りで、魔物やダンジョン、冒険者ギルドなどがある典型的なラノベ風異世界のようだ。時代は中世の様式によく似ていて、王様や貴族、奴隷なんかもいるらしい。文明は科学の代わりに魔法文化が栄えているようだ。
『他に聞きたいことはありますか?』
「種族とかってどうなってますか?」
『種族は人間や獣人、ドワーフやホビットにエルフ、妖精や精霊もいますね。それぞれの種族が自分の国を築いていて、中には他種族が入り混じった国もあります』
よし! 異世界行ったらやりたかったことその一(獣人の女の子をモフモフする)ができるってことだな!
「ちなみに生まれ変わる種族って選べたりしますか?」
『残念ながら選ぶことはできません。それを決めるのは創造神様ですから』
「そうですか…」
できればエルフか獣人になってみたかったが選べないのなら仕方がない。創造神様に期待しよう。あとはスキルや魔法のことかな。どんなものがあるのか非常に気になる。
『それでは期待しているみたいですし、贈り物の話に移りましょうか。何か欲しいものはありますか? こんなスキルや才能が欲しいとか。少しなら融通できますよ』
ど、どうする? やっぱりラノベで読んだときによく見る基本的なスキルは欲しいよな。アイテムイベントリに鑑定能力、いろんな種族と話せる言語理解能力とかか。あと欲しいって思ったのが魔法全属性使用とか魔法創造とか武器創造とか無限の魔力とか能力限界突破とか。でもそんなぶっ壊れチートくれないヨナ…|ω・`)ちらっ
『…それでは無機物を容量なしで収納、保存ができる【無限収納】、全ての情報を見通す【真眼】、あらゆる言語を理解できる【言語理解”極”】のスキルを授けましょう。あんまりスキルを授けすぎると私が創造神様に怒られそうなので、あと一個だけ好きなものを選んでいいですよ』
素晴らしいサービス精神だ。さすが麗しき女神セラスヴィータ様! そこに痺れる憧れるぅぅぅぅ!!
でもあと一個か。どうしよ。
「あの、魔力って簡単に増やす方法とかあるんですか?」
『簡単ではないですね。自分の限界まで魔力を使ってゆっくり休息をとったら少しだけ魔力容量が増えるっていうのが一番早い魔力を増やす方法でしょうか。あとは魔力容量を増やせる薬もあるにはありますよ。レアアイテムですけど』
「ふむふむ。あと魔力だけじゃないんですが、LVとか能力値の限界って決まってるんですか?」
『LVの限界値は決まっていて999で打ち止めです。まぁ限界までLV上げする人は今のところ見たことないですけどね。参考までに某国で最強と言われている騎士団長でLV250くらいですね。魔力とか筋力とかは鍛えればどこまでも増え続けます。能力が上がるにつれて上昇しにくくなりますが』
最強の騎士団長か…かっこいいな! LV上限が999まであるならLV限界突破とかは要らないか。そこまで上げれるかもわかんないし。魔力とかの能力も限界値ないみたいだから大丈夫だろう。あと欲しいのは魔法系スキルだよな。せっかく異世界行くんだし是非いろんな魔法を使ってみたい。となると、全属性使えるようにするよりは自分で魔法作れるようになったほうがお得だよな。…よし、これで行こう!
「決まりました!魔法を自分で作れるスキルが欲しいです!」
『【魔法創造】ですね。わかりました。ただ、使い方によっては禁忌に触れることもありますのでその辺りは制限させてもらいますね』
「禁忌ですか?」
『はい、人間などの生物のコピーを生み出してみたり、死者を蘇生する等の神の御技を模倣するような魔法を作ることです。それをしてしまうとあなたに何らかの罰を与えなければいけなくなってしまいます。こちらからも警告は出しますが、決してしないようにしてくださいね』
…やっぱりその辺は異世界でも禁忌なんだな。死者蘇生くらいなら行けるかもとか思ったんだけど。あと、どうせなら自分に従順な俺好みの女の子を作ったりしてみたかったんだが…
『だめですからね?』ニコッ
「わ、わかりました!! 気をつけます!! Sir!」
女神様のあまりの笑顔に恐怖を感じ、思わず敬礼で答えてしまった。この女神様の怒りに触れてはいけない。あまり余計なことは考えないでおこう。
▽✩▽✩▽✩▽✩▽✩▽✩▽✩▽✩▽✩▽✩▽✩▽✩▽✩▽
色々と話しているうちに転生の時間となったようだ。女神様が地面に魔法陣のようなものを出し、そこに乗るよう促される。いよいよ旅立ちの時だ。
『それではこれから匠さんを異世界ウェスタリテへと転生させます。もし転生したあとに質問がありましたら、私を祀っている教会で祈りを捧げてください。答えられることならお答えしますので』
全部は答えてくれないのな。まぁ何でもかんでも女神様に聞いたらダメだよな。生まれ変わってどうなるかはわからんが…とりあえずの目標は女の子にモテる自分になることだな!
「女神様、色々とありがとうございました!」
『はい♪ それではいってらっしゃい。あなたの新しき人生に幸あらんことを』
足元の魔法陣が白く光り輝き、俺の意識は失われた。
『期待してますよ。匠さん♪』
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