第9話 綾香



 話が終わった後、一足早く倉庫から出てきたのは、綾香だ。


 俺達は迷った末、今度は綾香をつけることにした。


 視線の先で、とくに何もないのに笑ってる女の子が一人。


「先生、先生、先生。うふふふふ。うふふふふ」


 やばい。この子やばい子だ。

 一目見てわかる。


 これはやらかす!


 この子がドロドロの修羅場に乱入したら、地獄絵図だろうな。


「それにしても、先生に愛されていながら袖にし続けるなんて、なんて女なの、萌絵っ。チャンスさえあれば八つ裂きにしてやるのに」


 萌絵ちゃん、逃げて!

 知らないだろうけど、今まさに君に危機が訪れようとしてる!


 ほかの三人、プラス友人はまだいい。

 一番人間的に屑である腎内教師も、修羅場になった時に直接的に手をださなかったようだし。


 問題なのは何をやらかすかわからないこの子だ。


「先生は私を助けてくれた。家の中にも、教室の中にも居場所がない私に優しくしてくれた。声をかけて、肩を抱いて、なぐさめてくれたの。それなのに、私から唯一の味方を奪うのっ! 許せない。許せないわ、萌絵!」


 やらせるつもりはないけど、この子に凶器を持たせたら、一瞬で教室が血の海になる!


「うわぁ、お前本当にとんでもないことに巻き込まれたな」

「だよね」


 何他人事みたいに言ってるんだよ。

 お前の事だよ。


 何も知らなかったことにして、翌日新聞みてショック受けるだけだったら気楽だったんだがな。



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